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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
新章 カミノハコニワ

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1話 状況把握

  ――これまでのことを整理しよう。


 俺は死んだとなっているが、実際は意識不明で意識がこちらに飛んでしまった。

 そして、今は天空でウィストリアという天使が戻してくれるまで滞在している。戻るのには自分が生きているという1枚の紙が必要だがその行方は持ち逃げしたある女神が捕まったため分からない。


 考えるにその紙が消えたら俺は死ぬ。つまり命がかかった紙がどこかで泳いでいるという訳だ。


 その途中で、人の執念みたいなものが固まった獣に襲われていた。俺が唯一魔力を借りれるアラストリアもその類とかなんとか。で、最終的に天空、現実を襲う獣を創っていた男と勝負をして勝ち、この天空には平和が訪れましたと。


 一方俺は天界が創ったよく分からないものに乗っ取られて現実で生きていた時から身体を取られていた。まあ、アラストリアがその彩夢を殺して助けてくれたんだが。


「そういうことか?」

「グル」

 アラストリアは首を下に何回か振った。


「で、考えるに、皮がなくても意識があれば実態が持てるという訳だ。こいつどうする」

 足元にあるのは俺を乗っ取っていたという男だ。胸に穴を開けて俺を出したように抜け殻みたいにはなっている。姿は似ているが中身は全然違う。それは遠い意識の中で分かっていた。


「崖があるし捨てるか。邪魔なだけだ。」

「……グル」

 アラストリアは寂しそうにしながらも偽彩夢の首を噛んで崖に連れていく。


「まあ長い間、嫌なところはあったが社会の身代わりになってくれた。使ってない奪った記憶を返してやれ。俺は見てたから全部ある。」

 アラストリアは口から毛玉のように吐くと、黒い玉が出ていた。それを咥えて彼のポケットに入れる。そして、代わりに入っていたナイフと銃を俺に渡させた。


「じゃあ落とせ」

「……」


「仕方ない。最後は俺がやる」

 俺はアラストリアが躊躇している間に崖から蹴落とした。


「……」

「忘れろ。こいつが生きていてもここで終わる命なんだろ」

 アラストリアは落ちていく様子をみると問いに頷いた。


「今からやることは2つ。1つ、俺の紙をみつけること。2つ、現実でこの力を使って復讐する。」

「グル」


「俺は前に向く気は無い。ただ過去に俺を苦しめたゴミを消しきらない限りイライラする。」

 中学生の時、俺をいじめていたやつ、俺を騙して奪ったやつ、小学校もだ。あと、アイツが代わりとは言え高校のやつも憎い。


「殺したら俺は死ぬ気だ。もうあの世界に希望はない」

「……」


「行くぞ」

 アラストリアが反対しているのは分かっている。でも、俺から奪って快楽を得ては、忘れて今も楽しく生きているやつを許さない。俺はずっと独りだった。苦しんでいた。そんな時に笑っていたアイツらが憎くてたまらない。


 この力が手に入り、戻った末に教えてやる。加害をして奪ったやつに訪れる罪を、生きる価値はないと分からせる。


「今、怪しいのはその女神を捕まえたというクロクだ。どこにいる。」

「ぐる……?」



 その時不意に殺気を感じ取った。

「僕はここにいるけど」


 気配が分からなかったが、気づけば目の前に「クロク」と彩夢が呼んでいた男がいた。


 こいつ……覚えがある。たしか、現実世界で俺を殺したやつだ。そこから俺は意識がなくなって……。


「やあ彩夢。久しぶりだね。いや、僕の顔見れなかったか。前は小さくて泣いていたのになんか荒々しくなったね」

「見てないわけないだろ。俺は意識が消える前にお前を見た。今でもずっと覚えてる。」


「あーやっぱ見られたか。そう、君を襲って偽物に乗っ取らせたのは僕。だって君、その力で復讐しようとしてたでしょ?実際、1人が不自然に大変な事にになっちゃったし。」

 中学生の時、俺はある男に力を使った。足を何針も縫う怪我に1週間の入院。だが、まだ足りないと思った矢先にコイツに襲われた。


「まあまあ、そう怒らないでよ。仕方なかったんだ。で、僕は君と話しがしたくてここにいるんだ。」

「アラストリア」

「ぐる」


 刃を向けた途端に、クロクも人質のように俺が探していた紙を取り出し紙に刃を向ける。


「――!」

 少し動揺する隙に消えては背後に現れる。構えようにも声も身体も動かなくなっている。


「君と戦う気はないんだ。僕は君を現実に連れていこうと思う。身体を戻してね。ただ、僕らにも都合があるから付き合ってもらいたい」

 そう言うと、彼は息を薄く吸っては目を見開いた。



「クロク・ギニア・スカーレット。僕の権限を持って信田 彩夢を異世界に転移させる」

「!?」

 ……そうだ。ここは異世界転生を望んだ者が来る場所とか言っていた。ここにはそのふざけた力がある。そして、こいつはそれを活かして俺をよく分からない場所に連れていく気だ。


 アラストリアに目線を送り、動けない今の状況を破壊すると、手にあるナイフを向け走っていく。


「もう遅いよ。」

「――っ!」

 足元には鎖が絡みついた。いや、 ……まだ諦めるのは速い。周りには生い茂る木がある。


「……動け」

 葉に「切る概念」を与え、風に頼み込むようにすると吹き荒らしてくれた。



「それ、アラストリアもやってたね。まあ、痛くないんだけど」

 クロクは指を鳴らしすと、風は勢いを失った。その間に俺の身体には鎖が巻きついていき下に魔法陣が現れる。


「……破壊しっ」

速光(サリスト)

 言葉を出し切る前に魔法陣は身体を包んでいた。あの余裕そうな表情、俺の力を分かりきっているようだ。あの時から彩夢に接してきたのはこの為か。

 これだから他人とつるむなってあの彩夢に言ったんだ。


「バイバイ彩夢。また会おうね!」

「許さないからな。次見つけたら……っ」



「うん。完璧だね」

「キュキュッ」

 魔法陣が消え去ると、足元に光る細長い獣が鳴いていた。


「君のおかげで場所が分かったよ。ありがとうね。さぁ、僕らの最高傑作……神ノハコニワ。そこで彩夢の力を削いで現実世界に行くとしよう。」

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