表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
現実世界へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/157

第8話 変化の風向き

あらすじ

学生として奈美を救う事にした2人

果たして未空達を説得出来るのか


そして、僕は訳の分からない骨を食べて気絶した

 「あれ……」

 僕も知っていた景色は消えてしまい、急に近所のレストランに変わっていた。



「…ぇ」

 何話か見逃したか?


「ん。何か言った彩夢?」

 誰かが僕の前でご飯を食べている。



「――っ」

 少しずつ意識がはっきりしていくと、前に座った白い影がくっきりとしていく。



(お前はみさと!?)

 あの、人懐っこそうな顔に長めの髪。間違いない、小さい頃からの幼なじみだ。相変わらずマイペースにハンバーグを切って食べている。



 しかし、何故ここに? どうなっている? そして、何故美沙採がいるんだ?あらゆる疑問が出た所で、誰も教えてはくれないし、ヒントもない。



「ねぇ、彩夢」

「ちょっと待て、これは何の真似だ?」

 僕は黙ってはいられず、急に立ち上がり声を荒げた。


「……?」

「いや、だから」

 どんだけ聞いても、美沙採は何も答える気はなさそうだった。



 そして、唐突に口を開いた。

「いつも仲良くしてくれてありがとう」

 なにを急にいいだすんだ? それに 、僕にはもう会うことは



「美沙採、僕は」

「これからも仲良くしてね。そして………」


 もしかして、僕の声が聞こえてないのか?

 この状況、これは過去なのか? 思い出そうとしても、ありもしない記憶だが。



「帰ってきて。だって……は…まだ……」

 美沙採は途切れ途切れの声で何かを言おうとしている。悲しそうな顔つきで僕の腕を掴みながら。



「だから、行かないで。」

「何を言ってっ………」

 ザクッ

 大きな音が僕の頭上で鳴り響いた。



「なんだよ?」

「………時間。」

 美沙採が空を見上げながら小さく呟いた。



「次は」

 音は次第に大きくなり、天井に穴が空いた反動か、空間がひび割れ真っ暗になっていく。気づいた時には、美沙採も腕を捕まれた感覚も無い。



「美沙採!!」

 空間は反転し、真っ白な空間で遠くに遠くに声をあげた。届くように、何かを掴むように――


「……」

 懐かしい顔は白い世界から消えていた。何もあとを残さずに。



「っ………」

 僕は言葉を失ったまま立ちつくすしかなかった。


「ごめん。死んでしまって。」

 死ぬ前にもう1度、会いに行けばよかった。

 


 僕はお前を裏切ったのかもしれない。また、遊ぼうと約束していたのに……美沙採は僕を裏切ったことなんてなかった。

 濁った色が頬から流れていく。


 悔しさと悲しみがグチャグチャになって、無性にいらだちが沸いてくる。


「ああああああああ!!」

 声を荒らげると同時に視界に光が入った。




「  夢!! 彩夢!!!」

 目の前には、彼の面影1つないウィストリアがいた。



「大丈夫か?」

 気がつけば、僕は頭を抑えて叫んでいた。夢だったはずなのに、涙はまだ止まってくれない。



「大丈夫か!」

「っ………」

 ウィストリアはびっくりしながら、手に持った骨を握っていた。ピシャピシャと宙を描くようにその物体は動いている。



 おそらく、僕の喉に刺さっていたやつだろう。気絶でもして倒れたのか。さっきのは? ただの走馬燈?



(あの感覚………まるで本当の)

「どうしたんだ!? 顔色が悪いぞ」

「……あー大丈夫です! 少し昔の夢を見てました」


 ウィストリアは心配そうに僕をたたき起こす。

 本当に申し訳なかったが、あの美沙採が頭から中々離れてくれない。



「ならいい。彩夢、そろそろ学校が始まるが行けるか?」

 既に、有彩は食器を片付けていた。ランドセルは僕の分まで机の上に置かれ、準備は出来ているようだった。



「いけます。あと次は僕も料理を手伝いますから、 お世話になっていますし。」

 流石にこれ以上、あんな物を食べさせられるのはごめんだ。あと、恩も返したいし。


 

