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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
現実世界へ

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第12話 友を繋ぐ物

いじめの解決、校長…色々あったが終わったな

あとは、パンを作ってゆうと紅佐飛に会うだけだ。

「本当に何してたの?」

 僕が家庭科室に向かうと、また奈美が仁王立ちで待っていた。


「すまん……」

 僕が謝ると奈美はニコニコと使い終わったボールを渡してきた。これは


「零は皿洗いよ!」

 だろうな。

 本当はパンを作りたいが、皿洗いも誰かがしないといけないし仕方ない。

「…分かった」



「あー落ち込まないで!1番最初に味見させてあげるから。ね!」

 小学生になだめられるのも情けなくなってくる。


 僕は、無造作に道具が放りなげられている流しに手を入れ食器を洗い始めた。

 洗っても洗っても知らないうちに積み上がっているんだが本当に終わるか? これ



 後ろでは、クラスの皆が2人の先生達とワイワイ作っている。洗うことも教育的に大事な気が……


 まぁあくまでサポートだし、いなくなれば皆でするだろう。パンは後で有彩に教えて貰えばいいし。



 黙々と皿を洗っていると背後から手が伸び口に何かを入れられた。

 振り向くと渚が飛びかかっていたようで手にはスプーンが握られている。


 甘い……ジャムか、これ。


「ん………いちごうまい」

「あはは、だろだろー!!? お前、大変そうだし俺も皿洗い手伝うぜ!」


 あっなんとか終わりが見えてきた気がする。

 ありがとう渚……。



「お前のおかげでサッカー出来たし、スタメンになれた! そしてな!!」

「うん。」

 なんかソワソワしている。




「俺、未空と付き合う事になったんだぜー!!」

「…」


 ?????

「ぇぇえええええ!」

 僕は面食らった顔をした。

 こいつ俺より先に付き合ってやがる。小学生怖いな…



 僕は一瞬ふらついた。そして、ブンブンと顔を振る.

「急展開だな…まぁ、おめでとう。悲しませる事はするなよ?」

「おう!分かってるって!」


 色々と話していると、次は前虹が来ていた。

 スプーンを持って僕の口に押し付けている。これ餡子か!

「美味しいけど鼻に」

 餡子がついてしまった。両手が泡だらけだし取れないな。



「ぁあああ!………ごめんね」

 前虹はティッシュで慌てながら拭いてくれた。



「ま、前虹のおかげで流れは変わったんだ。本当に良くやったな!」

「………うん。怖かったけどちゃんと自分の軸を持ったよ」

 彼女は嬉しそうだった。勇気がいっただろうに



「そうそう!お前がいないと俺も出来なかったかもな!」

「これからも自分を信じて頑張れよ。大変な事もあるかもしれないけどな。」


「…うん!」

 そう頷くと、スプーンを渚に押し付けて帰っていった。



「俺の洗い物が増えたんだけど」

 すまんな。

 底が見えない中、必死に洗っていると未空が顔を出していた。


「はい。」

 僕と渚にそれぞれ食べさせてくれた。



「上手い!」

「クリームだー」

「少し高いのよ?」

 確かに普通のより味わいがあるな。渚はそうか?と言っているが。



「零。貴方抜け目なさすぎるわ………」

 未空は少し飽きれながらに、笑っていた。



「未空が許可してなかったら今頃、捕まってたかもな。」

「ふふっ、少し見てみたいかも」


 そう言うと、また渚に押し付けている。が、反応することなく顔が赤くなっていた。

「食べさせてくれた……へへ」


 スプーンは無視だな。しかし僕も食べさせてくれたが、彼氏としてはいいのだろうか。そんな事、小学生は考えないか。

 ぼっーとしてたので、いちよう肘でつついてみた。



 次は奈美が走ってくる。フォークがこっちに刃を向ける。これは規格外だ。


「まて! ゆっくり…ん……上手い」


 幸い喉に刺さらずジャリジャリとした食感がした。これはシュガーバターか。僕としては、無難だが1番好きなんだよな。


「零………最近働きすぎよ! 無茶してるでしょ」

 気遣ってくれてありがとう。なら、皿洗いしてくれないか…?


