第5章 40話 別れ
ヒロルは恵まれない子どもたちを集め、天空を潰しに現れた。
戦いの中、とある理由で協力してくれるマリと使い魔は、
私は昔から友達には恵まれていた。居ないよりはマシだと何度も考えた。
でも、毎回毎回友達は重い悩みを抱えている。彼氏なんて作る暇もなかった。遊ぶ暇もバイト代は彼女達に消えていく。友達のメンタルをなんとかしようとして自分まで病むほどだった。
「子どもが出来たの」
「は? 何言って」
彼氏のDV問題を力づくに、親に言いつけ、警察に行かせた。それで解決したと思ったら、また次の課題が出てくる。
「もう大きくて産むしかない」
「……彼氏は」
「逃げた。慰謝料請求しようにも住所も電話番号も分からないし弁護士のお金なんてない。これから私は子供に苦しめられる」
「……」
言葉が出なかった。子どもは不幸になるとすぐに分かった。彼女はリスカや暴れ出す事があるのを私は知っていた。
「じゃあ、私が一緒に面倒みるから。ね?」
「……うん、ありがとう!」
私の人生はいつも他人に巻き込まれる。私は貴方みたいに彼氏も作った事がないのに、楽しむ暇もない。おしゃれだってお金がない。
私はこんなに頑張っているのに、なんで何もしない貴方は付き合ってるの?人の足を引っ張るのに、どうしてそんな行動を取るの?
「はい、ご飯だよ」
「あーあっ」
ガシャ!
「……落ち着いて」
「もうやだ。3年もこんな生活。大学だって止めてバイトも足元見られて、いびられて! このクソガキのせいで!! 私の人生ぐっちゃぐちゃ!! お前なんて産みたくなかった!!」
パチッ!
リカに伸びる手を必死に止め、平手を打つ。彼女はよろけながら話を聞かずにキッチンに向かう。
「待っ」
「―――!」
ナイフを持って私をつきさした。
「……うっ!」
初めて身体的な痛みを知った。私は全身を震わせながらもリカを守ろうとしたけど動かなった。
彼女は子供を持ちテラスに向かう。
「待って! 貴方、何して!?」
「……」
すぐに鈍い音が鳴り響いた。彼女はなんの迷いもなしに彼を空へと投げたのが分かった。
簡単に動く彼女を許せなかった。彼を守れなかった私を恨んだ。
彼女は自分の不幸しか考えていない。私は彼の仇を取る一心でナイフを抜き、彼女を
「……」
殺した。
鳴り響くパトカーの音が聞こえた。血だらけの私と、死んだ彼女と形をなさない愛した子が無惨に見えた。
「リカ。私もそっちに行くから。また会えたら謝らせて。貴方とは二度と会わないわ」
私は気がついたら冥界という場所にいた。どうやら、ここに来た理由は殺しはしたが私の背景を配慮して気持ちは分かると彼の良心の結果らしい。
ここの人間はペットと言われる使い魔を飼い心の傷をいやし、寝る度に現れる罪の瞬間を耐えている。でも、私は人間に似たものを傍に置きたくなった。
そんな想いを抱えながら歩いていた。そんな雨が強い日に、私は血だらけで泥まみれになったピーちゃんに出会った。
「ピーちゃん」
「主様、どうしましたか?」
身体が弱いピーちゃんを看病し、色々ありながらも育てて生活が出来るようになった。
ピーちゃんを見ていると笑う顔を見せず、笑うように促しても恐怖に怯えるリカが脳裏に浮かぶ。
それでも私にできる……いや、ただの自己満の罪滅ぼしをピーちゃんを育てる事で感じていた。
「ずっと私といてね」
「……? もちろんです!」
ピーちゃんだけは失いたくない。もう誰も失いたくない、リカのように誰かをもう傷つけたくなかった。
そんな時にリカが私を恨んで現れた。
「ヒメ……シッカリ、シテ、…サイ」
「……っ」
マリは使い魔の声にハッとした。
「大丈夫よ。私の事は私で終わらせる」
「……」
使い魔はマリから離れ、壊れた結界から襲いかかる獣に牙を向けた。視界に入る全てを残虐な姿に変えていく。
「あーあ、せっかくの死呪霊が一瞬に消えていきますわ。よりにもよって、あの男がいるとは私達も運がない」
「でも。リカ。助けないと。」
「もう無理ですわ。あの薬を自分に付ける事がどういう事か彼は分かってやったのですから」
「……」
その時、使い魔が彼らの前に姿を出した。
「キシャ」
(懲りないですね)
