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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
第5章 天空戦争編(準備)

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第5章 28話 聞こえぬ声

マリは転生前者である片親の母を助けるため、赤ん坊の世話をみていた。

そんなマリの前に現れたのはマリを母と呼ぶ少年だった。赤ん坊を守るため、使い魔に少年を任せる事にする。

「邪魔をしないでよっ」

「……」

 剣を向けられた瞬間に使い魔はベランダの手すりから飛び上がる。

 ムチのように振り回される剣をいなし空中で銃を構え引き金に手を添える。


影箱シャド――主ありて我が力。影となりて弾きとべ」

 撃たれた弾丸は背後の獣の目にあたり、また視界を遮ぎった。


『ギリッ……シャアア!!』

「こいっつ―!」


 相手が上を見上げた瞬間に、使い魔は距離を詰めるとガッ!!!と銃を殴りつけ遠くへと叩き飛ばす。


 使い魔はすぐさま地上に着地すると、影に銃と髪の毛を差し込み

「ダグルトガラッチェル」


 口を開いた途端、全身が黒くなり凶暴そうな爪をむき出した。

 黒いマスクを口につけた使い魔は彼を追いかけるように町を駆け抜けていく。



「なんなんだよ、あの男は!!!」

『来る』


「なにが!?――こぃつっ!!!」

 背後の声に耳を傾けた時には赤い目と爪が彼の視界にあった。



『ギリシィアア!!』

 その使い魔から守ろうと、瞬時に背後の獣が叩き潰すように大きた手を勢いよく閉じる。


 バンッ

「――ガハッ」

 破裂音と共に吐き出す声が響く。しかし、お互いに目の色は変わらない。



「は なせ !!」

 使い魔は身体が潰れ血だらけになっても彼の首を掴み背後の獣に押しつける。獣も手の力も緩める様子がない。


「……っ」

 しかし、使い魔の鋭い眼光に獣も少年にも怖気付いていく。




「ペア、、スト。もういい。……ゴホッ、ホっ」

 意識が途切れながら背後の獣を消すと少年は使い魔の手を一心で振り払い、ひざまずきながら首を抑えた。



「……誰なんだよ! 僕は母さんと話してただけだ、なんで邪魔をする」

「しりませんよ。」

 使い魔は首を掴んでいた手で、張り付いた黒いマスクを無理矢理外す。



「貴方が姫の関係者なのかはどうでも良い事です。姫の願いのため、来て頂きます」

「姫ってあいつがか? あいつは僕を殺したんだ。地界に行ったって聞いて安心してたのに」



「僕の事を忘れただけじゃなく、お前みたいな不気味なやつを従えて、お姫様ごっこかよ!?」

「……っ」

 使い魔の瞳孔が揺れ動く。

「゛ごっこ゛なんかじゃ」



「今だ」

 視線が逸れたのを見計らい背後からまた獣が現れた。


『ギシャアアア!!』

「邪魔をすんなら、そのまま潰れろ」

 うなる剣は使い魔の足を突き刺し、獣は頭を狙うように手を向ける。



「…そうですか。」

 使い魔はすぐに見計らうと、影から銃を受け取り唇を噛み切って血を飲み込んだ。その瞬間に姿は消える。



 ズシャアアア

「ペアストっ?」

 振り向くと獣の腕が切れている。次第に他の部位にも切り目が入っていった。


「……っまて」

 獣は悲鳴をあげる暇もなく溶けるように消えていった。少年は獣の顔が消えるのを震えながら見ている。


「ペアストなんでっ……っ!! ああああああああぁぁぁ!」

 使い魔は気にする事なく少年を蹴り飛ばし、銃を太ももに突き刺した。


「んっ!」

 泣き叫ぶ少年を黙らせようと使い魔は口を足で踏む。少年の目には人間とは思えないおぞましい化け物が目に映っていた。


「キシャアアア!!」

 金切り声と共に少年は影に引き込まれていく。瞳孔は開き、口からは血を流しながら影に呑まれていった。



「……」

 使い魔はその様子を見送ると、銃を持ったままフラフラと歩いていく。


「 ……ぃメ、すぐに……」

 足が思うように動かず使い魔は倒れこんだ。



「……」

「だから言ったんですよ。」

 レフトバは物陰から姿を出し、使い魔のポケットを漁る。


「速く摂取してください」

 石のような物を使い魔の口に押し込むと、噛み砕きながら赤い液体を飲み込んだ。


「このまま人工のものばっか飲んでると死ぬと思いますが。よくこんな物で維持出来ますね」

「どちらにしろ……同じですよ」

 使い魔はゆっくりと起き上がり歩きだした。


「気をつけてください。現実世界の魔素の質が不安定になっています。まるで特定の人に沿ったような」

「しばらくは大丈夫だった…のですがね。……何か嫌な予感がします。」

 レフトバはフラフラの使い魔を支え、瓶に入った液体を飲ました。


「応急処置ですから。先程、マリさんを見てきましたが結構堪えているので行ってあげて下さい。」

「ありがとうございます。」


「それにしてもこの世界に生きる者は余裕が無さそうですね。冥界の方が案外幸せかもしれません」

「この世界にもいい事はありますがね。」

 レフトバはマリの元まで送り届けると、使い魔の力を借り帰っていった。




「ごめんね。怖かったよね」

「んーあ」

 赤ん坊は表情が曇ったマリに手を伸ばす。

 暗い部屋で料理をし、テレビをみている赤ん坊に食べさせた。


「美味しい?」

「あ、あ!」

「そう。良かった」

 しばらくして、赤ん坊は満足して眠りにつく。



「ピーちゃん。もう大丈夫よ。」

「はい。」

 マリの声を聞き使い魔は影から現れた。



「命令通り捕獲しております。ただ、かなり戦って負傷しておりますので、天空に引き取って頂き状態を観察している次第です。」

「ありがとう。ピーちゃん」



「姫、気分はどうですか。他にやる事がありましたら指示を」

 マリはただ赤ん坊の手を握りしめていた。



「お腹空いていませんか?寒いですし暖かい物を作って参ります」

 使い魔は台所の電気を付け足を踏み入れる。



「……ピーちゃん」

「はい姫」

 振り向い途端、マリは使い魔を抱きしめた。

 体制を崩し座り込んでもマリは顔を上げすしがみつく。


「姫?」

「行かないで。……少しだけこうさせて。」

「はい。」

 静かにうなづき、マリに抱かれるがままに使い魔は目をつぶった。



「私だって…守りたかった……!っう…う……」

「……」

「……と、言うわけだ。だからあんまりソイツを悪く思わないでくれ。」

「うん。」

僕は死呪霊の事を説明した。弥生はアイツを恨んでいるようだが、あっちにも考えがあるのは知って貰わないと。


僕が居なくなってもアラストリアみたいな立ち位置になれば何とかなるだろう。


「ね、おにいさん。それなに?」

弥生は僕のポケットに入ったノートを不思議そうにみていた。


「これは日記だ。と言っても天空に来る前はただの練習ノートだがな。」

「なに書いてるの?」

「今はまだ見せれない。今牙陪蘭と計画しててな。まだ終わってないんだ。」


「そっか。」

「あぁ。じゃあそろそろ言ってくるよ。」

「うん。がんばってね」

僕は弥生に布団をかけると部屋を後にした。


『……弥生。』

「――っ」


『謝罪は後でする。そんな事よりヒロルが起きた』

「……ヒロルにいさん。か。」

弥生は心臓に手をあてながら上を見上げた

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