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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
新章1 第三次世界代理戦争魔人選別編

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退院

 それから半月が経った。

 俺はリハビリを行い、普通に走るくらいまでに回復した。最初は水の中、次は歩行台、短くも長かった。


 夜は高校から送られた課題を書き殴った。

 家族が毎月二回程学校と連絡をとってくれていたおかげで、1年間の昏睡状況はやむを得ない理由と判断され課題の提出で単位を認められた。


 完全に終わったわけではないが、学習内容はもう二年生時の3学期に差し掛かる。補習でも代用してくれるしなんとかなるだろう。流石、工業高校。実習ばかりで勉学は少なくて助かった。あいつに感謝だな。


 だが、死ぬ覚悟が決まっているのに、未来にむけて無駄なことをしている。


 俺がしていることは、格好だけ見せるその場しのぎでしかない。家族の顔を伺い続けている。

 なんで生きるに理由や責任が付きまとうんだろう。理由がなければきっとみんな楽に生きれるし、死んでもいいのに。


 俺が生きる理由は一つだけ。自分の全てを壊した男を殺すだけだ。その理由が終われば、息苦しい人生を生きたくない。半数の人生は人に選択され、選ばれ続ける。選ばれなければ、代償がつく。


 俺はあの男が選ばれた日から呼吸を奪われている。

 今も息苦しい。そんな人生はもう懲り懲りだ。


「お世話になりました」

 俺は病院にお礼を言って、車に乗った。

 歩行もほぼ出来る状態だ。たまに止まるが。


「来週から学校行くよ」

「そんな急がなくて……体調は大丈夫なの?」

「うん。心配でしょ?」

「まあ」

 ばあちゃんに説得し、来週に行くことが決まった。ばあちゃんは世間の評価を気にしている訳では無い。ただ俺が将来困るのが心配なんだ。


 何年ぶりだろうかこの町を見るのは。


 あいつに乗っ取られて3年。あいつが自殺してから1年。計4年だ。


 近くにあったスーパーマーケットは、チェーン店に変わってしまった。忌々しい公園は今も形を変えずに残っている。地球儀が消えたくらいだ。


「ついたよ」

「ありがとう」

 そして、俺の家に戻った。

 俺の部屋には見たことない形のゲーム機が2つあった。ひとつは小さなCDをいれるもの、もうひとつはポチポチする感触やカチッとする音が楽しいもの。


 机の下をみると、パソコンまで置いてある。

 あいつばあちゃんにねだりまくったな。あの臑齧りが。


 俺は丸い凹みを探し、充電した。

 パスワードか、誕生日だろ。


『ようこそ、信田さん』

 ビンゴか。

 周りには沙緒が言っていた女の子のグッズやゲームのパッケージがあった。散々満喫しやがったなアイツ。


 パソコンの起動音と共に軽くいじってみる。

 そこに周りのアプリと違う白いファイルがあった。


「……なになに、『僕は静かに目を閉じる」

 スクロールしてみると彼の記録が書かれていた。


 パソコンを買ってもらえた高校1年の時の記憶だ。

 その内容は様々なことが書かれていた。

 昔世界を脅かしたウイルスがまた蔓延して、学校が休みになった。部活の記憶。高跳びの恩師の話。

 そして、マネージャー兼、デフリンピックに出ようと努力する悠明の話。


 あいつまだ陸上してたんだな。俺は過去に囚われているが、お前は未来を向いていたんだな。それでいい。


 だが、青い封筒のせいで姿はもう俺には見えない。彼女にもう未練はないんだがな。


 スクロールしていくと、最後に自殺のきっかけになりそうなエピソードがあった。

 部活のメンバーとの喧嘩。彰という部長と方向性の違いで馬が合わず喧嘩。その解決をするために彰が皆を引き連れて対等な会話を求めた。だが、対等な訳もなく彩夢が責められ謝罪を求められる。不公平な話し合いに彩夢は納得出来ず決裂。そこから部内の空気は変わり、ピリピリした休めない場所になった。


