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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
新章1 第三次世界代理戦争魔人選別編

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近づく異常

「久しぶりだね〜。元気だったかな」

「……。」

 俺は無言で冷めた目で見つめていた。こいつが俺の偽物の心を折り、自殺させたんだ。


 化学の教科。肥えた腹の男。自虐ネタが好きらしい。あのエピソードから失敗の可能性が少しでもあることはさせない、フォローが出来る力もない。最悪なコンボ。どっちか出来ればまだマシだが。


 挑戦を折るし、言動から自虐により今以上傷つくことを逃れようとしていると推測。しょうもない保身の人生を歩んできたんだろう。まあ気持ちは分かる。だが、挑戦させるか上手く言いくるめないとアイツはダメだ。


 俺は結果として、身体を取り戻したんだが後味が悪い。


「あの……なにか言ってくれんのか?」

「…………すみません。まだ脳の処理が遅いみたいで、後遺症だと思います。あの時思い詰めていたんでしょうね。」


 俺は他人事のように話し、引き笑いをした。


「なんであんなことをしたんだ?スクールカウンセラーを学校としては進めたいんだが」

「必要ないです。ただ学校が話を聞いて対策して頂けるなら趣きますけど。なんでそんなことをしたのか、発言の一つ一つ原因として覚えているので」


 俺は一瞬、鋭く見つめた。

「なんだ俺のせいって言いたいのか」

「もうここで話すことはないです。俺に才能はないのであなたに従って進学はそこら辺の私立に自己推で行きます。身体は元気なので、もう教室に行きます。」

「おい信田!待て!」

 声を無視して、教室に入った。理科の教科は話し合う前に全て終わらし提出した。もう個人で関わることはない。あとは部長を探さないとな。しかし、交流関係が必要だ。


 あいつのエピソードだと、声を出さないし話を振らないくせに、付き纏う変な人が友達らしいが。まあなんでも、使えたらそれでいい。


「えっ……だれ」

 ザワザワと変な声が聞こえる。

 流石に名前くらい覚えていないのか?どれだけ影が薄いんだ。


 俺はそいつの顔は知らない。だから受け身でいるしかないのだが、異物のように俺をみている。


 ……部活行ったらわかる人がいるかもしれない。


「ということで、1年間病院にいた信田が帰ってきた。いやー皆心配してたんだ。分からないことがあれば教えてやってな。」

 投げやりに担任が言うと、一限が始まった。


 他の先生は俺を物珍しそうに見て、出席番号が変わっていたことに驚いていた。

「君、前からいたっけ?」

「はい。17番です。」

 周りは戸惑うような目を近くで交わしていた。公立だし、転校生が来るわけがない。


「前まで信田の名前なかったんだが」

 ……おかしい。

 1年経ってもクラスくらい覚えているはずだ。それに番号だって残っていたはずだ。


「いや、悪い。俺の勘違いだ。授業を始める、30ページを開け。今日やるのはmustの活用だ。」


 そして、2限。

 俺は作業着に着替え、実習室に向かった。


「君が……信田君だったね?」

「はい」

「ずっとこれがあるから、こんなんあったっけ……って話してたんよ。どうしようか困ってたけど、そうやったんか。良かった良かった。はい。それをキリのいい所までしたら、卒業制作の下地やるから」

「はい」

 先生は人見知りのようで言葉がつまっていた。彼らに記憶の穴があるのか?居たはずなのに、その隙間が謎の力で消され、埋められていると。


 誰が、何のために。

 いや、天空の連中なら……でも……そんなことしてなにになる?


