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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
新章 カミノハコニワ

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消えた想い

彩夢の目的は現実世界で魔力を持つアラストリアの力を使い、復讐することだった。

その復讐を邪魔するようにカミノハカニワに閉じ込められる。その世界から抜け出すために奮闘していた。


そして、最終地点にて神と名乗るヘルメスが現れる。

 頭に銃をあてる。否定しろ、あんな優しさなんて、自分の感情なんて、あるだけ無駄だ。


 銃を握る手がガタガタと揺れる。撃て、撃て……!


「……っあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」

「精神的にもうダメみたいですね。本当に人間は脆い……さあ終幕としましょう。」

 トリガーに手をかけた。


『ダメだ彩夢。』

『お前……!!』

 その時、俺の前に俺が現れた。俺に瓜二つのような彼は意識が途切れそうになる中存在していた。でも、声だけは覚えてる。昔一緒に暮らしていたアラストリアだ。


『その想いを撃てば我々は存在できない。それを弾いたらお前は人でなくなってしまう。』

「じゃあどうしろっていうんだよ!」


 その瞬間、辺り1面が固まった。

「……!?」

『忘れるな、俺はあの過去があってこの姿がある。』


 彼は険しい顔をしながら叫んだ。


『思い出せ。暗闇の中の希望を。お前が生き抜いた動力はなんだ。光無い世界に何を感じた? この無力な世界にきて何を思う?』

「……それは。…………わからない。」

 答えが出なかっな。あんな世界もこの世界にも希望なんてない。ただ復讐のためにずっと意識を保ち続けていた。


『このまま終わりたいか?」

「それは嫌だ。でもなんでか分からないんだ」


「お前はあの日俺の力に頼った。あの時からお前は大事なものを失っている。思い出せ、なぜお前は小学校のあの日優勝できたのか』

 なんで……?


 ―――

 ずっと強かった訳じゃない。最初は周りの人にも勝てなかった。ただ、

 カタッ

「……!」

「もう少しだったわねえ」

 地区大会で2位。それでも次の時には1位を取った。


 県大会も最初は6位……2位だった。ただ負けたのが悔しかったから何度も練習して研究した。朝も昼も夜もずっと考えていた。


 悔しくて何度も何度も跳んだんだ。

 ―――



「多分……悔しかったから。」

 なんで勝てなくなったんだろう。そういえば、中学の俺は『悔しい』ではなく『憎い』だった。


「……そっか。俺はあの時から俺は相手を恨むばかりで、自分を高める気もなく見ていなかったんだな。」

『その気持ちだ彩夢。それを気づいたなら受け入れられる。逆境を見つめてこそバネになり翼となる。お前はずっと俺に押し付けてきた。悔しさの根源である感情すら否定してしまえば我々は生きていけない。さあ再起の時だ。俺が……我が自由へ開く翼になってやろう。』


