この世界の真相
アラストリアを抱えながら、暗い道を歩いていく。
あの過保護な町の人達にランタンをもらって正解だった。
この先は真っ暗らしい。それでも突き進む輩はいるらしい。皆自分の力に目覚め、さらに強さを求めに言ってるとかなんとか。
ゲームなら、お金で遊んだり、欲を満たしたりする場所があるからそういうのを狙って行く人もいるらしいがもの好きだな。
ただ、この先は最後と言っていた。なら、その人達はどうなるんだろうか。
「お待ちしておりました。」
夜道の中に、自分と同じようにランタンを吊り下げた女がいた。
「お前が最後か」
「えぇ。」
その瞬間、周りが明るくなった。
彼女はランタンは空間を引き裂いて、中にいれる。
長い髪に、前側に三つ編みをしている女だった。
どうしてこうも天界の上のやつは髪を三つ編みにするのだろうか。白い帽子を被り、長いロープ……魔女みたいなやつだな。
「私はヘルメス。戦う前に、あなたみたいな人間と是非お話がしたいんです。」
「また人間知りたい系か。他でやってくれないか。」
人間とコミュニケーションでもなんでもすればいいのに。ここに沢山いる訳だし。
「そう言われても、人間との接触は基本的にしないんです。女神の時は仕事でしていましたが……。女神以外接触はしないんです。」
そういえば、ウィストリアは例外だった。そういえばなんであいつがついたのだろうが。
「それはですね。あなたが異質だからこそ、天空で1番対処できる力を持ち、芯のある方に任せたのです。まあ、やはり人間との接触は良くなかったみたいですが。」
……こいつ。俺の考えていることがわかるのか。
「はい。」
そう彼女は微笑みかけてきた。テレビで見たらすごいだが、実際にされると気持ち悪い。
「そんな事言わないでください。あー。テレビとか久しぶりに聞きましたね。」
そうだな。で、元女神さん人間の接触が良くないとかいうのに、俺と話したいとか言わずにさ。やることやれよ。
俺は銃を取り出し、胸元で構えた。
「あの、言葉で言ってください。ややこしいんですよ、あなたの行動にもナレーションがあるので分別するの大変なんです。まあいいでしょう」
彼女はゴホンと咳払いをした。
「あなたみたいな人間に教えてあげましょう。我々天界の民には足りないものがあります。それは「情」。怒りも悲しみも喜びも言葉も仕草も全てはデータのようにマニュアルを通すのです。あなたみたいに会話を放棄しません。天神様が創りあげるものに情はいりません。なぜなら、情は秩序を乱す。」
なるほど。情がなければ、ふざけて俺みたいに会話を放棄するやつもいないだろうな。まあ面白いから聞いとくよ。
「ありがとうございます。情があれば、欲が生まれ、欲の差分に嫉妬が起きる。横1列の役職の中にも上と下ができる。そして、人間に対して平等に接しない。一つ一つの行動に好きと嫌いを抱き、心を濁す。」
もう楽しく話し込んでるし、こっそり帰ってもいいかな。アラストリア、どうしたら帰れる?
「ギャウ?」
そうか。意味が分からないか。帰ろうと言っているんだ。
「……?」
「あっ、声出してたつもりなんだが。すまない。おい、ややこしいだよ。」
「だまってください!人が話しているんだから邪魔しないでください」
「人じゃなくて神じゃん。」
「うるさい! ばーか、元は人間ですよーだ!」
……人間???
「あっ」
「人間?クロクと同じなんだな。神って人間からなれるんだ。ふーん。なんかずっと思ってたんだけと神聖感ないね。」
「馬鹿にするなよ! 私は女神として長く天国で務めて、努力が認められて、神聖獣と契約してここまできたんです!」
なんか、最初の神ですよ感が台無しにもほどがある。こいつに最後任せた上は何考えているんだが。
「あーだまれだまれ。むかつきます。で! お前みたいな情が持ったやつが天界に来て、関わるとデータに無いことされてバグるコンピュータみたいになるんです! で、それを防ぐために人間から生まれ変わった女神を創ってます! で、その女神代表が私!」
なるほど。……なるほど。
「2回も言わなくていいです。とりあえず、あなたに1つお聞きします。バグったウィストリア。捨てようと思います。よろしいですか?」
「なるほど。情を持っているからこそ、揺さぶろうと。だが生憎だが、俺には愛着がないやつだしどうでもいい。」
俺は外で見てただけだしな。どうでもいい。
「本当にどうでもいいみたいですね。……あなたはどうですか、アラストリアさん。」
「ガウ?」
(ガウ?)
「なるほど。アラストリアさんの中身を出すには一定の力がいるみたいですね。聞けるなら聞きたい事があったのですが。なら……これならどうですか。」
彼女が呟いた途端。彼女の元に男が現れた。
この男……あの洞窟で過ごしたやつだ。
「由気という少年を使いましょう。まあ、あまり記憶がないかもですが」
「……何する気だ。」
「少し遊ぶだけですよ。」
由気は立ち尽くしたまま、しばらくして口を開いた。
「……なあ、助ケてくレ。彩夢。」
そう言うと、俺が教えた炎を手から出し投げつける。
「――っ! 趣味が悪いな」
「そんな事言わないでください。さあさあ、このカミノハコニワ。全ては私のモノですよ。哀れな人間に最後の仕事をあげましょう。」
その瞬間、大きな音がした。バキバキ、ザッザと破れるような音がする。
「せっかく出来たお友達もぜーんぶ無駄にしてあげましょう。」
「ガウ!!」
「なんだ」
上を見ると、全体にあった赤い空が切り取られるように、黒くなっていく。
由気の後ろには別れの町で出会った人達が俯いていた。
「まだまだ! この世界カミノハコニワの役目は1つ。この世界の頂点まで行くほどの実力者……能力者を覚醒させ、増やし、お前みたいな人間の心と身体を殺ぐための道具となるためにあるのです。」
周りから知らない顔のやつがフラフラを現れてくる。
「このためだけに、あんなに町を荒らしたり、モンスターを強くして、人間を殺したと?」
「えぇ。弱い者はいりません。弱いのが悪いんです。物事のためには喰い尽くす意識がないと。それで幸せを望むなんて虫が良すぎるんです。」
「悪趣味にもほどがある。人間同士で殺し合えと?」
「えぇ。我々天界は、転生を望む人間に優しくしてきました。でも、そんな夢話あるわけないでしょう?信田彩夢。これが人間なんです。あなたの大っ嫌いな、ほんの少し愛着が湧いた人間です。好きなだけ愛し合ってください。ここがあなたの墓場です。」
「アラストリアさん共々。潰れてしまえばいい。特別な人間など必要ない。皆同じく醜いのです。さあ始めましょう。最期の晩餐を。」
「……くそが」
「シネシネシネ!!」
「お前みたいなガキノセイで!」
「ワタシのシアワせな町が消えましタ。」
……やっぱり人間は大事にしない方がいいらしい。
「やるしかないようだ」
「ギャウ」
「おい、しっかりしろ。」
フューブリッグはウィストリアの身体を揺する。
「……っ!……、……」
「これはひどいな。魔力がおかしくなっている。天使なら魔力が安定しやすいが故に慣れていないだろう。それにただの魔力暴走ではなく、魔力の質が重い。」
「しっかりしろ。おい。ウィストリア」
「……っ……」
「はあ。手間のかかる弟子だ。耐えろよ。」
ウィストリアを抱えあげ、ヒューブリッグは翼を広げ天界へと戻った。
またしばらくお休みします。就活があるので……すみません。