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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
新章1 第三次世界代理戦争魔人選別編

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目的は違えど目指す場所は

主人公の彩夢は大事な人の死を経験してから復讐を試みる。そんな彼の前に、復讐を手伝う代わりに死んで欲しいと頼む神がいた。


2人は契約を交わし、話し合いを進めるはずだったが。同じ場所を目指す地界のものと接触する。

「なるほど。私たちと目的は違えど、目指す場所は同じという訳ですか」

「ちょっと待ってください。彩夢君、あの方と取引なんてしたのですか。しかも、自分を犠牲にするなんて」

 俺は2人に全部話した。どの情報が必要で、必要じゃないか分からないしな。


「俺にはその目的さえ果たせばいい。そのためにずっと生きてきた。あの日から乗っとられても意識だけはと保ち続けた。俺にはそれしかやることしかない。」

「そう……ですか。あの人の事です、もう契約してしまったならどうにもできません。力になれるなら力になりたいですが」

 使い魔は心配しているようだった。多分、こいつはクロクの事も知っているようだな。


「失敗作。あなたにはやることがあります。この青年のお守りは私がやります。」

「そんな簡単じゃないですよ。あの方々の恐ろしさを知らないからそんな事言えるんですよ。それに、」


 使い魔は後ろを振り向いた。

「彩夢君と接触してから、ずっと見ているんですよね。出てきてもいいのでは?」

「何を言ってるんですか」


 しばらくすると、クロクとヒューブリッジが何も無いところから姿を現した。

「認識阻害の対策はしていたんだけどね。君、僕に何かつけたのかい?」

「えぇ、あなたに振舞った料理に私の羽を切り刻んで入れました。警戒していなくて助かりましたよ。許してください、我が姫をできる限り守りたかっただけですし、毒ではありません。」

「なっあなた趣味悪すぎませんか? 衛生的に終わって……」


「彩夢くんもそれで居場所が分かりました」

「えっ?」

 急に俺にも流れ弾がきた。あいつ、こいつの羽食ったのか……?毒はないと言われても。


「人間にも入れたのですか?」

 彼女も同じように引いていた。


「あぁ。あなたにもいれてます。6年くらい前に」

「はああああ!?おい もう1回言ってみなさい、この失敗作風情が! その羽むしってやってもいいのよ!?」


「6年前。あんなことして、何で信頼してもらえると思っているんですか?」

「そ、それは……」

 萎縮するレフトバを遮り、使い魔はクロクに目を合わせた。


 ピリついた空気に俺は寒気を覚えていた。やはり合わせるべきじゃないよなあ。


「……まあいいや、1本取られたよ」

 クロクはボソッとつぶやいた。


「こんなことをして何ですが、あなたにお願いがあります。」

「話は聞いてたよ。彼女を連れていけばいいの?」

「はい。」

「いいのか、クロク。地界の言葉を信じて。」

「天界となんて……勝手に決めないでください!」

 ヒューブリッジと彼女は反対しているようだが。


「ヒューブリッジ。手札が増えるのはいいことだよ。あそこは広いしね。使い魔と呼ばれる種族の力は君もわかっているはずだよ。」

「レフトバ。あなたが求める情報は、彼しか持っていません。博士の仇を取らないならそれで構いませんが。」


 2人の言葉に、不満そうにしながらも頷いた。

「わかった」

「仕方ありません」


 こうしてよく分からないうちに、天と地。そして場違いの俺の関係ができた。まあ、俺がやることは変わらない。どうでもいいや。


 こんな事している場合じゃない。シャーゼンロッセを起こさないとな。


「私はレフトバ。使い魔という種族が分かるなら話が早いです。私は彼と違い何一つ出来ないことはありません。ソルスは水流側にあります。」

「僕はクロク。天界の神の1人。……力は、時を扱える。あんまり自己開示をしたくないんだけどね。彼はヒューブリッジ。彼はこの計画にあまり参加しないから無視していい。」