「このまま終わるなんて悔しい。俺はもう一度!」

 彼は嬉しそうに頷くと、光を放った。光は姿を変え、アラストリアではなく新たな姿へとかえる。

『さあ、共に掛け上がろう。彩夢。』


 その瞬間、辺り1面の時は動きだした。

「……あぁ。力を貸せ! シャーゼンロッセ!」


 シャーゼンロッセは周りの人影を撫でるように動き、黒い液体に溶けて俺に入り込む。


「なにこいつ……!? 知らない、聞いていない!なんで動かない!ねえってば!」


 この雑音が流れ込む感じ。気持ち悪い。

 声は聞こえないけど、悲しみや怒りが伝わってくる。何を考えているが分からないが……雑音でも何故か気持ちがいい。


 そっか。どうにも出来なくて悲しいんだな。お前達の個々の願いは叶えられないが、この女を許せないんだな。


 大丈夫。もう何も考えなくていい。

 俺は未だ動く人影に銃を向けた。


 ――バン

 強い魔力がこめられた銃弾が、由気の頭をぶち抜いた。


「安心しろ。全員俺の中で生かしてやる。なあシャーゼンロッセ!」

「グルアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」

 シャーゼンロッセの雄叫びに、周りの人影は道を開ける。俺たちの前には彼女がいた。

 この空間にある魔素に、概念を与え……剣を創る。


「よくも弄んでくれたな。」

「人間ごときがこれで勝った気にならないでください。ブリッシュ・コール・サーデン! マヒット・エタル! ホビット・サン・ツワイスト!」

 彼女の背後に円形の絵が次々と浮かび上がる。その呪文はウィストリアと似ている。

「概念付与」

 剣と銃に魔力を打ち消す念をこめる。電撃だけはくらうと終わってしまう。


 真上に出た雲を打ち消した。だが、何度も何度も蘇る。

 足元には氷が張り、前方には波のような炎が押し寄せる。

「グルルアア!!」


 シャーゼンロッセは、前方の炎を受け止めた。そして、目を見開き魔力が溢れた口を開く。

「お前……」

「ぐる!」

「逆境(ディス・ミラエンタ!)」


 俺の声と共に、バチバチとなる魔力を吹き込んだ。ヘルメスが反応するよりも早く包み込んだ。


 姿が見えないまま前と同じように魔法陣の音がする。

「……ウイングス・エグメルト・テンペスト!!ブレッシュ・ウォーター・キプト!!!シャシア・ライト・エクス!!!!!」

 魔法がまた光る。全部知らない呪文だ。

 俺はまた銃と剣を備えた。


「――――!?」

 四方八方から眩しい光が襲い、竜巻、雷雨が現れ襲いかかる。竜巻に巻き込まれなんてしたら身体が無事なはずがない。



 障害物が波に巻き込まれ、外から耐えるだけでも皮膚が切れていく。まだ……まだ……耐えろ。


 目の前に来る時まで、ほんの数mmに圧縮された魔力が竜巻に届くまで。雨風に光に耐えながら銃だけはと握りしめる。


 俺は銃を構えた。

『その概念を奪う』


 放たれた銃弾は、竜巻の遠心力を奪った。そして、背後からシャーゼンロッセが目を見開いた。

『逆境』

 再度咆哮し、彼女の魔法陣を打ち破る。

 彼女は動揺しながら服についた土を払い、引きずるような笑みを見せる。


「私が負ける?ははっははは!はははっ!ありえない。大四天(だいよんてん) ヘルメス・ギニア・チャコルの名において『舞台』よ、運命に従い荒れ狂え!」


 彼女は聞き馴染みのない名乗りをあげる。


「ウッ……ウッア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」

 周りで倒れていた人影が再度立ちあがる。天気は雷雨どころではなく、雹のようなものが頬を掠る。

 周りの地面は激しく揺れ、周りの黒い壁はザッと音を立てながら動き始める。


「なんだ!? こいらだってさっき倒したはずだ」


『人間は環境には抗えません。産まれも場所も周囲も天候も運命! お前はここから出られないまま死ぬんです! 大人しく運命に飲み込まれろ!!』


 声をする方を見上げると、白い翼を広げたヘルメスがいた。それ以上に、背後に忌々しい渦のような化け物が現れる。


『起動せよ、神聖獣 ボルテクス!!』

『――――――――――――!!!!』

「ね、見てみて!」

「なにこれ」

「これにいちゃの羽! お守り!」

ユキは弥生を連れて町を見せていた。様々な場所に羽が吊るされている。


「使い魔さん、羽なくならないの?」

「どうだろ、でも大丈夫だよ。にいちゃフサフサだから!」

ユキはそう言いながら、ある祠に指をさした。


「にいちゃが守っている大切な場所! 涼しいからたまにいくの」

「そうなんだ」

僕がついていくと、祠から小さな目が光った気がする。

ユキがこちらを向いた途端、爪のようなものがみえた。


「危ない!」

「えっ?」

僕は咄嗟に魔鉱石を投げつけユキを守る。


「不純物 確認 排除する」

男の子のようにみえるけど、爪は長いし目はなんか怖い。


「アイス・ベール」

ユキがそう呟くと、彼の周りが氷の壁につつまれた。


「いこう」

「うん!」

ユキに連れられ、森の茂みに身を潜める。


「なにあれ」

「知らない……にいちゃから聞いてない」


その時、男の子と目が合った。見つかった。

すごい勢いで走ってくる。


「「きゃあああああ!!」」

その時、空から黒い影が男の子を蹴り飛ばした。

黒い影は使い魔になり僕らの前に現れた。


「使い魔さん!」

「にいちゃ!」

「間に合って良かったです。あとは任せました」


目の前に、水が円を描くように流れ壁ができる。僕の前には、水の塊から髪の長い女性が現れた。

「レフトバ!」

「話は後です。2人とも行きますよ」

「待って、にいちゃ! あっ……にいちゃ……」


使い魔は連れていかれる3人に目配せをして、前へと睨みつけた。

「ここは私の縄張りです。おかえりください。」


「きょひ、名称 レクイル 対象 確認。調査を始める」

「なるほど。貴方が例の成功品みたいですね、理解しました。なら、覚悟してください。」

使い魔は影から鎌を取り、相手へとむける。

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