青い封筒
沙緒にTwitoriを見せてもらった。
『青い封筒』若者の中で知らない人はいないほど有名らしい。基準は不明。もし、実力や成績で選ぶなら俺は選ばないだろう。
ただ1つ。選ばれた人間は、そのつぶやき以降新着がない。インフルエンサーさえ選ばれて以降更新を止めてしまった。
この選ばれる。という行為にやはり不信感をもつ者が多そうだ。よく分からないけど選ばれない負け感が不服だったり、おだてられてムカついた、アイツらは死んだ。など意見は憎悪や都市伝説が混じりバラバラだ。
「異世界といい、魔力による支配を世界が選んだといい。どうなってるんだこの世は」
「全くそうだ。本当に先が読めない。」
終縁施設を調べても場所が出なかった。紙には書かれたような隙間があるが、白紙だ。
本当に魔力がこの世で使えるのだろうか。
そんなことになれば、強さのバランスは崩壊するだろう。権力、身分、それらを魔力で覆えるようになったら……。
「魔力による支配ねえ。まあ、なんかあったら力になるよ」
「どういうことだ?」
俺はなんとなくだが自信があった。シャーゼンロッセを使えなくても、銃はまだ手元にある。
流石に、ここで見せれないが。
「一応使える。」
「異世界に行ったからか?」
「いや、昔から。異世界のイメージがなんか知らないが、死を這いずりまわる人間や神が殺しにくる世界だった。」
沙緒はポカンとしていた。
「神って優しいやつじゃないのか」
「俺らと同じ言語が使えるだけで、中身がない空気みたいなやつだ。ただ周囲を荒らし邪魔をしにくる。俺の検索を邪魔するTwitoraのスパムみたいだな。」
俺は勝手に沙緒のスパムをブロックしていった。
神のイメージとは意外だったらしく、彼はそうかと困惑していた。
「それにしても信じるんだな。」
「お前が1年間も眠るのはおかしいからな。そのくらいぶっ飛んでたら納得する」
「そうか。」
1年間にしてはあまりにも長かった。天空、現実世界、精霊界、よく分からない奴ら、あの世界。とんでもないな。
「さてそろそろ帰らないとお袋が心配するきん帰るわ。」
「わかった。ありがとう」
沙緒は俺にお見舞いのプリンを渡してくれた。
「なあ、彩夢。もし……お前が元気なら最後の大会でないか? 俺多分引退するから。」
「大学は?」
「俺、医者になるから。多分出来ないと思う。」
そうか。俺が眠っていた間に、もう卒業は迫っている。
今は確か6月。陸上もシーズンはもうピークになり10月には終わる。
「わかった。リハビリ頑張るよ」
「よっし! ユニフォームで写真撮ろうな」
「あぁ」
俺は沙緒を見送った。
青い封筒の謎も気になる。だが、美喰楓の居場所も調べなければ。
その時、LINECOにメッセージが来た。
幼なじみの美沙採だ。メッセージもだるくなり、電話をかけた。
『彩夢、大丈夫?』
『あぁ、1年眠っていたが問題はない』
『そっかあ。ばあちゃんの話で先に聞いてたけど、良かったよ』
安堵したように息を零していた。
美沙採に電話をかけたのは、彼が情報通というわけだ。
彼のばあちゃんが噂好き、電話よりも早く情報を手に入れる。お母さんも同様に市役所で働き情報を持っている。
俺としては1番相手にしたくない。
「その話はまた会ってからゆっくり話そう。その前に1つ気になったことがあるんだ。夢で美喰楓が危ない目に遭ったから、変に予知夢じゃないかなって。最近美喰楓元気?」
「あー彼か。」
その後、美沙採は意外な言葉を出した。
「追加で選ばれたんだって。あの青い封筒に」
俺は心臓に傷が入ったのように感じた。
俺から全てを奪わったやつが遠くに行ってしまったのだから。
「その青い封筒。俺にも届いたんだ。終縁施設の場所知らないか?」
「ごめん。多分、ここらへんじゃない。国にとって大変そうだし、東京とか?」
「東京……」
俺のところ。賀志川から新幹線で8時間。しかも、3万はいるだろう。バスにしても1万だ。
「大丈夫?」
「あぁ。ありがとう。色々久しぶりで混乱してるんだ」
「そうだね。この1年間色々あったもんね。僕でよければまた教えるね」
電話を切り、ため息をついた。
青い封筒……魔力による支配……美喰楓と悠明の選別。
嫌な予感しかしない。
「シャーゼンロッセ助けて」
「……」
仕方ない。今は高校生として生活するしない。
「ぅぐ……」
「どうですか、ユキ」
あの祠から帰って、僕らは寝室にいた。
少しテストがしたいと、使い魔さんは僕の血を採って舐めた後に、ユキに飲ませた。
「もっと……ほしい……もっともっと!!」
ユキは目を大きく見開き僕に手を伸ばした。
使い魔さんのその様子をみて、口に石をいれた。
「やはり血酔いは宿命みたいなものですね。」
「うっ……まずい!」
ユキはぺっぺっと吐いた後、疲れたように座り込んだ。
「ユキ、小型になってください。」
「はーい……」
ユキは倒れ込むと白いキツネのような姿になった。
「今日はユキと寝てください。触ると霜焼けが出来るので布団の上に寝かします。」
使い魔さんはユキを寝かし、僕にも布団をかけた。
でもなんか眠れない。ピンチになってドキドキしてからずっと眠気がない。
「……」
「眠れませんか」
使い魔さんは考えながら口を開いた。
「何か話をしましょう。この世界の昔話とか、なんか聞きたいことないですか?」
聞きたいことかあ。
「使い魔さんが子どもの時の話聞きたい」
「えっ私ですか」
意外な答えなのか驚いていた。
「うん!」
「じゃあ少しだけ話しましょう。これは私が失敗作として殺処分される日に遡ります。」