 ま、奈美だって頑張ったんだし口は出さないでおこう。

「ま、もう終わったから大丈夫。」

「そう。……終わったのね」



 奈美は少し寂しそうにしていた。この件が解決したら、もうここにはいないからな。

「奈美がいないとゆうと紅佐飛の居場所がないんだ。これからはお前が動く番だ。」


「もちろん頑張るわよ」

 奈美は受け入れるように頷き、またまた渚に押し付けていた。渚は相変わらず固まっている様子でフォークでつついたが反応無し。



「なぁなぁ!みてくれ。オレンジに水実を混ぜてみたんだ!」

 僕のもとに来た途端、有彩がとんでもないことを言っていた。混ぜたという言葉ほど怖いものはない。



「ん…」

「!!!!!」

 奇跡的なベストマッチ。偶然の奇跡だ!!!



「最初は辛味(からみ)の実をいれようとしたら気が変わったんだ」

 ん?弥生が窓からピースサインをしている!! なるほど、彼の力的に過去を見せたか、こっちの方が良いとか言ったんだろうか。


 とりあえず良くやってくれた。後で欲しい物を買ってやるからな。



「こっちの方が美味しいと思いますよ。ははっ」

「だよな。そうそう、もう出来るから速く来てくれ」

「あっはい。すぐに行きます」

 有彩はみんなの真似をするように渚にスプーンを押し付けていた。もう突っ込む気はもう無い。僕は仕方なく渚を夢からたたき起こす。


「いつの間にスプーンが!? フォークの跡あるし!」

 無事に洗い終わり皆の元へ向かうと、皆がレンジをまじまじと見つめていた。


 ピー

「はいっジャーン!!」

 家庭科の先生がオーブンから取り出した。


「うわあ!!」

 あとはもう1つが上手くいけば。

 すぐにもう片方からも美味しそうな匂いがする。綺麗な焦げ目が入ったパンが並んだ。


「完璧よ!」

「よしっ」

「「やったー!!」」

 僕の声と共に皆は歓声をあげながら喜んでいた。後はラッピングをするだけで前虹を中心に色々と準備をしていく。



 その後、チャイムが鳴るまで残り物で作った試作品を皆で分け合って食べていた。


「はい。」

「うわぁ!ありがとう」

 僕は窓際に立ち、窓から見ていた弥生にこっそり渡した。



「ん〜おいしい!」

「美味しいな。」

 弥生は、美味しそうにパンを食べている。僕もすぐに口を運ぶと香りと甘さが広がって文句なしの味だと分かる。



「さ、皆集まって!零も!」

「まずは紅佐飛から行くわよ」

「「おー!」」

 もう、このクラスの想いは1つになっている。僕の役目は終わったようだ。ラッピングし終わるとランドセルを背負い準備を始めていく。


「これで終わりか。少し寂しいな」

「えぇ。」

 僕達の目的はもう終わる。あとは2人が帰ってきたら全て思い通りだ。


 チャイムが鳴ると、皆が2列になり並びながら学校から出る。ふと思ったが、急にこんなに押し寄せて大丈夫だろうか?逆に出てこないとかあるかもしれないが。


 まぁ、今水を差しても場が悪くなる。もし駄目だったときはその時だ。



 現場につくと奈美はインターホンを押した。周りでその様子を見るクラスメイトは息を飲んでいた。


「紅佐飛! 聞こえる!?」

「私やったよ、皆と和解したの。もし、信じれないなら外を見ればいいわ! あなたの帰ってくる場所はあるわよ」

 奈美が言い終わると、未空に代わった。


「本当にごめんなさい。校長にもクラスにもちゃんと言ったわ。私は嫌いで構わないけど、奈美はあなたの為に何年も頑張っていたから……」



 ん?

