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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
現実世界へ

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1章最終話 未来への別れ

奈美のいじめ、弥生の未練。

そして、ゆうと紅佐飛が学校に来るようになった


これで僕達の役割は終わった。

あとは別れだけ…

「じゃあ僕はお先に行ってますね。」

「あぁ。弥生は私がみているから安心してくれ」

 ウィストリアに弥生を頼み、先に現実に届けてもらった。


「あっ、貸りてる本持っていきますね」

「構わない。まさかそれが役立つとはな。」



 ――現実

 僕はコンビニで軽く買い物をすませると奈美の家に向かっていた。


「おはようございます。すいません、急に」

 昨日、奈美の母さんに頼みこみ、朝早くからお邪魔させて貰っていた。



「大丈夫よ! こんなのお礼にもならないくらいだし、お世話になったもの。なんでも言ってね」

「ありがとうございます。」

 僕は有彩の本を見ながら、皆へのお礼を作ることを計画していた。正直僕も何か作りたいという創作願望と、この生活は楽しかったしお礼がしたいという気持ちだ。


「えーと」

 ボールに卵、砂糖、振るった薄力粉を入れ混ぜていく。



 ここには専門の道具ばかりだし、ホイッパーがあるのがありがたい。自分が生きてた時は、自力で泡立て器を使いメレンゲを作ったのを思い出す。あの時は、使わない部分が筋肉痛になったな。


 加熱したバター、牛乳をいれたものを型に流し込みオーブンにぶち込んだ。結構、時間がかかるから早めに来て正解だな。



 生地は出来るのを待つとしてあとは見た目だな。コンビニで買った生クリームと苺を取り出す。苺の半分は小さく刻んで、 それ以外は少し大きめに。


「よし」

 我ながら上手くいった方だろう。

 その後はやることもないので、ぼーっとテレビを眺めていた。


 あれこの人にこの建物。


「…っ」

 奈美の学校がテレビに映っていた。画面の中で校長が頭を下げている。



「この度は誠に………申し訳ありませんでした」

 パシャパシャパシャ


 これは記者会見か。思ったより大事になっているようだな。弥生の件がニュースに出ている。


 3年前の自殺の真相。いじめてたらしき子の詳細まで出されている。まあ、出なくてもネットで叩かれるだろうし、仕方無いのかもしれない。


 場面が変わり、弥生の母さんであろう人が画面の中で泣いていた。

「彼とは短い間でした。……あまり関われなくて…何も出来なかった」

 弥生はこれをなんと思うだろうか。



「今回、やっと真実が分かって良かったです。きっと彼も報われると思います。」

 お母さんは泣きながら語っていた。これで未練は何とかなったのだろうか?


 複雑だが、いじめの内容が明らかになっていく。上履きを隠されたり、ピンを入れられたり、暴力に罵倒。小2の癖にやることは人を越えている。


 こんなものは犯罪として取り締まるべきだ。『いじめ』なんてただの言い訳だと思う。こんな生活ばかりしていたら歪むのも仕方ないな。辛さ故の事件があれだ。


 いじめという行為は加害者も被害者も狂わせる。僕なんかより、よっぽど苦しかっただろう。



 ピー!ピー!ピー!