 2人は険しい顔をしながら、挨拶を交わしていた。


「明日。視察と計画を立てよう。僕にはまだ仕事があるから、今日はもう帰るよ」

「……」

 クロクはそう言うと、レフトバを見つめる使い魔に目線を合わせた。


「君は行かないの」

「私には他にやることがありますので。本当は彼女について行きたいんですけどね。色々と心配なので」

 使い魔は残念そうに呟いた。


「そう。じゃあ君に一つ話がある」

「クロク、それは」

 ヒューブリッジは止めようとしていたが、クロクは聞く耳を持たなかった。


「君の母親を知ってるんだ。興味はないかい?」

「……っ!」

 使い魔は明らかに動揺しているように息を飲んだ。


「君の母は、」

「……この話は今に関係ありません。」

 レフトバは遮り、使い魔の手を掴んだ。


「そんな世迷言聞くに耐えません。彼は純粋なんです、たぶらかさないでください。私たちも帰ります。行きますよ」

「ま、待ってください。レフトバッ……あっ…彩夢君これから彼女をお願いします。」

 使い魔は抵抗しきれず、ひきずられていった。


「君の母はもう死期が近い。会いたいなら…………帰っちゃった」

「信じるわけがないだろう。相反する世界に血族がいるなど」

 クロク達もその様子を見つめていた。死期とかなんとか知らないが、何か大変そうだな。


 クロクは息をつくと、ヒューブリッジに帰ることを目で伝えていた。

「じゃあ彩夢、また明日。」

「待て。一つ聞きたい。俺のシャーゼンロッセが目を開けないんだ。お前なら何かしらないか?」

 視察に行くなら、あいつが絶対に必要だ。契約した以上、なんでも話してくれるなら、聞いとかなければならないよな。


「それは大丈夫。彼のことも、そこにいけば分かるから。そして、きっと君の元に戻ってくる。もう傷は治ったはずだしね。」

「……そうか。」

 俺は、モヤモヤしたまま仕方なく帰っていった。



 ―――

「じゃあここからは別れよう。君に彼を見せようとしたんだけど、まさかやって来るとは思わなかった。後は冥界に行けばいい、その力ならなんとかなるでしょ?」

 クロクとヒューブリッジは、公園で冥界へ繋がる穴を探し、掘っていた。


「あぁ。俺はあまり気が乗らないがな。クロク、俺がいないとはいえ、前回のように人間を殺すのはやめろ。我々が消してしまった隙間を世界は無理矢理にでも埋める」

「あぁそんな事言ってたね。でも、そこら辺の人間の選択肢なんて2つくらいで隙間もない。どちらにいってもこの世界に影響はない。」


 穴を見つけたクロクは、文字を書いていく。


「その言い方……まだやる気なのか?人間が俺たちを認識したらそこで終わりだ。お前には叶えたい願いがあるはずだ。」

  クロクは手を止めた。


「悪いけどそんなの僕にはない。ただ、あの化け物が居ない今が最後のチャンスだ。僕は彼自身に選択させる。どんな犠牲を払っても、君たちが愛すべき人間を殺してでも。」

「本気なのか」



「天神もそれを望んでる。君は黙って静観していればいい。君の役割はもう終わりだ。監視なんてしなくていい。」

「違う。俺はお前が壊れていくのが分かる。だから心配している、止めてるんだ。あんな殺しを続ける気か?」


「……僕が死のうが変わりはいくらでもいる。ただ、僕には試行錯誤の役目を果たすだけしか価値がない。その道に弊害があるなら、何人でもやるよ。」

 クロクが文字を書き終わると、穴の奥に光が出てきた。


「後は任せたよ」

「……。」

「キュッ!!」

アンノルンが帰っていると、1匹の光をはなつ長細い獣が身体から落ちるように現れた。その獣は何かを言い残し走っていく。


「待って。何。弥生が気になるの?」

アンノルンは仕方なく城下町に足を踏み入れた。


――

「おかえりなさい!弥生くん!!待ってましたよ。怪我はないですか?その姿、いっぱい頑張ったんですね。こんなにたくましくなって私は凄く嬉しいです!!」

「うっ……ぐるしい!」

スプラウトは僕を抱きしめ、涙を浮かべながら頭を撫でてくる。


「スプラウト、弥生は疲れています。あまり体力を使わせてはいけません」

「ただいま。……そうだ、ウィストリアさんは?顔見せなきゃ」

そう言うと、スプラウトはピタッと止まった。何かまずいこと言ったかな?


