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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
第5章 天空戦争編(準備)

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第5章 35話諦め

決戦まで時間がない。

僕達は最後の思い出で遊園地に出かけていた。

「最後は観覧車に乗ろうか」

「うん!」


 僕達は観覧車に乗ったが六人だと結構狭い。仕方なく使い魔は姿を変え、弥生は僕の上に座らした。


「わあー、みてみてきれいだよ!」

「めっちゃピカピカしてますね。近くから見るのもいいですけど、遠くからみるともっと綺麗ですね!」

 窓に顔を当てて弥生とスプラウトは目を光らせていた。


「イルミネーションって言うんです。」

「昼は町が見えていいけど、夜の方がやっぱりいいわよね。」

「ピー!」


 アトラクション一つ一つがそれぞれの光りを放ち、遠くまで華やかな世界が広がっている。


「ぼく、はじめてきたけどすっごく楽しかった!」

「それなら良かった。彩夢と計画を立てた甲斐が有るな。」

「はい。」


 ウィストリアは幸せそうにうなづく。

 綺麗な光と皆の表情を僕は頭に焼き付けた。僕が最期に感じる光だろう。



 その後、僕達はディナーを食べ天空に帰った。喪失感に襲われながらもいつもの環境に戻っていく。


「じゃあ先に休んでるわ!」

「今日はありがとうございました。」

 マリと使い魔は先に僕の部屋に戻った。何かやる事があるらしく「もうひと頑張り」と言っていた。


「では弥生君をお願いしますね。」

「もう少し居たいが、これから仕事なんだ。」


「いえ、こんな時に時間を作ってくれてありがとうございました。」

「たのしかった!」

 女神や天使の仕事はとぎる事なく続いている。おそらく、交代に行くのだろう。


「いい思い出になったか?」

「……はい。ありがとうございます。」

 ウィストリアは僕を気にかけてくれる。本当は忙しいのにな。


「良かった。おやすみ彩夢」

「弥生君、彩夢君しっかり休んでくださいね!」

 ウィストリアとスプラウトにお礼を伝え、僕は弥生を連れて帰った。


「おにいさん?」


(「「弥生に言ってあげなよ。もう言っていいでしょ?ねぇ。じゃないと弥生はきっと自分を責めるよ」)


「……っ。」

 このまま先延ばしにすればきっともう話せない。

 おそらく今日が最後だろう。


「おにいさん!」

「あっ……ああ。少し考え事をしていてな、もう大丈夫だ。」



 弥生は不思議そうにしながらも、ベットの近くに荷物を置き座りこんだ。

「ゆうえんち初めてだったから、こんなに楽しいなんて知らなかった。」

「そうか。」


「うん。ぼくね、ちがうお母さんとお父さんとくらしてたから。あっ本にかいてた……ようし?っていうんでしょ?」

「難しい言葉を知ってるな。」


 弥生には一万の図書カード渡して好きに買ってこいと言っていたが、そんなものを読んでいたのか。


「お兄さんが読んでた本に書いてた」

「あーー……」

 やらかした。僕がよく読む心理学の本には家族の環境による影響の事が書いている。



 絶対、弥生戸惑ってただろ。


「あんまり真に受け無い方がいい。あくまで傾向であって全員を指すものじゃない。」


「うん、だいじょうぶだよ。あのね、少しだけ覚えてるけど、ぼくが何もできないから怒ってた。そんな時におまわりさんが来てぼくも連れていかれた。」



「……弥生は悪くないよ。」

 弥生がそんな事を言うなんて。いや、考えてみれば僕は彼の話をあまり聞いてあげられなかったな。



「新しい人来たけどうまくいかなくて、がっこうもダメで、そんなときに」

「ヒロルに会ったのか?」

 弥生は淡々と頷いた。


「ぼく、ヒロル兄さんに助けてもらった。でも……おにいさんに会ってから他にあったのかなって。死なないで良い方法があったのかなって」

「そうだな。他に方法があったのかもしれない。」

 弥生は深く考えるように僕に身体を倒した。


「これからヒロル兄さん達とたたかうんだよね。本当はぼくも……」

 死にかけの弥生をヒロルに近づける事は危険でしかない。


「お前はヒロルの気分次第で死ぬんだぞ。」

「わかってるよ。皆にめいわくはかけたくない」


「でも、もしチャンスがあったら話したい。」

「……」

 死を覚悟した本気の目だった。


「わかった。少し考えてみるよ」

「ほんと!? ありがとうお兄さん!」


 弥生の笑顔はどこか……弱さ、いや不安さを感じた。どれだけ体調を良くしても根本的な問題は治らない。


 これ以上悪くはしたくないが、言わなければ深く傷つけることになる。


「弥生、疲れているかもしれないが僕からも言う事がある。」

 僕はノートを手渡した。


「これ、お兄さんが使ってるノートだよね?」

「あぁ。……いいか弥生。ヒロルとの戦いが終わったらそのノートを開けるんだ。」



「今あけたらダメ?」

「だめだ。終わってから。」

 弥生は素直にノートを抱えてうなづいた。



「僕はきっと帰って来れない。ヒロルとの力の差は互角か負けている。だから」


 その瞬間、弥生は立ち上がる。


「そんなはずない!だってあのとき、 ヒロル兄さんよりつよかった! あっあのとき……」

「ありがとう。でも僕はその記憶がない。その意味を今から話す」


「……」

 弥生の目は泳いでいた。それでも、言わなきゃいけない。


「僕はそうだな。簡単に言うと弥生を守っているアイツみたいな存在かな。」

「どういうこと?」


「僕は僕じゃないんだ。何言ってるか分からないかもしれないけど僕は本当の僕を乗っ取って生きている。お前がみた僕はおそらく彼だろう。」

「僕の短い寿命はおそらくこの戦いで擦り切れる。それでも」

「……いやっ」


「なにいってるの!? いやだよ! しんじない!」

「試しに僕を呼んでもいい。……ただ僕が帰ってこれるかは別だが。」


 そういうと弥生の光が無くなっていく。後ろにさがり壁から崩れ落ちた。


「それでも、僕は全てを使ってヒロル達を止める。それだけは約束する。」

「……」


「そして、弥生も助ける。」

「……ぼくはおにいさんといっしょに居たい。これまでみたいに。たくさんあそんで、おにいさんについていきたい」



「「僕は」できない」

「……っいやだ! 「おにいさん」がいい! 」

 弥生は僕にしがみついた。



「弥生。」

「……いやだ!」


 僕だって、、死にたくない。本当はもっと。



「…………頼む。僕のために僕を諦めてくれ」



「そんなことっしたくっなっ! んっ!ゴホッゴホッ!」


 言う事は言った。……もうゆっくり話す時間はないだろう。涙を流しながら僕の服を引っ張っているが力が無くなっている。

 呼吸もどんどん悪くなる一方。


 時間切れだ。


「代われ」

「うっ」

 僕の一言で弥生は床に倒れこむ。


「……」

 いつものように僕は彼に腕を貸した。頭痛にはなれたが、強く思わないと身体が動かなくなってくる。


 決戦まで1日を切った。

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