 一人で考えこんでいると、オーブンが悲鳴を上げていることに気がついた。



 急いで取り出し生地を取り出す。焼きすぎてないか心配だったが上手くいっているようだ。後で弥生のも作ろうかな。


 僕は、スポンジケーキを横半分に切りクリームを平たく塗った。1段目の上に細かく切った苺を入れて上にもう1枚のせると少し大きめの苺を置く。


 1個丸々にすると苺の争いが起きるからな。全て平等に飾り付け切りやすいように隙間も作る。


 その後、まだ苺もクリームも余っているので残りの物で弥生用の小さいケーキを作っていた。



「おはよう………あれ零!?」

 奈美は寝ぼけながらに顔を見せていた。


「おはよう。」

「なんで居るの?え、これ零が作ったの!?」

「これでもちゃんと作れるんだからな」

 レシピがあればの話だが。



「嘘…」

「僕の小さい頃の夢はケーキ屋だったんだぞ」

「以外。」

 奈美はずっと口を開けていた。グーと奈美のお腹が鳴る。



「えへ」

「ご飯食べてきなよ」

 小さいケーキを作り終える頃には有彩もきてケーキを輝かせるような目でみていた。



「思ったより上手いな!」

「有彩さんまでそんな事いいますか」

「零って料理出来ないって感じするわ」

 僕は軽く傷つきながらも、ケーキを抱きしめて学校へ向かっていた。



 ちなみに弥生は疲れて僕の布団で眠っているようだ。まぁ、僕を殺そうとしてたし魔力は結構使ったんだろう。

「じゃあ有彩。先生に別れを言いましょう」

「あぁ。そうだな」



 奈美と別れると職員室に向かい、先生を軽く洗脳した。

「そう。もう転校するのね」

「今日までですが……最後までお願いします。」


 あいにく忙しいのか校長はいないな。窓を見ると、ゆうと紅佐飛と話しながら楽しそうにする奈美が見えた。良かったな。



 キーンコーン

「今日からゆうさんと紅佐飛さんが来ました」

「ようこそ! 我がクラスへ」

「これからよろしくね〜」

 皆はこれまで以上に盛り上がっている。



「………そして、もう1つ。零さんと有彩さんは今日でお別れになります」

 急にザワザワとクラスには戸惑いの声が飛び交った。


「嘘だろ!」

「急に転校が決まってしまってな。」

「これまで楽しかったです。最後に僕達からお礼があります。」

 僕は先生にケーキを渡した。皆がそのケーキを見ると、ヨダレを垂らしはやく食べたいと騒いだ。



「静かに! 今日はありがとうの会もあるお祝いパーティです。零くん有彩さん。最後の思い出を作ってね」

「はい!」

 僕達は声を合わし楽しいパーティが始まった。


「ゆうと紅佐飛が帰って来た事。そして、零と有彩にありがとう!カンパーイ!!」

「カンパーイ!」

 奈美が仕切り僕達は最後の交流をした。



「お前!ケーキ作れるんだな!」

 皆、美味しい美味しいと食べてくれている。ケーキ作りは楽しかったが、時間が思ったよりかかるから頻繁には作れないな。



「美味しい! 作ってくれた中で1番美味しい!」

「そこまで言ってくれるとは。」

 有彩もよろこんでくれて何よりだ。パーティでは先生やクラスメイトによる小さな芸や遊び、速攻劇のようなものをしてくれた。僕は懐かしさを思いながら楽しんでいた。時間がどんどん消えていく。



