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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
現実世界へ

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第6話  不器用な決意

僕達は奈美のいじめの件を解決することになった。


そして、やるべき事はいじめっ子である未空達との和解。と奈美の親友を再び合わせる事。


とりあえず、潜入することにした。

ウィストリア(有彩)の力を借りて変装するが…

まずは実物を見ないとな。


奈美について行くと…

 奈美が指差したのは、今朝行ったパン屋だった。


「ここが私の家よ!」

 奈美はドヤァとしながら胸を張っているが、まさかこことはな。


「マジか」

「何よ」

「いや、あんまりパン屋のイメージが無かったから。」

「もう失礼ね! まっいいわ。中に入って。」

 僕達はとりあえず奈美について行くことにした。朝よりレパートリーは少ないが、パンも並んでいるし客も沢山いる。


(繁盛しているんだな。)

 奈美はレジカウンターにある後ろの扉を開け、階段を登っていった。



「なぜ家に階段があるんだ?人間の家は階段が必要なのか?」

「えーと。現実には1階だけでなく上にも部屋がある場合が良くあるんです。それは敷地の問題もあって」


 僕は、ウィストリアの疑問にサッと軽く説明をした。天空の家は土地を広々と使っていたし2階にする意味も無いだろう。



「こんにちは、お邪魔します」

「あっ朝の……友達だったのね。」

 レジをしていた人に僕が挨拶をすると有彩もお辞儀した。



 いちよう、有彩に頼んで奈美と同じような身長にして貰った。奈美より明らかに高い2人を連れていたらビックリされそうだし。おかげで店の人は微笑ましそうに笑っていた。魔法で頭が痛いのは変わらないが、我慢するしかない。



「あらいらっしゃい。奈美と友達になってくれたのねぇ。まぁ男の子まで!! ゆっくりしていって頂戴。沢山パン持って行くから」

 奈美の母らしい人が現れ、僕の背中を軽く叩きながら笑っていた。



「ありがぅっとうございます。ははっ」

 嬉しいのは分かるが痛い。高跳びのバーを腰に当てるくらいの感覚だ。



 その後、案内された先には「nami」とプレートに書かれた部屋があった。

「私の部屋よ! さ、入って入って!」


 奈美は僕達を押し込むように部屋に入れた。

 女の人の部屋に入るのは2回目だが、やっぱり慣れないし緊張する。


 奈美の部屋は普通に綺麗だったがあまり物が無い。このくらいの歳なら色々と部屋に飾ってそうだが。いじめで精一杯でそれどころじゃなかったんだろうな。



「これとこれ。男子の制服は写真くらいしかないわ」

 奈美は棚から学校の道具を引っ張り出し有彩に渡す。


「何だこれは?」

「え」

 奈美は絵の具セットを見て戸惑う有彩に驚いているようだ。



「有彩さんは天空の人だから人間の生活や文化についてあまり知らないんだ」

「そうなのね! なら私が教えてあげるわ!」



「リコーダーはね。これは」

 有彩はうんうんと熱心に興味深そうに聞いていた。ま、天空にリコーダーなんてないだろうな。



「ピー!」

「……っ!!??」

 奈美が鳴らす音にびっくりしている。有彩にとっては新鮮そうだった。ちなみに、僕はどの穴を塞げばどの音が出るなんて覚えていない。


 そんな話しをしているとコンコンとドアをノックする音が聞こえ、扉を開ける。



「はーい皆! パンを持ってきたわよ!」

 奈美の母はパンをどっさりと抱えていた。


「ありがとうございます!」

「いっぱい食べてねぇ! あっ奈美、私は少し出かけてくるから」

「うん、分かった!行ってらっしゃい」

 奈美は笑顔で手を振っていた。



「いつもより楽しそうね、奈美」

「そうかな?」

 奈美の母はうん。と嬉しそうに頷いていた。



「いいお母さんだね。」

「えぇそうよ! さっ、パン食べて食べて、焼きたてが1番なんだから!」


 奈美は僕の口に細長いパンを突っ込んだ。

「なあんだよお。ひきあり。ん、やっぱり美味しいな!」



 これは明太子パンか。いい焼き加減で明太子も暖かい。僕は水を間に飲みながら完食する。

「でしょでしょ! だってママのパンは世界一なんだから!! さ、もっと!!!」


 奈美はパンの入ったバケットを僕に押し付けてくる。嬉しいが流石に量が多すぎないか?