「あんな所で終われませんの! 私達にはやることがあるんです。あのクソな世界に復讐するまで」
「僕ら。恵まれなかった。だから。やるんだ。」
彼らの後ろに死呪霊が現れ周りからも影が囲む。
「……やれっ」
使い魔を囲み襲いかかるが、一瞬で散っていった。
「キシャ!!」
『お前らの不幸に他人を巻き込むな』
荒らげた言葉を吐きつけ、2人の心臓を刺し切ってたは投げ飛ばし木に叩きつける。
「……がハッ」
「……!!」
『もう終わらせていいんですよね。姫』
「ごめんねリカ。ずっと貴方は私の事を」
少年は消えかけた意識を取り返すと、マリの顔が目の前にあった。
「……もういいよ。あの人のおかげで…お母さんも抱え込んでたって…気づいた。……お母さんの代わりになってくれてありがとう。」
リカは傷を抑えながらマリに手を伸ばした。マリはすぐに手を掴み涙を流す。
「私は貴方の事を忘れない、あの時守ってあげられなくてごめんね」
「僕はもう忘れちゃった。だって僕、お母さん大好きだから……ね、最期に僕の名前呼んで」
「……愛してるわリカ」
「 か んは 幸せにい ね」
「……っ」
一方
「はぁはっ……クソが」
何度刺しても切ってもヒロルは無表情で起き上がる。彼の技はパターン化されているが、対処するための体力はそこをついていく。
そんな時にブレスレットが僕を呼んだ。
「誰ですかっ! 今っそれどころじゃっ」
僅かな反応により鉄球を避けきり、柱を跳ね返す。アラストリアの力を使えば使うほど頭が捻れるような感覚が襲う。
「カクラジシです。手短に言います。今、私と弥生の前にヒロルがいます。場は深刻です。速くっ……グッ」
「どういう事ですか!? 僕は今ヒロルと戦っているんですよっ」
『もうやめっ… ヒロルにいさん! だれかをっ! ふこうにしたって、しあわせになれたいんだよ! ぼくらがしあわせ…になるみちを…さがそうよ!』
弥生の声だ。この途切れる感じ……。
『だまれ。あーあ、もういい。ムカついたから殺す! お前を使おうとして生かしてあげたのにさあ!?僕が乗り込んだ方が速いよね!?』
……間違いない、こいつがヒロルだ。この荒らげた声に情緒が安定していない感じ。弥生が危ない、今すぐにでもっ
「……っ」
ガガガガガガガガ
「――」
柱が急に暴れだすように足を狙って地面から這い上がり地面を擦りながら潰しにくる。対処できないっ
「ぐっ!!」
『ああああああああああぁぁぁ!!!』
痛い。この痛みが、生きている感覚が消える前に
僕はやらなきゃいけない
『弥生!? まさか、コアを』
『さあ、次はお前だよ。神獣?』
「――っ!!」
絶望しながらも僕は無意識に手を伸ばしていた。
何かが込み上げてくる。消えたものが、「僕」にはない物が、無意識に僕を動かした。
「同調」
勝手に出て、肉を握り潰すような音が鳴り響いた。目の前には赤い残骸しか残っていない。
「……今からそっちに行きます。」
『分かりました。ただ受け入れる覚悟はしてください。私は時間を稼ぎます』
怒りのような感情が背中に溜まり皮膚を貫いた。もう自分がどうなっているのかもわからない。そして、心臓の音が綺麗にリズムを刻んでいく。
「大丈夫です。もう失い尽くしてますから」
チサとネグ (ヒロルの意思に加担し協力する2人組)
よく2人で行動するのは外を知らなくて不安だから。
チサ
父親に小さい頃からの性的虐待。母は死別。
新しい母親が来た際に父親に用済みだと言われる。
男性恐怖症が強かったがフォルナのケアによって緩和。
とあるプリンセスの話から女性らしく生きようとする。他の女が肌を出しているのが嫌い。女尊男卑の思想より
ネグ
両親がいるのか分かないほどのネグレクト状態を受ける。
冬の寒さで凍傷し死亡。
言葉を覚えたことも無く、1単語ずつ話す。たまに逆になっていたがフォルナの世話で緩和。
「やはり厄介だな、スプラウトも結界の修復で更に魔力が減ってきている」
「私が行くべきか。」
「その必要はないぜ、事務さんよお。どうせ事務さんしか神界の場所は知らないんだ。偉そうに、来るまで居座ってればいいんだよ……ハアっうっめ」
「相変わらず酒臭いな、お前は」




