4話 別れの町
神に異世界に連れられた彩夢は、異世界を望む死んだ人間を減らすために創られた異世界だと知る。
最初の町を抜け次なる町へきたが途中で共にした人間は門を入った途端に死んでしまう。彩夢は異世界を壊すために攻略を探す。
「とりあえず。まずはこの世界の情報がほしいな。」
あいつの記憶を借りながら、この世界を壊す方法を考えることにした。
1つ、神が付きっきりで異世界を造っているという情報だ。つまりこの世界を造った神を探して倒す。
概念を変えたり壊したりできる自分の力を試してみたが、異世界に定まった概念なんてない。異世界は壊れません!永遠!みたいなのがあれば良かったけど、ないらしい。
「うーん」
「グル?」
アラストリアは頭を抱える俺を心配そうにしながらも前へ歩いていた。
「わからないものを考えても仕方ない。地図を探してくれ」
「グ!」
そして……2つ目。物理的に地図外や空を突き抜けみたり穴を掘ったりするとどうだろうか?あいつの知っているゲームでは、バグという一定の範囲を超えることで異常が起こることもあるらしい。
だが、そんなにうまくいくだろうか?
「あっあの」
「??」
その時、俺を止めるかのように前に人が飛び出してきた。ふざけたような狐のお面を複数枚被っている。
声もこもっているせいで性別が判明できない。
「なんだ。俺は忙しいんだ」
「あ、あの。これ」
狐の人間は俺に花束を押し付ける。花と言っても白い茎に葉がついたものだが。
「さっき貴方の仲間さんが死んでいたので。私はマム。この町の長です。」
狐の面が言葉に反応するように笑みを見せた。気味が悪い。
「ここは別れが最も多い場所。良くも悪くも別れは人が居なければ成立しませんので」
別れねえ。確かに、ここは最初の町から来た者をふるい落とすような設定だが。あの町といい、傷があれば無条件で殺されるこの町といい悪趣味だな。
「……なるほど。つまり、多くの人がここであいつと同じように死んで、俺みたいに生き残ったやつもチラホラいると?」
「はい。ですが、まだあなたは生きている。もし、生きたいのならここで暮らしませんか?死にたくない人をここに留めているんです。」
「ここが安全だという証拠はあるのか?」
「ありますよ。だってここは、ただ最初の町から来た人間を減らすためにしかありませんから。」
確かに、耳をすませば少ない人間が騒ぐような音がする。前の町よりは人気は少ないが活気は確かにある。死に直面して生きたいと願った人間を生かせるために彼女は、此処で囲っているんだろ。
「どこまでこの世界を知っている?」
「この町の事、この町ではこの世界の役割である人間の殺傷を果たせないという欠陥。長い間いましたが本当に何も起こりません。」
やはりこの世界は意図的に人間を殺している訳か。なんのためにここまでするんだろうか。
全員同じ場所に集めて、神が直接殺した方が速いだろ。
「欠陥ねぇ……そんなのは、いつか治されるだろ。それでもこの町を使うのか?」
「はい。いつか神が治しにくるはずですが、それまで楽しい人生が確保されていますから。私も含めて」
楽しい人生か。それにこいつも俺と同じ人間なんだな。
てっきり神の関係者かと思ったが。
「1つ聞きたい。なぜお前らは異世界に固執する」
「……それは初めて聞かれましたね。そうですね、あの世界を切り捨てれば、この異世界しか残されていない。なら、思い描いた異世界とかけ離れていても幸せになれると信じて、信じ通す方が幸せでしょう?」
ある意味可哀想だな。夢物語を信じるほどまでに現実で何かあったのは分かるが。こんな状況まで希望を死と共に持ってきたのか。
「人は言います。自殺をしたら……天界には行けないっていう言い伝えがあるんです。でも、私はここに来れました。なら、それはただの逃げを許さない社会が生んだ話だと思いませんか?」
「その話は初めて聞いたな。」
「わたしはあの世界が憎いです。平気で痛みつける癖に、逃げを許さず、私だけが傷つき、愚か者に罰を与えない世界が。」
彼女は怒りを現すように、仮面を掴みブルブルと震え始めていた。
「だから、私はこの町を理想へと近づけます。いつか死ぬと思えば皆自分の事だけ考える。他人を傷つけず死ぬ物同士好き勝手に叫びながら酒が飲める!喧嘩なく最後まで笑い合える社会が出来る!」
「グル……?」
雰囲気が怖いのか、アラストリアは俺の後ろに隠れた。
やはりこの世界に来たやつは相当現実社会に恨みがあるらしい。1部同情するが、それ以外はただの逃げだ。俺は逃げる気はない。やり返すまで。
「理想は十分わかった。まあお前らがそうしたいならしていいだろう。だが、俺はお前らと考えが違う。話し合う時間が無駄だ。もしお前と同じ存在でも俺は自分を弄ぶ神に報復する。この町を出ていく。」
「ぐる!」
そう言うと、彼女の怒りは冷めたのか黙り込んだ。そして、しばらくすると呑み込んだように頷いた。
「そうですか。……でも、彼との別れは果たしてあげてください」
「グル!」
「わかったよ。」
俺はアラストリアに後押しされ仕方なく花を手に取ろうとした。
しかし……彼女の花は一瞬で枯れ果てる。
「「――!」」
「……っ」
動揺する間もなく、俺たちの目の前に白銀の翼を広げた男がいた。銀髪を後ろに束ねた男。そしてこの痺れるような感じ。俺は瞬時に神だと判断した。
「ウィストリアさーん!! お手紙ですよ!!」
スプラウトは勢いよく、ウィストリアの家にある扉を叩いた。
「なんだ……スプラウト。うるさい。やっと10分休み取れたのに。」
「えっ!10ぷん!? あの……何日働いていたんですか」
「104時間くらいかな」
「……ひぃ!過度な労働ダメ絶対!! 事務というか雑務屋みたいになってませんか!? 押し付けましょうよ!」
「わかってるが仕方ないだろ……で、何用だ」
「手紙が来たんです。」
ウィストリアはスプラウトから手紙を受け取り、目をこすりながら手紙に目を通す。
「……。明日くらいに神界に行かないと行けなさそうだな」
「あ、あした!? し、し、神界!?急な予定を入れてくるなんて! ひどい! ブラックですよ!しかも逆らえないの分かってるくせに!」
「……あんまり声を出すな。悪口言ってたら殺されるぞ」
「ひぃぃ!!」
「お前も来るか?」
「……もう、ウィストリアさん。1人は怖いんですよね?仕方ありませんねぇ〜。可愛い弟子がついて行ってあげますよ!」