 俺はお皿に描かれた絵の上を薄く塗った。エピソードで大体漆芸は分かっている。薄く塗り、乾かすを繰り返す。


 俺は言われた通り下地を塗り、デザイン案を描かされた。

 デザイン案か。俺が思い描くものは生憎ない。


 偽物のアイデア集が描き殴られたスケッチブックに助けてもらおう。


「……っ!」

 一つだけピンときたものがあった。


 馬が翼を広げ空高く飛んでいる。下には薄暗い花畑があった。この花達の名前も意味も知らないがきっと抜け出したい何かを込めている。

 テーマは『自由』。


 何となくそんな気がした。


 ――――

 学校が終わった。


 結局、皆に怪しまれ話しかけられることはなかった。

 俺はこれまでどんな会話をしていたか知らないし。変に行って怪しまれたり、実は記憶があってこれまでのイメージを変えてしまったりしたら余計に怪しまれる。


 そんなこんなで俺は部室へ向かった。

「信田先輩!」

「えっ」

 俺が振り向くと、小柄な男が目を輝かせていた。

 名前知っている人がやっといたのは嬉しいが。


「退院したんですか!」

「えっ……あっ……うん。」

 名前は知らないし、分からない。


「俺、先輩に憧れてここに来たんです!! お兄さんが信田先輩のこと知ってて! 」

 俺、そんなに記録出してないし、変なことした覚えもないんだが。


「毎日会いたいって思ってました!顧問の先生に聞いてもずっと病院って言うから……あっ兄さんがよろしくって!」

「あぁ。ありがとう。」


 でも、なんか嬉しいな。

 記録だけでなくても、何か響いてくれた人がいるのは。


「なんで俺なんだ? 記録も出てないし……」

「違います! 兄さんがいってました! 記録が出なくても4年間自己新出すために頑張ってる。あの目はガチで陸上が好きなやつだって。それにあの跳ぶ前に笑顔で合図するの好きです! あの10年に近い研ぎ澄まされた跳躍の形もいい!」