「これで終わります。」

「えー……」

 時間はあっという間だな。最後は皆で写真を撮り、先生はすぐに2人分をプリントしてくれた。


「はい!」

「ありがとうございます!」

 これは一生大事にしなければな。



 昼休みはいつものようにサッカーをした。


「紅佐飛も遊ぼ!」

「おう!」

 ゆうと有彩と奈美と前虹、その他の子達も色んな事をして楽しんでいた。グループという概念ではなく好きな事をしているようだ。



「ほら!これはお礼だ。」

「本当にありがとね〜零!」

「お前、奈美から聞いたぜ、やるじゃねぇか!」


 サッカーが終わると、仲間からメッセージ付きのサッカーボールを貰った。本当にこの学校の生活は学びや経験が沢山あった。




 そして、放課後

「じゃあな零!ヒック…」

「元気にするんだよ……」


「楽しかったよ! 2人共、ありがとう!!」

 まずは最初に、仲良くなった渚達2人にもう一度お礼を言って教室を出た。



 廊下を出ると未空が待っている。

「下まで歩かない?」

「あぁ」

 僕は、2人で玄関まで降りていった。渚は怒らないだろうか?という疑問はあったが。



「本当にありがとう」

「こちらこそだよ」

 未空も辛そうに下を向いていた。


「私………決めたことがあるの。」

「何?」



「私、将来。弁護士になるわ!」

「…!」

「本当は医者になる予定だったけど、辞めた! 私は将来、いじめとか悲しんでいる人の味方になる」

 弁護士か。前に鳩を飛ばした時……真剣に勉強していたのは医者の為だったんだな。



 熱心で思いやりが彼女にはある。見る方向さえ正しければこんな事件にもならなかっだろう。色々言葉をかけて大正解だな。

「未空ならきっとなれるよ。理不尽に困ってる沢山の子を助けてあげてくれ」

「えぇ! 絶対に負けないわ!」



 未空にも別れをつげると、次は陸上に顔をだした。陸上の先生にも挨拶をしなければな。

「これまでお世話になりました。」

「皆で写真を撮ろう………! 元気でな」



「零ーまじかよ!」

「張合いがなくなるじゃないか」

「ごめん、急に決まったんだ。これまでありがとう。」

 記念に、写真をとると先生は猛スピードでプリントしてくれた。流石陸上の先生だなと関心する。


 その後は変わらず、高跳びを皆といつも通りに練習をしていた。前は、引退して高跳びなんてどうでも良かったが……ここで久しぶりに楽しむ事を学んだ。もう出来ないとなると辛く感じるな。

