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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
新章 カミノハコニワ

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2話 カミノハコニワ

偽の彩夢を倒し、自分の身体を取り返した彩夢。

彩夢の目的は、力を使い現実世界で復讐することだった。しかし、望みは適わずクロクと呼ばれた男に敗北し、異世界に連れてこられる。

「ぐる!」

「……っ。くそ、なんだよここ」

 目が覚めると知らない世界に来ていた。赤がくすんだような染まりきった空に暗闇のような家、転がる死体。


 酷い世界だな。



「これが異世界ねぇ。生きていても死に際のやつしかいないじゃん」

「……ぐる」

 アラストリアは落ち込みながら俺の傷を舐めていた。



「相手は俺の実力を分かりきっていた神だ。どうせ負けたんだ謝るな。俺は絶対に復讐する。それまで死ねない。この世界を早く終わらしてあの男を殺す」

 俺は彩夢から奪ったナイフと石ころがあるかを確認してから街を歩いてみることにした。

 黒い靄がついた人間が引きずるように歩き、苦しそうに吐いていたり転び回ったりしている。



「おそらく、死んだ死体を見るに何かの病気がある。ここで長居はさけるぞ。あとは、あの野郎の記憶の中に異世界の渡り方もあるだろ。」

 俺は意識が薄れた中で見た自分の記憶を引っ張り出した。人の願いからできた天空である以上、ここは人の意志が反映している。なら、アニメやら漫画みたいな馬鹿げた作りものにヒントがあるだろう。


 人が写っているものは全部嫌いだ。なのに、あいつは文字が流れるアニメを毎日みて生きがいにしていたな。馬鹿らしい。というか、あれ文字が邪魔だろ。



「異世界と言えば……ギルドで仲間集め?……ふざけるな仲間なんていらないだろ。裏切るんだから。」

 大体分かったが異世界に来たら最初はそれだと記憶が譲らない。武器屋というものもないしとりあえず敵がいるか見てから野宿だな。


「アラストリア、この町から出たい。そこの屋根に言って見て欲しい」

「ぐる!」

 アラストリアは屋根に登り周りを見渡した。すぐに肩を乗ると、後ろの方へと手を延ばす。


「分かった。行こう」

 町を出ると、周りにはベタベタと音がするものが這いずっていた。沢山いるし身体は紫色、この死に際のような人の匂いに似たものがある。


「病気はこいつらが原因かもな。まあいい一体ずつと言わず一気に燃やす」

 俺はポケットに入った石ころを投げた。獣は獲物を見つけたように集まっていく。


「アラストリア力を貸せ」

「グルウ!」

 『炎は触れたものに連鎖する』という概念を付与する。そして、風に意志を飛ばす。


 アラストリアは察したように姿を変える。


「お前……」

「ぐる!」

「だな。」

 正直、アラストリアが目に見えるのすら初めてだし、姿も変えられるとは。とりあえず、今はありがたく使わせてもらおう。


「点火」

 言葉と共に炎があがり風を使っては炎の勢いをあげる。一気に全体に燃え広がっていく間にアラストリアは俺を乗せて駆け抜けた。


 なんとか燃えきったが、再生するかもしれない。相手は未知数で、死角からくる恐れもある。クロクやら偽彩夢のせいで疲れてはいるがまだ休めないな。


「ぐる……ぐる」

「大丈夫か。」

 周りになにか休む場所はないか辺りを見る。


「おい……たす…けて」

「ぐる?」



「行け」

 男の声が聞こえたが、俺は気にせずアラストリアに命令する。助けてもいいことはない。


「グルゥア!」

「おい」

 しかし、アラストリアは急に向きを変え炎をかき分けながら男を拾う。お前は助けたいかもしれないが、あとで話すのは俺だというのに。



「お前、あいつに影響受けたな。はあ」

 炎を駆け抜け洞窟を見つけた俺は中に入った。そこにも化け物がいたので焼いて場所を確保する。


「汚物は消毒とかなんとか。これで菌もないだろう。こいつも1回炙ろうか」

「なんでだ!? 生きてるんだぞ。いや、助けてくれたのは感謝してるが」

 俺は2mくらい距離を取り話を聞いていた。


「お前、なんでそんなに力を持ってるんだ。この世界のこと分からなくて、武器もスキルの仕組みも」

「全部知らん。ただ元から持ってただけだ。もう元気だろ。出ていけ。 」

「ぐう!」

 アラストリアは庇うように男の前に立ち手を彼に向けながら耳をぴくぴくと動してはなにかを言っている。


「なんだ。聞き出せって?」

「がう!」

 聞いたところで見ず知らずの人を信用出来るかよ。 でも、アラストリアに嫌われると困るし仕方ない。

 俺は適当に男の顔を見て、言えと圧を送った。


「も、もちろん、助けてくれた恩だ。全部話す。ここは最初荒れている人が溢れて治安が悪かったんだ。でも、そこから1日ごとに数百死んでいくんだ。まるで数を減らしたいだけのように」


「力もないしさっきみたいな変なやつが大量にいて何も出来ないわけか。可哀想に。」

「一定数は力が手に入って抜けれたが、オレはまだまだで。経験値の概念があると信じて毎日一体づつ倒していた。あと、この世界にいる人間は大体は転生者だ。現実世界の話を何度もした。」


 なら、この世界は転生者を大量に殺しながら何かの目的のために振るいにかけているのかもしれない。まだ信じるわけではないが、力を持っているやつにしかこの先へは通れないだろう。


 俺は簡単に越えられる。なら、なぜここに連れてきたんだ?これまで何百人も殺しているから俺も一緒に殺せるという自信か?



「頼む。助けてくれ。まだ死にたくないんだ」

「断る」

「なんでだ。頼む、なんでもする。街のことなら全てしってるんだ」


 利用されるのが嫌なだけだ。みんな俺を利用するだけ利用して裏切った。


「何をされても嬉しくない。……もう疲れた。寝い」

 それにしても、なぜこいつはあんな獣に揉みくちゃにされてたんだ。一体づつ倒すなら。

 足には引きずられたような跡がある。そういうことか。



「じゃあ、明日まで取引だ。俺は次の町まで連れていく。お前は俺が眠っている間入口を見張ってろ」

「そんなんでいいのか?」

 前ならこんな事しなかっただろう。俺もあいつのせいで変な情ができてしまったな。



「あぁ。あと経験値?それが欲しいならどんなのか教えてくれ。」

「あぁ! 一定の経験値が上がればスキルや能力が増えるやつだ。」

「それはどうやって手に入る」

「敵を倒すとか、誰かの頼みを聞くとかかなあ。ゲームな。」

 なんとなくわかった。


 まあ、まだよく分からないが、異世界にある概念なら適当にやってみるか。俺はナイフに概念付与をつけた。


「手を出せ」

「お前何する気だ」

「いいから」

 男に手を出させて、思いっきり突き刺した。


「――っ!!」

 男は一瞬に姿が暗くなり、元に戻る。


「概念付与は人間に直はできない。経験値の概念が欲しいんだろ?ナイフを通してしなきゃいけないんだ。……これでいいだろう。そこら辺の獣はどうせ湧くから狩ってこい。アラストリア何かしてないかみとけ」

「あぁ!」

「がう!」

 俺はアラストリアと男を見送りよこになる。現実世界には経験なんて必要ない。いらない。


 人と関わりたくなんてない。何も……感じたくない。

「ただ俺は……幸せに生きていたかっただけだ」

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