「スプラウト、弥生にも知らせましょう。ウィストリアも会いたがっているはずです。」

スプラウトは悲しそうな顔をしているのが見えた。その後、ウィストリアの家へ連れていってくれた。

そこには、ウィストリアが青白い顔でうなされている様子だった。


「ウィストリアさん?」

「……彩夢君にされたみたいです。神様がここまでウィストリアさんを連れてきたのですが、様子は悪化するばかりで」


スプラウトは、ウィストリアの頬を触っていた。

「ウィストリアさんは、彩夢君のこと大切に思っていたんです。なのに、なんで彩夢くんはこんな酷いことを。……どうして人間はそう簡単に裏切れるのですか!? なんで人間は尽くしてきた我々にこんな酷いことできるんですか?パナヒル様には、もう死ぬかもしれないと言われました。この天空は、ウィストリアさんがいないと……。」

「スプラウト」

僕は、お兄さんを庇えなかった。スプラウトも本心で嫌っているわけじゃない。でも、疑うしかなくて吐き出したくて困っているのが分かる。


僕が否定してしまったら、スプラウトはきっと押し込んでしまう。スプラウトに同情するしかできない。


お兄さん、なんでそんなことしたんだろう。


「僕に何かできることない?」

「弥生くん。」

スプラウトの目からは大粒の涙が溢れていた。


「最終手段です。スプラウト、薬学の神がいます。そこへ向かいましょう。ウィストリアを死なせる訳にはいきません。」

「カクラジシ様……はい。弥生くん、せっかく帰ってきたのに取り乱してしまってごめんなさい。少しだけ外に出るので、ウィストリアさんといてくれますか?」

「うん!」

2人はすぐにその神に会いに行った。


「ウィストリアさん。帰ってきたよ。もし、薬がダメだったらお兄さんに会って、聞いてみる。」


「薬?……治せるわけない。それ死呪霊の影響。」

「えっ」

僕が振り返ると、部屋の外でアルがウィストリアをみていた。


「アル?」

「アルの友達知らない?細長い動物」

「知らない。それより、ウィストリアさんのことわかるの?」

アルを部屋に入れるとウィストリアの近くにいき、頭を触っていた。


「うん。時間が経ちすぎて脳が喰われてる。天使族は再生出来るし、やってみていい?」

「何するの?脳が喰われてるって?」


「1度脳を壊す。死呪霊は感情の生き物。感情を生み出す脳を好物として食っているみたい。」


「壊すって?大丈夫なの?」

「うん。広がる前にしないと死ぬよ。」

「待って、僕は分からない。スプラウトに相談しちゃだめ?」

「……アルはあまり天界に見られたくない。忌み者だから」


アルの前に、綺麗な光沢の剣が空間から現れた。

「大丈夫。天神からの許可はもらった。」

「……っ待って」

アルは、その剣で切ろうとしてるの?僕は、ウィストリアの前に立って止めようとした。


でも、アルのすることは違った。アルは、自分の手で目を覆う。


僕は、アルの目を見ていたはずなのに、いつの間にか目を閉じていた。

その後は、血が吹き出すような音が聞こえて、目を開けた。

ウィストリアには傷はない。


「―――っ!?」

アルは、頭から血を流していた。剣を思いっきり刺したみたいだった。


「何してるの」

「うっ!?」

ウィストリアは血が出ていないのに、苦しそうにしている。頭を片手で押さえていた。


「大丈夫だよ」

アルの傷はすぐに再生していく。アルは痛がる様子もなく、ウィストリアの頭に触れうなずいた。


「治ったよ」

「本当?」


「うん。なんだろう。こんなのアルしか治せない。まるで、誘導されたみたい。」

「ウィストリア知ってるの?」

「ううん。知らない。アルは天界の人々と関係を持たないから。」

アルは、ウィストリアを不思議そうにみた後出て行った。


「アル兄さん、ありがとう」

「……別に。ただ友達を探していただけ。もし、さっき言ってた獣がいたら、アルが探してるって伝えて」




――――

最近、後書きでも本文のように書いているのもあり遅いです。申し訳ありません。

後書きで書いてると保存されない事がよくあり、よく萎えます。前回の方が良かったのに……なんて書いたっけを繰り返します。

後書きの方が書きたいこともよくあります。3回繰り返してやっと出せました。


あと卒論のため次回遅いかもしれません。現実逃避で案外早い可能性もありますが……


あと2週間。ノルマ11000です。

小説ならどれほど良かったのかと頭をなやませます。今回も3000くらいでしたし。後書き合わせて5000くらい。同じ日本語を並べるだけなのにハードルが違います悲しい。


次回から新しい舞台です。そんなに尺は長くは無いです。よろしくお願いします。


高評価頂けると嬉しいです。かなり励みになりますのでよろしくお願いします。

この話が気に入った方は新章から読むのをおすすめします。かなり最初と雰囲気違います。


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