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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
新章1 第三次世界代理戦争魔人選別編

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選択される未来

「……何をしてる」

「少しのいたずらさ。」

「これがか?」

 男を殺したクロクは満足そうにしていた。広がった血は光を出しながら、羽と共に消えていった。


「言いたいことはあるが、お前との対立は極力避けたい。今回は目を瞑ろう。まだ中年なだけ()()の影響は少ないだろう。」

「たすかるよ。じゃあ明日まで少し遊ばないかい?」

「……」

 ヒューブリッジは困惑した。急にクロクがそんなことを言うとは思わなかった。ただでさえ、先程まで怒りを抱いていて、どこかに行ったと思えばこれだった。


「君は人間を知りたがってる。なら、人生の追体験ができるお店はどうかな?人間の娯楽として人気なんだ。」

「……ふむ。興味深いな。連れて行ってくれ。」

 クロクは予想通りの返答に笑みを浮かべ案内した。


「ここは」

「映画館。まあ見れば分かるさ、僕がチケット取ってくるから色々見てたらいいよ。」

 知らない場所で固まったヒューブリッジを置き、クロクは画面に触れた。


(映画館……こんな場所があるとは。)

「このパンフレット1つ」

「パン……フレット?」

「パン」は食べ物だが、彼が持っているものは本だ。特別な本なのか?


「見てみて、特典のやつひびきでたんだけど!」

「自引きじゃん!めっちゃラッキー!私は被ったから交換に回そうかな。今日はペンラ2台持ってきちゃった」

 自引き?特典?ペンラ?

 よく分からない言葉を呟きながら、彼女たちは中に入っていく。おそらくあの中がその場所だ。


「はい、君のチケット」

「ありがとう。そういえば、あれはなんだ」

「ん?ポップコーン。映画を見ながら食べるんだよ。興味あるの?」

 ヒューブリッジが頷くと、クロクはまた彼を置いて買いに行った。


「なんか、全部試せるものがあった。これが塩、バター醤油、キャラメル。まあ君に言っても分からないか。適当に飲み物も買ってきた。」

「感謝する。それにしても、何故こんなにも知り尽くしている?」

「僕の時代にも映画みたいなものはあったからね。いつの時代も人々は娯楽を求めている。物語という芸術は時代の変化に合わせる力がある。きっと君も気に入るよ。」

 ヒューブリッジは、クロクについて行き、チケットを見せ中に入った。


「ペンラというものはいらないのか?」

「ペンラ?ペンライトのこと?君、どこで習ったの。そんなのここで振り回したら君と行動しないから。あと、照明が消えたら静かにするんだよ。あとポップコーンは口を閉じて食べてね。」

「……あぁ」


 ―――

「よし、終わったし時間ぴったりだね。僕らの目的はこれからだ。ちょうどいいのが戦争の恋愛ものなのは少しあれだけど」

「……」

「ねぇ、行くよ。ねぇ」

「……素晴らしい」

 ヒューブリッジは微動だにせず静かに涙を流していた。

「愛を初めて知った2人。なのに、愛は戦争によって切り裂かれる。勝利ではない夢をもった青年の命からがらに生き抜こうとする様……」


「素晴らしい!」

「ちょっ!」

 ヒューブリッジは立ち上がり声をあげた。

 クロクは周りからの目に赤面しながら、ヒューブリッジを落ち着け引きずった。


「まったく……変な目立つなって分からないの?そもそもこんな髪色だし目立つんだから静かにさせてくれないかな」

「クロク、俺はあの場所が気に入った。現実に引き戻された後も彼らの感情は俺の胸を震わせている。しばらくあそこにいたいんだが。」

「だめ。その感情のことを余韻に浸るというんだ。1つ覚えられてよかったね。」


 クロクは息を切らしながら連れて行き、映画館を出た。

「ごめんね。少し遅くなった。」

「クロク様お久しぶりです。そちらの方は……」


 出口には車椅子の女性が待っていた。


「ヒューブリッジ。僕らと同じ大4天と呼ばれる者さ。彼は生命の運命遣い。」

 ヒューブリッジは2人の会話を後ろで怪しみながら見つめていた。


「久しぶり。第2の人生を楽しんでくれているようで何より。君の事はどう呼んだらいいかな。エルヒィア?それとも……ユア?」

「エルフィアで構いません。」

「そう。エルフィア。例の件について教えて貰えるかな」

 そういうとエルフィアは周りを確認し頷いた。その後、場所を変えて口を開いた。


「我らの組織長 船門(ふなかど) 出愚無(でぐむ)はあなたの示した運命の選択と同じ判断をされました。これから魔力による政権を握り、確実な力の元魔力という力に対策される前に大きな戦力を持つ他国に戦争を仕掛け制圧をはかります。」