 高跳びでも写真を撮ると、先生はボロボロになりながらまた走ってくれた。なんか申し訳ない。



 学校の貸し出しスパイクのピンをひとつ貰うと、俺も私もあげると言い、沢山になったので入れ物も貰ってしまった。

「いいんですか?」

「なに、ピンくらい買えばいいからな!」




 そんな楽しい練習ももう終わってしまった。僕は前虹といつも通りに帰っていった。


「なんか……実感ないよ………居なくなるなんて」

 前虹は急に泣き始めた。


「泣かないで。本当にごめん!」

 はあ。僕とした事が女の子を泣かせるとは。



「これ!」

 前虹は、ゴソゴソと何かを探すと小さな賞状を渡してくれた。下には前の大会名が刻まれている。



「流石にこれは」

「いいの! 持ってて欲しい! これまでの私とのお別れと、これからもっと頑張れるように…」

 前虹は真剣だった。これからも頑張れるように、か。その想いは無駄に出来ないな。


「……分かった。じゃあ絶対に、これより凄いのを取りなよ」



「うん!自分は跳べるって思って飛び続けるね!」

「あぁ。楽しみにしている」

 悲しむ前虹とも別れを告げ手を振った。



「ありがとう!」

「こちらこそ、ありがとう。」


 あとは

「こんにちは」

 奈美の家に行くと、ゆう、紅佐飛、奈美と有彩が二次会をしていた。



「さぁ!さぁ!パンあるから食べなよ!」

 僕が帰ってくるのを待っていたように、沢山のパンをいつものように押し付けてくる。


 でも、もう最後なんだな。

「あぁ!バンバン食べてやるよ!」


 しかし、僕はすぐにギブアップしてしまった。こんな時間も悪くないな。


「あなたが奈美を助けてくれたんでしょ。本当にありがとうね。」

 ゆうは嬉しそうにお礼を言ってくれた。


「そんな大した事はしてないよ。奈美が頑張ったから……」

「いや、お前が背中を押したんだろう?」

「そうよ、そうよ!」

 奈美達が全力で肯定するように頷いている。



「なんかスッキリして学校にこれたわ」

「本当ね。貴方がいなかったらずっと家だったわ」


「今でも信じられないけど本当に良かったな!」

 3人とも清々しい笑顔だった。こうやって、誰かのためになれて感謝されるのは気持ちがいい。


 その後、ゆうと紅佐飛は奈美の母さんに捕まっているらしく、僕は奈美と外に出ていた。



「はい! 2人とも」

 僕達にパンとブレスレットを渡してくれた。


「それお守りね。私の感謝の想いの固まりよ!」

「ありがとう。大事にするよ。」


 うん。と頷くと、奈美は何か気にしているようだった。

「……ねぇ、思ったけど電話ってないの?」



 奈美はスマホを見せてきた。確かに連絡先くらい渡せたらいいんだが。


「あいにくスマホは死んでるから買えないし、使えないんだよな」

「でんわ……?」

 有彩は知らない言葉に首を傾げている。


「えーと凄く簡単に言うと、物体と物体を通して離れていても会話出来るんです。あと、メッセージとか届る事も出来ます」


「でんわは便利だな。電通……対象と対象に魔力が入ったものを入れて通しておけば似たような事が出来るかもしれない」

 有彩はブレスレットに触れながら魔力の塊を1つの粒と入れ替えて、奈美にとある石を渡していた。



「何これ?」

「魔鉱石だ。ブレスレットとこれは繋がっていてな、天空に繋げる事は難しいと思うがメッセージとして言葉を届けられる」


「本当!?」

「握りしめて、私達を強く思えば光るからその時に声を出してくれ。で、逆にメッセージが来たら点滅するんだ。点滅したら、私達を思えば声が聞こえる。」



「そんなことが……想いというのは凄いんですね。」

 僕は関心しながら試しにやってみる。



 奈美の石が光り声を出すと、奈美の方から僕の声が聞こえてくる。

「凄い……電話になってる」

「天空からは難しいが、現実の時なら電話として繋がるだろう。」



「ありがとうございます!」

「ありがとう! 有彩!!」

 僕は、電話みたいな物を手に入れた。



「あと、私ね!夢が出来たんだ!」

「何?」

「小学校の先生になって、いじめがないクラスを作る!で、老後にパン屋を継ぐ!」

 色々考えているようだな。実際、バレーを教える時上手かったし、ピッタリだろう。



「きっとなれるよ。奈美なら」

 うん。と有彩も頷いていた。


「ありがとう! あなた達も頑張ってね。力になるし、いつでも来てね歓迎するわ!」

「ありがとう」

 僕達はブレスレットとパンを抱えながら手を振った。


「ありがとうーー!」

 最後に、2人やお母さんも出てきて奈美達と別れた。なんか喪失感が込み上げてくる。いつの間にか涙がでていた。



「大丈夫か?ほら。」

 有彩はハンカチを渡してくれた。


「クラスの子にもらったが早速使うことになるとはな。」

「ありがとうございます」

 そういえば、有彩は人気者だったしいっぱい思い出のものを貰ったようだ。



「零の言う通り、自殺を止めるとは簡単じゃないようだ。あとは、人間の文化は面白いと感じた。」

「興味を持って貰えて良かったです。また、頑張りましょう。」

「あぁ。」

 ウィストリアは力強く頷いた。


「そうだ。今日は天空に着くとビックリするぞ?」

「本当ですか!? 楽しみです」

 僕は寂しさがあったが、有彩の言葉にワクワクとした気持ちに切り替わった。





 さて、これで奈美の件は解決した。

 ………が、まだまだやる事は沢山あるだろう。


 この世界には1日に何人も自殺をしてしまう。理由は千差万別だが僕は減らしたいと思うようになった。少しでも多く。思ってみれば、死ぬ時には人生の目標なんて無くなっていたのに出来てしまったな。


 そんな事を考えていると、すぐに天空に着いていた。いつもと違い街がライトアップがされている。

「彩夢様!ウィストリア様!お疲れ様でした!」

「……!」


 僕達の帰りを沢山の天使や女神が待っていた。

天使と女神に祝われた後。

僕達は次へと行こうとする。


その時、弥生の前に現れたのは新人の女神だった

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