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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
新章1 第三次世界代理戦争魔人選別編

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理想の平穏

「行ってきます」

俺は陸上の荷物を持って家を出た。アップシューズもスパイクも俺が知らないデザインだった。


まあ3年間くらいあいつがやってたから仕方ない。俺は1時間に1本しかない電車に乗って目をつぶる。

終着駅まで眠ってればいい。

人がどんどん増え、たまに目を開けたり閉じたりする。


そこから15分ほど歩いて学校だ。最初はナビに助けて貰ったがもう覚えている。


何故かその日は担任がいなかった。副担任は当たり前のように前に立ち出席をとっている。


そして、担任に代わり知らない先生が化学の授業をしていた。周りは不思議に思うことなく先生に絡んでいる。


だが、その名前は教員一覧になかったはずだ。出席のために大体の先生とは連絡をとっていたのだから。


まあ、いないならそれはそれでいい。


その後、学校の授業を適当に聞いてメモを取り、気づけば昼休みだった。


俺は弁当を持って屋上に向かった。彰というやつに会って、記憶の確認をしにいく。後輩の言った通り、彰というやつらが弁当を食べていた。

最初は仲が良かったらしく、近くの島で遊んだ写真があった。おかげで顔は覚えている。


俺は彼が視界に入るように前を歩いた。喧嘩している記憶があるなら、避けるような視点の動きをする。

だが、彼は俺をまじまじと見つめていた。俺は少し離れた場所で景色を見ながら弁当を開けた。


「あんなやついっけ?」

「昨日実習一緒だったやつよな。前からいるんかな」

「それなら覚えてるでしょ」

「転校生?でも、ここ公立だし転校生制度ないよな」


俺の記憶は消えているようだ。


「待てよ……彩夢じゃないか?お前らなんで忘れてんだよ、お前が1人じゃ喧嘩になるからっていうから話し合いに付き合ったじゃないか。そのせいで絶縁したが。ずっと綱海(つうみ)が名前を連呼してたし。」

「綱海とあまり話さないからな。お前は仲良いよな」


「……」

記憶に差があるようだ。


沙織や美沙都は俺の名前を覚えていた。それは毎日のように連絡をしていたから。連絡しない期間があったやつは忘れていた。そして、担任が俺を覚えているのは親が連絡をとっていたから。


関係性があれば記憶が残っている?


だが、あの後輩……おそらく綱海という関係性のない男が俺を覚えていたのは何故だ。憧れから?


綱海(つうみ)が名前を連呼してたし』

『ずっと顧問に聞いてたんです!』

これは後輩が原因じゃない。

俺は1つの仮説を立てた。正しいなら、顧問の先生は俺を覚えている。


――放課後

「おぉ彩夢。元気だったか?」

「はい。もう練習復帰します。」

当たりだな。対照として、陸上部の総監督にも会いに行った。


「君は?」

「信田 彩夢です。長い間、療養のため陸上を休んでました」

「そうかい、よろしくな」

「はい」

やはり忘れられていた。確信は持てないが、おそらく俺の名前を認識し続ける必要があるのだろう。


それを踏まえた上で学校生活を送ろう。まあ、関係がリセットされるのは悪いことではないだろう。


先生が俺が復帰したという話が終わり、陸上を始めた。ほとんどがやはり俺のことを忘れていた。まあ、俺も知らないから都合がいいが。


「お前やるな!」

「まあな、病み上がりだが」

俺は彰の気にしていない様子に戸惑ったが、仲良くしておくことにした。タイヤを引きながら跳ぶのは初めてだった。


3年間ぶりに土地を踏み締める感覚、生憎もう息は吸えないが嫌な事を忘れるのはこの瞬間が最高だ。

「信田先輩!! 補強しましょー!」

「あぁ」


例の後輩と重いボールを投げ合い、気づけば20時だった。

あっという間だったな。


「信田先輩! 美味しいラーメン屋行きませんか!?」

「いいな」

「俺たちも連れて行ってー」

「もちろんです!!」

皆でワイワイとラーメンをすすった


あれ、俺普通に楽しんでないか。

この学園生活に。あいつが抜けた穴はあったとはいえ、逆にいい方向になっている。


このまま陸上していたら、あっという間に大学だ。

もう大学前にさっさと復讐して、死にたいはずなのに。


復讐……俺には…果たすべきことが。

「信田先輩! 餃子頼みましょうよ! 村下先輩の奢りで!」

「なっ!」

目の前に餃子が置かれた。このホクホク感に俺は気が緩み、がっついた。


やらないと、あ、沙織と大会に出る約束が。

うーん……………………よし。


「追加麺いる人いますか!」

「ほしい!」

もう大会終わるまで、このままでいいや。


楽しい学園生活!

部活動! ずっとこのまま続けば…………良かったんだが。




「やあ、彩夢。数日ぶりだね?元気そうで何より」

「ガッ…はっ……」

彰は血を吐きながら倒れていた。

俺は明日後悔する。


「君と少し話をしたくてね。」

そして、また道は外れる。そんなことも知らず、この空間に浸っていた。

マリと使い魔は、仕事を終わらし、特訓しているユキと弥生のもとへ向かった。


「マリお姉さん!!」

「あーもう、姉さんとか照れるなあ。……こほん、それはそれとして、弥生君ちゃんと準備してくれた?」

「うん。準備できた。」

弥生は自信満々に頷いた。


「分かった。あっという間にお別れの時間ね。最後はアタシが相手してあげる。弥生くんのために本気だしちゃおうかな」

マリは鎌を2つ手に持った。弥生も竹刀を握る。


「では、始めましょう」

そして、使い魔の合図と共に襲いかかる。



(攻撃が見えない……!)