「やっぱりするんだ。……君くらいしか戦力にならないだろうに。」

「戦争?」

 ヒューブリッジは先程みた戦争を思いながら問いかけた。


「あぁ、君は知らないだろうけどこれから戦争するんだよ。」

「そんなことをしたらまた死人が……なぜそんな大事なことを言わないんだ」

「君が彼に言ってしまうと思ったから。僕はその戦争を最小限に抑えたい。エルフィアはその戦争の火種になる戦力の1人だ。まあ僕がこうして根回ししてるけど」

「私は降参する気です。ただ」

 エルフィアはクロクの話を遮りながら、複雑そうな表情でクロクに向かった。


「アラストリアの適性者を探しています。その候補にやはり彼はいます。原因不明の自然にみせかけた人為的殺人に門船は興味を持っています。そして、彼に影響を受けた彩広に多少の適正反応がありました。現在は彼が使用していますが、力を出し切れていない点と魔力適正がない彼が扱える点により加害者の候補として彩広は彼の名前を出しました。」


「なるほど、そう繋がるんだ。まったく終焉の運命の選択はどう足掻いても彼に繋がってしまう。」

 ヒューブリッジが首を傾げる一方で、クロクは思案に暮れていた。


「彼を殺す気ですか」

「……そうだね。今回の情報を聞いてそれしか選択はないと判断してる。知ってしまった君にとっては苦しいと思うけど付き合ってほしい。」

「……。分かりました。」

 彼女は時計を確認した。


「そろそろ門限なので帰ります。一つ望むなら、私は彼と対峙したくないです」

「……うん。できる限りは誘導するよ」

「ありがとうございます」

 エルフィアは深刻そうな表情を浮かべながら車椅子を動かしていった。


「彼女があのグリフォンの座の代わりか」

「うん。あの人々に広く伝わる神聖獣グリフォン。その血を継ぐ彼女も、もう歳だ。彼女は失った子の姿が見たいとしぶとく生きてはいるけど、もう力は僅かしかない。これからはこの世界が天と地を抑え全てを握る。だから監視であるエルフィアを入れた」


「グリフォンの後継がいないのは天界としては初だな。」

「大丈夫、すぐに手に入る。君に働いてもらうけど」

「まさか……前言っていたのは」

 クロクは思惑通りの表情をして頷いた。


「とんでもない事になりそうだ。その他にも色々と疑問がある、説明してもらおうか」

「……もう大丈夫かな。いいよ、全部教えてあげる。あの男を消した影響を確認して、僕は彼に選択させる。君は口を出さないで欲しい」

「お前が何をするのかは知らないが、仕方ない。ついて行こう」

 ヒューブリッジは飲み込み頷いた。

「思ったより長居してしまいましたね。」

使い魔は音を出さないようにドアを開けた。


「ピーちゃん遅かったね。何してたの?」

「姫起きてたんですか」

「だって帰ってこないんだもん」

「すみません、弥生君と話してました。」

使い魔は影から予定が書かれたノートを取り出した。


「明日の予定は、西に出た死呪霊の討伐。また、通信障害の問題。……そして、大きな予定として選別会の案内」

「もうすぐなんだね。」

「はい。そうですね。」

「緊張して眠れないな」

「姫は緊張しなくて大丈夫です。あなたらしく貫禄を持って挑んでください。」

使い魔はノートを影にいれ、マリの前で足をついた。


「あと、少しキツイので調整してください」

使い魔は首元をつまむようにすると、黒い首輪が浮かび上がった。マリは、その首輪の隙間に指を入れて広げた。


「これでよし。……王になったら、ピーちゃんの身体を直して、首輪も外すから」

「別に不便じゃないので直さなくて構いませんよ。それにこの首輪があればあなたを傷つけなくていいと安心するんです。」

「そう?」

「はい。それに、これは姫から初めてもらったものですから大事にしたいんです。」

「もうピーちゃんは私があげたの全部大事にするんだから。じゃあ何か欲しいものない? それに、ピーちゃんの3歳の誕生日にもなるから欲しいもの何でもあげたいの」


使い魔は少し考えた後、

「なら、名前が欲しいです。あなたが王になれば失敗作も使い魔として生きていけるんですから。」

「えっ、ずっと決めてるけど」

「そんなの知りませんよ。」

「確かに……私ピーちゃんって呼んでるしね。じゃあその日に発表してあげる。他には?」

「……選別会の前に1日だけ休みが欲しいです。」

「もちろん! 私もその日は休むから一緒にのんびりしようね。他には?」

「……。」

考えているとレフトバの言葉が思い浮かんだ。


「あなたの血が飲みたいです。その……嫌なら言ってください。血酔いすると、制御できないので」

「うん、喜んで! ずっと心配してたの、人工のものばっか飲んでるからそう言ってくれると嬉しい。ピーちゃんは覚悟決めても、やっぱり辞めたっていうし、今日飲む? 」

「いえ、明日は大事な日です。なら……休みの日の前に飲みます。」

使い魔は遠慮しながら呟いた。


「他には?」

「もう十分です。欲しいものは大体ありますから。」

使い魔は首輪を確認すると、ドア元に行き電気のスイッチを押した。


「明日も早いのでそろそろ寝ましょう。おやすみなさい姫」

「もう少し話したかったんだけど仕方ない。おやすみピーちゃん」

使い魔は人の姿からヒヨコに戻り、カゴに入ったベッドで丸くなった。

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