「いや別にいいぞ。休んでくれ」

「いえ、させてください!」

 力強く言うとウィストリアは考えこんでいた。 これでも料理は上手い方だが。



「じゃあそうしよう。あと本以外にも現実の料理を教えてくれないか? 興味があるんだ。」

「勿論です!」

 ウィストリアの気を害する事なく、僕に降りかかる災害は最小限に抑えられた。



「よし、行くぞ!」

「はい!」

 僕達は学生になり学校へ向かっていった。



 学校につくと奈美が手を振っている。

「おはよう零!有彩!」


「おはよう奈美」

「おはよう。元気そうだな。」

 僕達は合流し一緒に教室まで歩いていった。奈美は紙袋を持ってソワソワしているような気がする。



「それ、どうしたんだ」

 と僕が聞くと、「やっと聞いてくれた! 」と言いたそうに嬉しそうな顔をした。



「じゃーん!見てみて」

 僕達は紙袋に目を通した。これはパンだな。


「今日もパンを焼いたのか」

「うん!なんかハマっちゃって練習にもなるしね」

 そう言うと、有彩と僕にパンをひとつづつ渡してくれた。



「ありがとう奈美。また感想をいうからな」

「僕も」

「ふふ…ありがとう!」

 それにしても奈美はどっぷりとハマっているようだな。



 袋に入っていたのはクロワッサンだった。

 本番はクロワッサンを渡すようだし、ちゃんと感想を言わないと。


 形は綺麗にまとまっていて美味しそうだ。あとは、味だけか。

「美味しいな! パリパリしてる」

 気づくと、有彩は既に美味しそうに食べていた。


 僕はてっきり昼ごはんだと思ったが。有彩に続き、半分に割って食べてみる。


「…うん。」


 パリパリしてるが甘さが薄いかも?

 奈美の母と比べるとだが。


「甘さが少し薄いかも。」

「だよね。焼きすぎたし間違えて塩いれちゃったんだよね。」

 塩クロワッサンだな。



「でもまだまだ練習よ!」

「あぁ、そうだな。頑張ろう。」

 この調子なら1週間あれば完成出来そうだ。



 そういえば、

「今日は何曜日だ?」

「木曜日よ」


 やっぱり木曜日か。確か陸上はオフだったな。

「今日は陸上がオフだから速く帰るよ」

「本当? 待ってるわ!」

 そんな会話をしながら教室に入ると、渚が僕を待っていた。



「おはよう! 零〜、なあなぁ聞いてくれよ」

 渚がニッコニコした顔で僕を捕まえる。


「おはよう、どうしたの?」

「それがな!未空がクラブのマネージャーになったんだ!」

「え!!」


 ………取り巻き達が言ってたのはこの事か

「いやーびっくりしたよな〜」


 でも、どういう心境だ?

 僕はただ外に連れて行っただけなのに。思い切りがいいというか。



「未空に聞いたら誰かの役に立ちたいとだとさ。」

「うーん、なんでだろうね?」

 正直この展開は予想してなかった。取り巻きと群れるのを辞めただけかと。


 確かに教室から外に連れ出して、好きな事をやっている渚の姿を見せたら、何か変わるかもとは思ったが。


 少しのキッカケでここまで変わるのか?