「パンというのは甘かったり辛かったり。全然味が違う……やはり面白い。」

 有彩は両手にパンを持って美味しい美味しいと言っていた。



 そして、何かを思いついたようにピタッと止まり奈美の方に顔を向けた。

「奈美はパンを作れるのか?」



「うーん。昔にユウと作ったわ。私は失敗したんだけど、ユウは美味しいって言ってくれたっけ」

 奈美は昔を思い出すように語っていた。何とも言えなさそうな、悲しさが混じっている表情だった。



「そうなんだな」

 ゆうは相当に器用なようだ。実際パンは結構難しいらしいと聞いた事がある。


「それ以外作った事ないわ。」

「1度も?」

「えぇ」

 パン屋なんだからもうちょっと作っても。



 いや、待てよ。

 これは生かせるかもしれない。


 有彩も同じ事を考えているように、僕を見て頷いた。

「思ったんだけど、ユウに作ってみるのはどう?紅佐飛の分も」

「………ぇ、私のを?」

 奈美は突然の提案にびっくりしていた。


「そう。きっと頑張れば、2人とも喜んでくれると思う。もしかしたら、また話せるかもしれないし。」


「でも私。ものすごく下手よ? 不器用だから……」

「それでも想いは伝わるよ。会いたいんだろう? 下手なら練習すればいい。」

 その瞬間奈美はパッと立ち上がり机をドンと叩いた。



「えぇそうね! やってやるわ! そしたらもう一度、2人に向き合って話せる気がする!」

 奈美は僕の手を握りながら上下に振り回した。



「じゃあ、有彩に残っている道具を教えて作業場よ!」

 奈美はテキパキと教えていく。その行動に有彩も付いていきとんでもないスピードで理解していく。僕だけ世界のスピードが違う感覚だ。物が出ては消えていき、その間に何かを発し有彩に教え有、気がつくと彼女達は手を掴み一目散にキッチンに向かって行く。



(僕忘れられていないか…?)