魔鉱石を投げても当たらず、弥生へと一気に距離を詰める。使い魔からもらった剣は当たらない。


鎌は一瞬で弥生の目元へと迫り、思いっきり吹き飛ばされた。

「ぐはっ……!」



「あのっ姫、手加減を」

「そんなこと言ってたら強くなれないわよ。これからどんな強敵がいるか分からない。少しでも不安があれば、そこを突かれて負ける。生と死が関わる世界に手加減なんてない。弥生君まだやれるわね」


「姫の言うことは厳しいですが、その通りです。意思を通すためには、どんな手を使ってでも生き抜かなければならない。対」

「うん……分かってる。」

弥生は立ち上がった。

「お兄さんが託したこの命は、僕が繋いでみせる。そして、いつか……お兄さんに会うんだ。」

「はい。私が指導したんですから、弥生君なら大丈夫です。対応してみせてください。良ければこの鎌つかってください。使いこなせるかは分かりませんが」

使い魔は弥生に鎌を渡し、マリをみた。


「姫。流石にどちらかが倒れるまでなんてしていたら日が暮れます。なので、あなたに傷をつければ終わりでどうでしょう?」

「それでいいわよ。じゃあ再開するわよ!」


マリはすぐに飛びかかっていく。

弥生は、鎌は思うように動かせず攻撃を避けられない。


それでも、前より動きやすくなったという感覚があった。

2つの武器を使うことで、攻撃を避けやすくなり、一瞬の隙がみえた。


『いい感じだよ、弥生。どんな相手でも、どれだけ早くても隙は絶対に生まれる。その速さに慣れれば、あとは隙をつくだけだよ。』

「……!」

弥生の死呪霊の声がそっと囁いた。


『大丈夫、頑張って』

『うん!』

弥生は攻撃をいなしながら、段々攻撃が見えるようになってきた。

『相手が強ければ強いほど、逃げちゃいけない。僕らは目を逸らさずにじっと相手と向き合うんだ』


そのうち、弥生の目にはマリの攻撃が見えるようになっていた。


(そこ!)

マリの片方の鎌を、竹刀とぶつけ弾き出した。体勢を崩したマリに、すぐさま竹刀を頬に向けた。


「……っ! びっくり、もう慣れたなんて」

「弥生君の勝利ですね。」

使い魔は手を叩きながら笑っていた。

「弥生、やったね!!」

ユキは弥生に飛びつき頬をすり合わせた。


「今回はどんな敵にも見極めること、隙をみつけ上をとる。を大事にしていたんです。これ以上教えることは……」

使い魔が少し考えると、マリと視線をあわせた。


「もう2つアドバイスしておきましょう。姫、私ともう1戦お願いします。」

「いいわよ。いつも通りかかっておいで」

使い魔は弥生を遠ざけると、マリへと向かった。


先程とは段違いの勢いで舞うように音が鳴り響く。

「やっぱり姫、あれでも手加減してましたね」

「当たり前でしょ。」

マリの2つの鎌に対して、使い魔は大きな銃を振り回し攻撃をいなす。そして、片方の柄をへし折った。


「ひとつは、隙とか言う前にへし折ったりする力があれば力技で突破する起点づくり。2つ目は、」

そう使い魔が言った瞬間、マリの足を黒い影が引き摺った。


「ちょっと!」

マリは体勢を崩し、使い魔はすぐに抱きかかえ地面に下ろした。


「自分の力を駆使して隙を生み出すこと。この3つがあれば戦いは大丈夫です。姫、終わりましょう」

「はあ。またへし折っちゃうなんて。練習用だからってやり過ぎなのよ。まあ、ピーちゃんがしたいことが出来てよかったわ。」

マリは使い魔の教える姿に満足していた。


「この数日間頑張りましたね。先程渡した武器は私達からのプレゼントです。つかっても飾っても捨てても構いません。どう使うのもご自由に」

「いいの?」

「はい。それは私が初めて姫から与えられた魔鉱性の特殊な武器です。しかし、もう小さくて私には使えないんです。その武器は、意思に反応さえすればどんなものでも切り落とせます。どんなしがらみも、封印もほどき自由へと導く力がある」

「要するに、こう…切るぞー!って思えば何でも切れるってわけよ。」

「じゃあ使うね、ありがとう! お世話になりました!」


マリたちは、天空の前まで弥生を送り届けた。

「弥生、頑張ってね」

「ユキ、ありがとう!」

ユキと握手を交わした。


「ユキは1番長い時間いましたもんね。またユキや私たちに会いに来てください。他の方も一緒に来ていただいて構いません。」

「ウィストリア達によろしく。あとアタシは彩夢がまだ生きてるって信じてるの。多分これから忙しくなるけど……彼に会ったら1発殴りにいくから呼んでちょうだい」



「うん!」

お兄さんは生きてるはずだよね。きっとどこかで、待ってる。だから、また会おうって約束したんだ。


「ありがとう、さようなら!」

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