 今カーテンが動いた気が


「紅佐飛、あなたのためにパン頑張って作ったの! まだ来なくてもいいけどパンは受け取って欲しいわ」

「……っ」


「パンは暖かいうちがいいんだから!」

 ガチャ


「マジかよ」


 紅佐飛がドアから顔を出すと目を丸くしていた。

「紅佐飛!」

「はい、これ!」

「お前………パン屋なのにパン作れないって」


「作れるわ! 頑張ったの」

 紅佐飛は奈美からパンを嬉しそうに受け取り、周りの生徒を見回していた。



「紅佐飛さんごめんなさい。ちゃんと話は聞くしなんでも相談してね。貴方が満足するまで話は聞くし出来ることは何でもするから、もし、気がのったら学校にきてほしいな」

 先生は謝っているが、皆はその様子を気にすることなく彼に群がった。



「お前サッカー出来る?メンバーいないんだ」

「お前空気読めよな〜。全然他のスポーツでもいいから!」

「そういう事かな?」


「また来てね!」

「待ってる」

「ごめんなさい紅佐飛」

 そして、クラスの取り巻き達も皆に続いて謝っていた。



「頑張ったでしょ?」

「あぁ………凄いなお前」

 紅佐飛は少しずつ口が緩んでいた。


「今からゆうの所にも行くの。もし良かったら」

「よし! 俺も行く!!」

 紅佐飛はもちろんと大きく頷いた。



「こんなのみせられて引き込もれるほど馬鹿じゃねえよ」

 少しすると、紅佐飛はまたドアを開けて靴を履いてきていた。口には渡したクロワッサンを食べている。


「上手い!! あとは食べながら行くわ。お前らも食べろよ。」

「まじ!?」

 パンを皆で分けながらむしゃむしゃとゆうの家まで向かっていく。



 さあ、ここが最後のゆうの家だ。

「ここよ。」


 奈美はそう言うとすぐにインターホンのボタンを押した。


「ゆう! いる?」

「……。あっ奈美来てくれたんだね」

 前は映らないように遠くで居たが、こんな感じに毎日話しをしていたんだな。



「あれ?なんかいっぱいいる……え、紅佐飛も?」

 ゆうの声は、動揺しながらも色があるように弾んでいた。


「私ね、やっと和解したんだ!ゆうが帰ってこれるように!」


「知らない間にこんな事になっててびっくりしたよ。でもパン美味しいぜ」

 紅佐飛がインターホンに映るように割り込みながら、パンを食べていた。



「ちょっと! まだ言ってないのに」

「いいだろう?めっちゃ美味しいぜ! ゆうの分もあるから」

「え、奈美がパンを作ったの!?」

 ゆうは明らかに驚いた。


「うん! あと皆もね。前は失敗したけど何回も失敗して100回くらい焼いたら出来るようになったわ」

「そんなに!?」



「ゆうさんごめんなさい。あなたを傷つけたのは私です。どんな罰も受ける。………だから奈美さんに会って欲しいの」

「パンは暖かいうちに食べるものよ!」

 奈美と未空が同時に言うと、しばらく音が消えた。


「………もういいよ、今許したし。待ってて奈美。」

 バタバタと家から音がなり、玄関に向かってくる。



「なんとなく、ゆうもあなたに似てるわね」

「そりゃそうでしょ! 親友なんだし!」


 ガチャ

「奈美!」

「ゆう!」

 その途端、2人は強く抱きついた。


「はい!パン!私だけじゃなくて皆で焼いたのよ!」

「凄いね………ん、美味しい!」

 ゆうはパンを1口食べると、嬉し泣きをしながら噛みしめていた。


「でしょ!」

「奈美の母さんみたいな味……懐かしいな」

「また、いつでも来てよね!」

「うん。」

 改めて人の多さにびっくりしていたが、周りを見渡しながら


「じゃあ、まずは広いところに行こ。邪魔になるし………あそこ公園あるから。」

 ゆうは近くに見える公園を指さしていた。彼女も皆にパンをあげながら公園に行った。



「ゆうさん。私はあなたを責めたててしまったわ。ずっと苦しめて………本当にごめんなさい。」

「もういいですよ、先生。」

 ありがとう。と小さく頷き先生は話を切り出した。



「改めて、2人とも学校には来る気はない?」


「来て欲しい」

「お前もサッ(ガゴッ)」

「いつからお前はサッカーバカになったんだよ」



「ごめんなさい!」

 取り巻き達も頭を下げ謝っていた。



「………もういいって。これから何もしないなら。」

 ゆうは少し考えていた。


「どうする?」

「俺は決めてる」

 紅佐飛は自信満々に目を見開いた。



「明日から!」

「………じゃあ、私もそうしようかな」