「そ、そうかな……なんか照れるな」


 あいつ頑張っていたんだな。なんか崖に落としたの悪く思えてきた。再生とかできないかな。合わせてやりたいな。


 あいつも俺も自分を認めてくれるのは自分だけだと思ってきた。だから、ひたすら飛び続けた。

 でも、見てくれる人もいるんだな。


「今日したいんですけど……昨日大会があって今日休みなんです。だから明日やりましょう!」

「あぁ」

 居場所がないっていってたけど、お前を見て慕ってくれる人はいたみたいだぞ。


「そういえば、彰元気?」

「はい、頑張ってますよ!」

 彰の顔を部活より先に見ておきたい。それに俺を認識しているかのテストも。


「いつも何処でお昼ご飯とか食べてるとか知ってる?」

「えっと、屋上だと思います!」

 彼は元気にそう答えた。


「ありがとう。また明日」

「はい!楽しみにしてます!」



 ―――

「……なんだ君は!!」

「生きてる人間が僕を見れるなんて幸せだね」

 クロクは白い羽を広げ、彩夢の担任の前に降り立った。


「も、も、もしかしてて、て、て、天使なのか」

「……天使でも神でもなんでもいいよ。君のせいで僕の計画は無茶苦茶だ。僕の寿命も無限じゃないのにどう責任とってくれるの?僕のお気に入りの人形も死んじゃった。」

「ゆ、夢をみているのか……?」

 クロクはゆっくりと彼の元へと歩き、怪訝そうに見上げた。


「夢だと思うなら触ってみるかい?」

 彼は背伸びをしながら耳元で囁いた後、彼は担任の手を握りちぎった。落ちた手首は次第に老けていき、しわくちゃの手は異臭を放ちながら消えた。


「あああああああっ!!」

「ごめん。腐ってたから引っ張っちゃった。だって全身腐るのは嫌でしょ?」

「け、警察!! だ、だ、誰か……誰か!!」


 クロクは妖艶な笑みを向けながら、逃げようともがく彼へと近づいた。

「僕の声は福音と同じさ。……大丈夫、全部任せて。僕に看取ってもらえるなんて君は幸せなんだよ?」

「いやだっ……やめっ……」

「君に天神の祝福を。痛いでしょ?楽にしてあげるよ。」

 クロクは担任の背中に手を置いて泣きわめく彼をなぐさめていた。


「そうだね。辛かったね。……彼という1番のハズレくじを引いて、さらに彼を最悪の結果にしてしまったんだから」

 ほんの数秒もせず泣き声は止み、クロクだけがそこにいる。ただ血が床に広がっていた。

『では、そこから現在まで話します。』


「……まり、こわい」

「大丈夫だよ。ピーちゃんなんかあったら私が守るから。」

私達が最初にこの町に来た時は、土地は荒れ、建物はなく死にかけの人間がひっそりと生きていました。


この地は地界の入口。天地戦争により敗北したたため、元の住民は、天界の報復による侵略を恐れこの地から出ていきました。残ったのは居場所が無いものばかり。それに、捨てられた使い魔もいました。


その方々を姫はまとめ、サクリフォートを復興させました。


『それがここサクリファートです。そこから、ハカセと和解し合流しました。』

『殺しに来てたのに?』

『はい。彼らにも事情があったんです。』


「……こんな事しておいてなんだが、助けて欲しい。俺は殺してもいい。だが、コイツだけは」

「待ってください!主!


あの時のレフトバは白い布を被り血を被っていました。命からがらに逃げ出したようです。


レフトバはハカセの使い魔。

ある日国は彼女の所有権の讓渡を持ちかけました。なぜなら、失敗作は全て死に、彼女だけがハカセの作品の唯一の成功品として生きていました。


でも、ハカセはレフトバを渡す訳にはいかなかった。彼女は……ハカセが現世で亡くした妻の写し鏡でした。ハカセはある実験の参加を迫られ、力を貸しました。研究の大きな計画表ができた次の日に、彼は家族共々実験の首謀者に殺されました。


彼は泣き狂いながらも、この地で彼女を作り上げました。それだけでよかったんですが、一個人の錬成技術は禁止されています。国から言うことを聞くようにと言われ見逃してもらっていました。


「そんなのいいわよ。事情は知らないけど、ピーちゃんを殺す目的ないとその命をかけて契約するなら受け入れるわ。人がいないから」

「マリ……あぶないよ」

「大丈夫。私を信じて」

「……。」


私は仕方なく信じ、彼らと復興に尽くしました。

そして、サクリフォートの使い魔の治療にハカセを任せました。


その後、町の代表として姫は冥界の中枢の組織に入るために選別会に出ました。ハカセの身分、捨てられた使い魔の身分を守るために権力が必要でした。


選別会は、契約者も戦えますが基本使い魔同士を競わせます。だからこそ、私も姫に協力しました。


あの時初めて、半獣化ができました。

『半獣化?』

『適当に名前をつけたんですけどね。獣化できない代わりに、人の姿で獣の姿を纏う。生憎使うと皮膚が破れ痛いので軽く見せれるものではないのですが。』


そこで私たちは勝ちました。姫は『冥界の姫』と言われ、女性初の組織入りを果たしました。


そして、今。

私たちは王の座を狙っています。


『姫の願いは、不幸な使い魔を全て減らすこと。人の手による支配を逃れ、自由にさせるのがねらいです。すべの者が平等に暮らせるせかい。そのせかいを望んでいます。』

『それで今につながるんだね』



……さて、この話はここで終わりです。

「なんか眠くなってきた。使い魔さんはすごく頑張り屋さんなんだね」

「そうですかね。」


「すぅ……すぅ」

彼に布団を乗せ、使い魔は自室に戻った。


いつも想う。

もし、私がいなければ……姫はきっと普通の生活ができて幸せだっただろうな。と。


今の私に出来ることは、姫を王にし姫をよく思わない権力者から姫を守り、その地を確立することだ。


もう日は少ない。私はあと何日姫のもとに居れるのだろうか。あと何日、私の身体は動くのでしょうか。


『私が死ぬまでピーちゃんは一緒に生きてくれる?』

『ピィ!』

あなたとの願いが叶えられないと知ったあなたはどんな顔をするんだろうか。

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