 数分後、奈美と有彩はニコニコしながらパンを持ってきた。


 微笑ましいが何だろうな。なんだか凄く嫌な予感がする。


「今日は丸パンよ!」

 丸パンと言っているが形は四角。色は青白く、もう片方は潰れている。


「味がないの嫌?ふふん、ジャムもあるんだから!」

 そういう問題じゃないんだ。しかし、これは大事なパンだ。腹を括って食べるしかない。

 僕は彼女の目に負け覚悟を決めた。潰れている方から食べよう。



 不安がいっぱいになりながらも、お皿からパンをとり勇気を振り絞った。


「もぐっ。ん、ベチャベチャしてる」

 膨らんでないようだし生焼けだろうか?奈美はそれを聞いた途端ガックリと落ち込んだ。


「えぇ水いっぱい入れたのに!」

 それだよ。


 まぁ次は青白いのを食べよう。ちゃんと膨らんでいるし色以外は何とかなっている。

 美味しそうだな。いや、これは美味しいに決まっている。


「んっ……うげ変だ、これ。」

 なにか違和感がある。もこもこする?というか何というか。初めてこんなの食べたぞ。

 僕がそう呟くと有彩は奈美と同じように落ち込んだ。


「イースト菌って菌だろう?だから他の菌もいれてみたんだが」

 前代未聞だよ。というか食べていいのだろうか?何故か手足がビリビリと痺れてくる。



 「……」

 僕は確信した。やはり2人の素人じゃ厳しいと。上達にはその道を知っている人に頼るのが近道というものだ。


「えーっと2人とも。まずは奈美の母さんに弟子入りしてください。あと、レシピをアレンジしなくていいから。」

 奈美と有彩も1口食べると微妙な顔をしていた。



「確かに美味しくないわね。有彩!一緒に作りましょ!」

「あぁそうだな!」

 僕も興味はあるがここは有彩に任せよう。久しぶりにやってみたいこともあるし。


 その日は奈美からたくさんのパンを貰い僕達は帰った。



 ――次の日

 僕達は小さい姿で小学校の制服をまといランドセルを背負った。

「完璧ですね」

「だろ?」


 天空で魔法を使えば頭の痛みは無いようだ。そして、道具の一つ一つが本物に違いないほどの出来だった。


 あの時の僕は男にも女にも見える格好にしていた。なので、もう少し髪を短くし男子の見た目にしている。


 流石にトイレとか、着替えとか戸惑うしな。

 有彩はあまり変わらずポニーテールをして眼鏡をかけていて変わりない。



「よし、行くか。」

「はい!」

 という事で、僕達は学校に行って先生達を洗脳した。ちなみに、僕は隣で唖然しながら見ていただけだ。事務って恐ろしい。


「君達が転校生かー!よく来てくれた。」

(こいつが校長か)

 校長室に案内されると、校長が僕達を歓迎してくれた。



 聞く限りいいイメージは無いが白い歯を見せながらキリッと笑っている。ま、目は笑っていないし見え見えの演技だな。

「はい! よろしくお願いします!」

「あっそうそう。何組がいいとかあるかい?まぁ、ないと思うが」



 僕達は奈美のために5年生として行動をしている。

 なら、組はもちろん


「あっあります! 2組!」

「えっ本当に2組でいいのかい?」

 校長は少し引っかかる言い方をした。やっぱり奈美達のことを知っているんだろう。というか、だったら聞くなよ。



(問題に寄り添わず、避けているというところか)

「はい、大丈夫ですよ! ね有彩?」

「あぁ!」


 同級生だし礼儀はいらないだろう。いちよう許可も昨日のうちにとっている。僕は厳しい上下関係で生きてきたから慣れないし、多少の苦痛はあるが慣れるしかない。ここに先輩はいないんだ。


 校長先生に挨拶を終え僕達は担任の先生と教室に向かった。

「はーい、皆席についてー。今日から転校生が2人きます」



 僕はドアを開け有彩を先に行かせる。

「信田 有彩です。」

「信田 零です。僕達は兄弟です。よろしくお願いします」


 とりあえず苗字は既存のを使う事にした。先生は綺麗な文字で名前を平仮名で書いている。



「よろしくお願いします!」

 と、クラスに挨拶を済ました。



「君達の席はあそこね」

「はーい」


(おい、あいつ。れいってやつに似てないか?名前一緒だし)

(違うだろ。男だし)


 空気がザワつき落ち着きがないようにそわそわとしている。転校生ってこんな気分なんだな。


「……?」

 僕が座った横の席には未空がいた。彼女は流し目で僕を確認している。



「よろしく」

 僕は未空に手を差し出した。

(仲良くしておいて悪い事は無いだろう)


「……っ。えぇ。よろしく」

 思っていなかった行動だったのか、びっくりしていたが気軽に接してくれた。




 ――少し前


「そう言えば、鳩が帰ってきたぞ」

「どうでしたか?」

「言うよりは映像をみせた方が速いな。」

 僕の頭にフッと映像が浮かび上がった。




(なるほど。やはりそうか。未空自身、悪い子ではないようだ)

「どうだ?」

「完璧です。おかげで大体分かりました」



 さぁ色々と掻き乱してみるか。

次回

学校に乗り込んだ僕達。

まずは男を潰すか。



「有彩さんねぇ、覚えたわ!」

「お願いします。」


「大丈夫よー不器用な奈美よりは出来そうな感じだし」

「失礼ね!私だって出来るって事を教えてあげるわ」



「………」

(色々と御足労おかけすると思います)

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