とんだ部長だな。



 それが精神的に参ったようだ。陸上は個人種目だと言われるが、それは舞台だけだ。舞台に上がるまでに何度も打ち合わせをするように共に練習し高めあう。


 レベルが高いライバル同士であっても合同練習ではビデオを撮り合いアドバイスし合っている。練習内容もペラペラ話す。


 そんな他者との関わりを切られたら病むのも仕方ない。


 そして、もう1つ。

『行けるわけないだろ。お前には才能がないんだから。』

 担任の言葉。


 彼は進学を迷っていた。やはり費用が少ない国公立又は公立の推薦を悩んでいたが先生に止められたようだ。

 その時の説得の言葉だ。


 外の世界では、『やって見なくちゃ分からない』『挑戦しよう』『やってみよう』と励まされ工業校でも小論文を共に練習して国公立を何人も出した先生、生徒などの話題は少なくない。

 そんな光にも影がある。


 そんな先生は1部だけで『やってみたい』を『不安』や『決めつけ』でへし折るのだ。彼自身塾は通っていたし、俺も進学の運はいいから何とか出来るかもしれなかったんだが。


『かもしれない』を『かもしれない』のまま担任は終わらしてしまったんだ。飛ぶも飛べないも試せないまま、空を見るだけで終わる鳥かごの小鳥みたいだな。



 なるほど。俺は彼に少し同情した。

 居場所がなく皆より高く飛ぼうとしたが『才能が無い』。


 彩夢としてあいつは頑張っていたんだ。周りの評価もあるだろうに。まあ、お前は死んだし、俺は進学はどうでもいいんだが。


 まあ担任や部員に嫌味くらいは言ってやろうかな。可哀想だし。さて、俺は制服の腕を通した。横の太さは問題ないが、ズボンの丈は少し短いな。


 とりあえず、学校に行こう。そこで軽く捻った後、東京に行く手段を考えよう。

『あれは私が失敗作として姫に拾われた時から話しましょう』


「ピーちゃんご飯だよ」

「ピ!」

私は殺処分の予定でしたが、その荷台から落ちてしまい姫に拾われました。


『失敗作?』

『そうですね、私たちの世界では使い魔は商品です。生まれながらに使い魔は役を果たすために調合され、教育を受けます。そして、人に渡されます。』


『ただ、もしその商品が最初から壊れていたら?誰も欲しい人はいません。なら教育、住む場所、ご飯……全てがムダになる。だから、最初から捨てるんです』

『そんな』

『今はこうして姫が引き取っていますし、反対派も増えてきました。だから今苦しみ殺されるものは少ないはずです。』

『……。』

『寝る前にする話ではないですね。では、日を進めましょう。』


「私がピーちゃんの主よ。他人の使い魔への攻撃は許されないんでしょ?」

私は世界の中枢で造られたものです。膨大な魔力。そんなものを早々に失敗作として処分しないと暴走してしまう恐れがある。


そのため、私を造ったハカセと彼の使い魔であるレフトバは私を殺すために現れました。


そんな中、姫は私を使い魔として契約したんです。この世界には主をもつ使い魔は双方の同意しなければ攻撃ができません。


『良かったね』

『そうですね。ただ……』


その一部始終を見ていた者が町に広め、姫の住んでいた町から追い出されました。

『私がいなければ姫は町を出ることもなかったんです』

『そんなのひどいよ。だって使い魔さんは危ないっていっても……』

『仕方ないんです。本来、国が主として管理するものが一個人に渡ってしまったんですから。もう交渉の争いも勝ち用がないですし』


そこで私たちが行った場所が今の場所になります。



『……すみません。なんか眠れなさそうですね。』

『まだ聞く!』

『そうですか。まあ端折ると半分くらい来ましたね。あと半分語りましょう』

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