第5章 38話 軸のない何か
天空を襲うヒロル達に僕らは防衛を続けていた。
そんな中、ヒロルを見つけた僕は戦いを始める。
「……っ」
ガッ
僕は投げられた剣を跳ね返したが、油断する間もなく鋭い柱が襲いかかってくる。反応するためにすぐに構えた。
(貫け)
打った弾丸は柱を貫き形を崩す。だが、塊か消え視界がはっきりした途端に何かが彼の背後にあるのが見えた。
「……」
「――っ」
棘がついた複数の鉄の塊が僕の目に入った。彼が手を挙げた時には、細部が見える距離まで降り注いでいる。
「概念付与」
僕は魔鉱石を取り出し「接触時に爆発を起こす」概念を与えた。魔力があるなら多少動きにくても使わない手はない。
石は塊に当たった途端に爆風に変わり感電するように広がった。しかし、爆発によって生まれた破片が飛び散り避けようとしたが、間に合わず顔や腕に切り裂さかれる感覚が襲う。
「……っ」
痛みはない。ただ脳の回転だけに集中し、感覚を研ぎ澄ましていく。
少しだけでも距離を近づけられたら攻撃を当てられる。銃を放っても簡単にはねられるだろう。
次はまた柱を作り出し四方八方から囲むように伸びていく。相手側も僕を近づけたくないようだ。
僕はヒロルの方向に走りナイフを構え貫通の概念を与える。柱を貫き囲まれるのを回避するが、1本の柱が僕の目に来る。
「アラストリアッ」
僕は銃に魔力を入れ、身体を反らしスピードを上げながら柱を縦にに切り込んだ。
「――っ!!」
バンッ
魔力が込められた一撃はヒロルの創造より速かった。ヒロルの首に弾丸の跡が残る。
ただ
『なんで』
彼の身体から血が出ることは無かった。下を向いていたヒロルはロボットのように顔をあげ、柱を僕の真横にだした。
――ガッ
僕は痛みと共に宙に浮き地面に叩きつけられる。反動に動けず、無意識に血を吐き出していた。
『来るぞ』
アラストリアの声を聞き真上を見ると鉄球が僕を待っていた。
『これを受けたら回復に何分かかる?』
『1分。我が思うにお前の身体はズレが無くなっている。今なら簡単にできる』
自分の胸にナイフを向けた。
「痛みの概念を消せ」
ナイフを突き刺す痛みと圧力のような痛みだけはあった。そこから鉄球が落ちてきて、しばらく動けなかったが僕の身体は何事もなかったかのように立てることが出来た。
ナイフを抜くと、またヒロルに向かう。
僕と同じような力があるのか傷跡は全くなく無表情の彼が柱をまた作り出す。
「ロボットみたいで気味が悪い。……っ」
どんどん、僕の心音が1つになっていく。
時間がない。
前のように一撃を与えるだけじゃダメだ。なら、このナイフで何か悪い概念を与えるしかない。
動きを制限する。いや……魔力の否定をして回復をさせないようにするのがいいだろう。
僕はまた走り出した。
また柱か。バリエーション少なすぎだろ。
まぁ、おかげで動きが大体掴めた。僕はもう1つのアイテムを取り出した。コイツらが知らない僕らにとって大事な戦力だ。
最後の最後に持っておくものだろう。
僕はウィストリアからもらったレンズを取り出し、思いっきり当ててヒロルに跳ね返す。
「……」
彼は驚く様子もなく反射した柱を受けた。立ち上がるまでに走り、ナイフを突き刺した。
ナイフが突き刺さったまま、僕は頭を狙い銃を打ち込んだ。動かない間に足の健にナイフを刺す。
「ここまですれば」
動かなくなったヒロルをただ見ていた。これで終わったのか?
言葉くらい聞きたかったが。
「……」
なのに、また彼は立ち上がろうとする。足の健を切ったのに。痛む様子もない。
「なんなんだよ。お前」
「……」
「ねぇ、カクラジシ。ずっといなかったけど、なにしてたの?」
「少し、神界の方に行っていました。色々ありましてね」
「そっか」
カクラジシが作った丸い物体には皆の姿が写っていた。
「ぼく、なにもできない。」
「今は動かない方がいいんです。動きたくなる気持ちは分かりますが休んでください」
「うん」
その時、カクラジシは何かを感じ取ったように立ち上がった。
「どうしたの?」
「……誰ですか」
カクラジシは弥生を隠すように構えた。
足音が近づいてくる。
ガチャ
「――っ!!」
「最後に解説しましょう。地界の魔力を使う方法について」
「……忘れてたな。もういいんじゃないか?魔法使う時に代償を払う。それが地界。以上」
「ざっくりしすぎ!」
「理論を知らない方が、かっこよくみえる時もある」
「ないわよ! 魔法あるでしょ?代償というか魔素を呼び込む為に使うの、」
「で、一気に魔力にする。それで魔力が少ない地界の人は負担少なく技をだせる。よし終わりだ。」
「まぁ、そうだけど」
「魔素は魚。代償のものが餌みたいな感じだろ?天空は何もしてないから合わせているが事情があるんだな」
「あっ最後に葉っぱとか入れていたが何でもいいのか?」
「まぁ、ピーちゃんの影の力で地界に繋げてて叩くと出てくる仕組みでね。あの世界の魔素は何でも食いつくわ。」
(本当に魚みたいだな)