「本当!?」

「うん。楽しみにしてて」



「「やったー!!」」

 ゆうが頷くと、皆は作戦が上手くいきどんちゃん騒ぎが始まっていた。



「わかったわ。よし、明日はお祝いパーティよ! 3時間くらいなら授業に余裕あるしね」

「「わーい!!!」」


 余韻を残しながらも先生は解散を告げ、明日に期待しながら皆が帰っていく。そして、奈美を家まで送っていき別れを告げた。



「ほんっとうにありがとう! 零と有彩のおかげよ!」

「よく頑張ったな奈美」

「あぁ。奈美が頑張ったからだ」

 そう言うと、少し照れているような感じだった。



「本当に生きてて良かったわ」

「……生きるのも悪くないだろ?」

「えぇそうね!」

 自分で言葉にしていたが、改めて生きるというのは重いと感じた。


「ねぇ、いつ居なくなるの?」

「明日行って別れを済ましたらね」

「速っ、でも……そうよね。」

 奈美は悲しそうに俯いていた。


「まだ奈美のような人がたくさんいると思うから僕はそんな人の力になりたい」

 いつの間にか、ウィストリアの願いというより僕の意思になっていることに気づく。……まぁ悪くない気分だ。



「そう、いい目標ね! あっちょっと待って」

 また沢山のパンを貰った。しかも、今回は量が2倍くらいになっている。お礼を言おうとしていると、奈美は何故か不思議そうに僕を見つめていた。



「どうした?」

「あの、その子………」

 奈美は僕の後ろでヨダレをたらした弥生を指さしていた。ついてきていたのか。


「ほしかったら、食べてもいいわよ」

「だってさ。」

「ほんと? やったー!」

 弥生は食べ始めると次第に手が止まらなくなり、パンを2つ持ちながら頬張っている。



「………あれ。その子、前」

「おねえさん あのときはじゃましてごめんね」



「ん? あー。別にいいのよ。貴方は悪くないし」

「?」

 どういうことだろうか? 僕と有彩は首を傾げた。


「前……ゆうを助けようとした時に部屋にいたのよ」

「ぼく、おねえさんは、あのひとをたすけるっておもったから、じゃましちゃった」


「ん、どういうこと?」

 そういえば、彼女の話に出てきたふれあいの部屋に男の子がいた。弥生はゆうのいじめをみて喜びを感じた。



「ああああああ!」

 いじめられていた時にいた子どもか。あの時から近くでいじめを見ていたんだな。

 僕はとりあえず事情を話すことにした。



「あなたのせいなの?」

「ううん、あのときはしてない。みてただけ。でも、いろいろとごめんなさい。」

 弥生は奈美のパンを食べるのを申し訳ないと思ったのか、僕に押し付けて素直に謝った。



「まあいいわ、もう解決した事だし。ね、好きなパンあったら持って帰って良いわよ」

「ほんと!?」

 奈美はもう気にする様子もなかった。ただでさえ多かったのに弥生の分まで沢山貰ってしまうとは。



「バイバイ!また明日ね」

「あぁ!」

 気持ちを無駄にはできないまま、僕とウィストリアは弥生を連れ天空に帰った。



 ――天空

「ここが天空だ。」

「わぁああ! ふわふわしてる!」

「ちなみに俺は彩夢。で、ウィストリア様だ」

 僕はランドセルを置き、身体を伸ばしながら紹介した。



「なまえちがうの?」

「死んだ奴の名前があったら、問題になるかもしれないからな」

「そっか。じゃあ、ぼくもつけて!」

「また後でな。」

 名前つけるならまた本屋に行くか。


「…!」

 弥生は不意にウィストリアを見ると、ガッと僕の背中に跳び乗った。


「ん? どうした?」

「あのおねえさん。魔力すごくない?」

 ウィストリアを見て小声で震えているようだ。


「そうなのか?大丈夫。優しい人だから。」

「うん」

 弥生から見ると、恐ろしいくらいのオーラがあるんだとか。僕には全く分からんがな。



「彩夢、今日は何を作る?」

「そうですね。じゃあサンドイッチでも作りましょう。今ある材料全てみせてください。弥生も手伝ってくれ」


「うん!」

 少しずつこの天空生活にも慣れてきた。こんな毎日がもっと続けばいいのに。



 ――何処かの現実

「貴方はこの世界も人も知らなすぎる。なのに、なんで今になって邪魔をするのよ。……ウィストリア」


 1人の女性が空を見上げてながらそう呟いた。

ちなみに弥生は奈美の一個下です。

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