 渚達と別れ僕が席に着くと、隣の有彩に人集りが出来ている。


「有彩さん美形でカッコイイよね〜」

「眼鏡っていうのがまた!」

「いいわ〜」

 気づけば有彩は相当な人気者になっているようだ。

 皆から勉強を教えて貰いながら、有彩は、うんうんと頷いている。


「8×8は48じゃないのか」

「8×7より減ってるでしょ?」

 有彩も学校に馴染んでいるようだ。



「はーい、皆席に座ってー」

 チャイムが鳴り先生が入ってくる。


「1時間目は体育! えーと、バレーだったかな? 速く着替えて準備しておいてね!」


 1時間目は体育か。

 先生に言われた通り、急いで服を着替えて体育館へ向かった。そういえば、小学生って皆一緒に着替えるんだな。僕も結構歳をとったもんだ。


 僕は壁に向かいながら服を着替えた。



「彩っ……零、バレーって何だ?」

「ん〜。」

 有彩はバレーボールを持ちながら首を傾げる。昔から苦手だったし説明がしにくい。


「私教えるの得意よ! じゃあ零は、パス相手になって」

 奈美はピョコッと僕の前に現れ有彩のボールを受け取った。



「僕……下手だぞ?」

 言った通り、軌道が外れたボールだったが、奈美は得意顔で打ち返す。


「……!」

「おーこれがバレーか!」

 奈美はバレーが相当上手いようだ。有彩にも一つ一つ、分かりやすく説明している。



「…で、これがスパイク!」

「がふっ!?」


 急に視界が無くなり、顔面にボールが叩き込まれた。

 中身、高校生が小学生に、ボッコボコとは………



「ごめん零!」

「大丈夫。大丈夫」

 陸上は出来るが、球技はサッカー以外、平均ちょい下だ。

 高校では運動部なのに、クラスマッチに出させてくれずオセロをやらされる羽目だったし。


 まぁ、勝ったが。



「零も苦手なのってあるのね」

「そりゃあるだろう。何でもできる人なんていないぞ」

 多分。



「ま、それもそうね。じゃあ!鍛えてあげるわ!」

『……』


「本当か! んっ……?」

「どうしたの?」

「いや、何でもない。お願いします。」

 誰かの視線を感じた気が。まぁ、期待されて恥をかくよりは今目立った方がいいな。


「はーい、皆集まってー」

「はーい!!」



「……」

 まだ授業が始まっていないのに、僕はボロボロになっていた。おかげで活躍は出来たがな。


 有彩もあの短期間である程度は出来るようになっている。



「奈美は教えるのが上手いんだな。」

「えへっ……そうかな?」

 奈美は恥ずかしそうにつぶやいた。



 そんな体育が終わり、3時間目の休み時間に久しぶりに1人で風を吸いたくて屋上にでた。



「ふぅ…」

 正直最近走り回って1人になって無かったし疲れた。


 小さい頃は風だけが友達だった。僕は風に吹かれながら昔を思い出す。

 風はザワザワしている。まるで、何かを暗示するように

 昔か。



『酷い!絶対に許さない…そうだろ!?』

 風はその問いを答えるように優しくふいていた。


『友達なんかいらないや』

 毎日毎日、泣いて風に話を聞いてもらっていた。



「今思うと黒歴史だな」

 でも……あの時。風は本当に慰めてくれたようだった。



「何してるの?」

 バタン!扉が空いて僕はびくりと飛び上がった。

 なんだ、未空が入ってきたのか。


「ごめん、驚かしたかしら」

「ううん。大丈夫」



 未空も考え事だろうか。

「ねぇ、私がマネージャーになったの聞いた?」

「あぁ…」



 未空は僕に何かいいたがっているようだ。

「私、お父様が忙しいって言ったでしょ。それで、あの子達相談した事があるの。 そしたら、学校で1番になればいいわ。そしたらきっと見てくれるってね」

「そうだったのか」


 ま、大体は読めていたが単調すぎるし、息苦しいだろうな。そんな方法。


「1番になれなくて自分が嫌いになって、その腹いせに私はクラスの子達を……今になってみれば…」

 途切れ途切れになりながらも未空は話してくれた。



「うん」

 ゆうの事だな。この言い方だと他にもいそうだが。



「ただ、ストレスをぶつけていただけよ。快感だった。だから何度も付け上がって……!」

「うん。少しずつでいい」

 呼吸が乱れていく。僕は心配になって傍に寄り添った。



「そんな時、あなたは毎日心の中では、話してなくても褒めてくれるって言ってくれたでしょ? そこから、少し前向きに考えられて、思いきって聞いてみたの。」



「うん」

「そしたら、当たり前だろ?私は未空の父だぞって…そして褒めて………くれるようになった」

 未空は涙を堪えきれずに泣き始めていた。



 1位になる事だけに執着していたんだな。

「………。」

「もっと速く気づいて…言えば良かったのよっ! だから…!これまでした事、全部償いたくて足を引っ張ったから」



(人の役に立ちたいだけだからって)

 渚が言っていた言葉に合点がいく。



「マネージャー楽しい?」

「え? うん……」

 未空は予想外の質問に驚いていた。



「やったことない事だらけで……頑張っている人を手伝うのは、その…何かいいかも」

 未空はこれまで見せたことのない笑みを見せた。……ずっと思い詰めていたんだろうな。


「ねぇ零。お願いがあるの」

「何?」


「私、奈美だけじゃなくゆうや紅佐飛にも謝りたい」


「でも、私………取り返しが…」

 未空はまだ自分を責めている。この問題が解決しない限り、未空も本当の意味で前に進めないだろう。



「まだ間に合うよ。……でも、消えた時間は戻らないし、自殺しようとしていた事実は変わらない。」


 釘を刺すようで申し訳無いが、こういうのは言っておかないとな。自分の為に、誰かを犠牲にするのは間違っている。


「奈美が!?」

「ゆうもだよ。もしかしたら、紅佐飛も考えていたかもしれない。」



「…………私は…私は」

 未空は膝から崩れ落ちた。



「いじめは自殺にも繋がる。そのくらい悪質だ………だからそれをしっかり反省して」

 未空は俯きながら静かに頷いた。



「よし!…じゃあ手伝うよ。いじめた事に心を痛める気持ちがあるなら大丈夫。」

 未空は昔の僕に似ているな。



「私、変わりたい!」

「きっと出来るよ」




 ま、僕も最初はいじめてた側だったしな。

次回予告

ついに未空も奈美と共に協力する事になった。

上手くいきそうだが…


そしてその時…僕は


次回 「不穏」

次回は不定期になります。



作者欄(飛ばしても構いません)

いちよう、美沙採についてはもう1つの物語「僕は静かに目を閉じる」の方にでています。


次回も読んでいただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