表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
第5章 天空戦争編(準備)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

115/157

第5章 形

マリと使い魔は、転生前者を助けるために現実で対象者を助けていた。

「おい、帰ったぞ。……おい」

 真下は帰ると玄関から声を出した。しかし、使い魔は見つからない。



 カチッ

「綺麗じゃないか。」

 電気をつけて部屋に入ると、これまでのゴミ部屋が嘘かのような部屋が待っていた。



「あいつ帰ったのか?」


 ガタッ

「ピィ」

「ひぃ! なんだこの鳥!」


 道具入れの所から音が聞こえ、ヒヨコが布を咥えて顔を出した。真下は尻もちをつき目が点になっている。


「ピー……っと」

 ヒヨコは壁を蹴りあげ一回転すると、人の姿に戻り宙に浮いた布を手に取った。


「すみません驚かしたようで」

「だ、大丈夫だ。気にすんな。」

 真下は少し頭をおさえる様子で椅子に座る。


「死んだ世界のやつならそのくらい出来るよな。」

「出来るんですか?」


「さ、さぁ」

 真下は戸惑いながらも、使い魔を座らしビニール袋に入ったパンを取り出した。


「今日はあいつがいないんだ。好きなだけ食え」

「いいんですか?」

「あぁ。俺もあまり食わないからな。余ったら持って帰れ」


「ありがとうございます。」

 使い魔は5つほど袋に入れ、1つのパンを手に取った。


「これは、なんというか匂いが違いますね。割ってもなにもないとは。」

「それは米粉パンって言ってな。パンは小麦で出来るが、これは材料が違うんだ。」


「これが現実の米の味なんですね。」

「ちょっと違うがな。まぁ大元そうだろう。」

 真下は適当に応える。



「美味しかったです。」

「まだ2個しか食べてないが」


「こんなに貰いましたので十分ですよ。それに、食べなくても私はある程度は生きていけますし」

「便利だな」

「魔力が減った時に特定の物を摂取しないといけませんが、それ以外を見れば便利かもしれません。」

 使い魔は満足そうに口を拭きながらうなづいた。


「そういえば、これ。掃除している時に見つけました。」

 真下は人形を見てハッとする。


「まだ……あったんだな。」

「これはゴミではないと感じました。」


「これは娘から貰ったものだ。懐かしいな。」

「娘?確か離れて暮らしているんですよね。」


「あぁ。もうどこに住んでるのかも分からねぇ。せっかく前向いて忘れようとしてもこんなんがあったら忘れらんねえよ。」

 真下は人形を胸におきながら話を続ける。


「俺みたいなやつに離れたくないとか言ってな。これは娘が離れても寂しくないようにと、娘の代わりにしてくれと作ってくれたんだ。」

「いい娘さんですね。」


「あぁ本当にな。なのに俺はヤケになって気づけば忘れてる。それどころか、こいつをゴミみたいに扱ってしまった。俺は父親として駄目だな。」

「そんな事はないですよ。だって娘様は貴方の事が大切だったから、こんな素晴らしいものを作ったのだと思います。」



「すみません、分かったような口を。私には父親なんていないのでただの憶測でしかないのに。」

「んや、お前の言う通りだ。あっちはもう俺の代わりがいるかもしれないが、娘から貰った気持ちは元父親として、もう踏みにじる訳にはいかないな。」

 真下は人形の顔を見ながら薄っすらと笑む。


「また会えたらいいですね」

「さて、それは娘や妻次第だ。」

「そうですね。」

 使い魔は現実は大変そうだと感じながら頷いた。


「お前に家族はいないのか?」

「簡単に言うと生き別れですかね。もう生きてるかも分かりません。家族はいませんが、私の命を救ってくれた方は家族だと思います。血は繋がってはいませんがね。」


「ならいい。俺が言っていいかは知らないが、大切なやつがいるなら守ってやれ。どんだけ大切でも、力がなきゃ急に消えてしまうからな。」

「……はい。」

 そして、使い魔は真下の家を出た。


「父上、母上。私は姫のために生きます。……どうかご無事で。」

 空に誓うように呟き、使い魔はマリの元へ向かった。



「じゃあね、楽しんできなさい」

「は、はい。ありがとうございます。」

 一方、マリは赤ちゃんを抱きかかえ、お母さんを旅行に行かせた。


「今日は温泉で1泊だ。予約はマリがしてくれたしな。」

「はい。、、久しぶりです」


「よし。」

 2人を見送り、赤ちゃんを揺する。


「少しだけお姉さんとすごそうね。幼児食は流石にレシピ通りにしないとね」

「あーあっ」


「そうね。あーあ」

 バリッ

 マリがキッチンに立った時、ガラスが砕け散る音がする。


「え?」



「うーん。ちょーっとここで待っててね。テレビつけるから。」

 マリはさっと赤ん坊を座らし、テレビをつけるとベランダに出た。


「……ははは!」

「――っ!! その声」

 マリは短髪で紅色の髪をした少年を見て固まった。


「お手紙読んだ?お母さん、久しぶり」

「だから、アタシはあんたの母じゃ……」

「ううん、お母さんだよ。あんなに世話してくれたのに忘れちゃった?」

「……」


「ねー僕のお母さんって言ってよ。じゃないと」

 マリの目元に細長い刃が伸びる。


「僕、母殺しみたいになっちゃうじゃん。」

「まさか」


「僕ね、僕みたいな人を出したくないんだ。だから、その子も救わなきゃ。片親なんて可哀想。ううん、産まれた時点で皆可哀想」

 少年はマリを見下すように続ける。


「親のエゴで生まれたのにさ、片方は責任放棄して。片方からは生を否定されるんだよ?きっと邪魔だって殺される。他の子もそう。なら、」


 刃は鎖のようにうねりながら、赤ん坊の方へと伸びていく。

「もう人類皆いらなくない?」

「そんなのっふざけるんじゃないわよ!!」


 マリは影から鎌を取り出し、刃を切り落とす。

「誰もがそんなんじゃない。愛されて育つ子だっているの!両親がいたって虐待されてる子もいる。片親も両親も、子どもの事を考えて愛していれば子どもは幸せになれるはずよ」



 切れた刃はまた元にへと戻っていく。

「皆理由があるんだから、決めつけて殺すなんて絶対ダメ! もし、困っている子がいたら手を貸すのがアタシ達のする事でしょ!? ただ貴方がっ……」

「うるさい。あの時の苦しさをお前に分かるはずがないだろっ」


「なんで助けてくれなかったの」

「――っ!」

 吐き捨てるように呟く彼の背後から、鋭い眼光が現れる。


「ペアスト。コイツらを殺せ」

『ギリシィアアアアアアアア!!』


 大きな腕を持った化け物は彼を包むように背後から叫びをあげる。

 彩夢のアラストリアと同じようなオーラをマリはすぐに感じ取った。

(彩夢と同じ……っ。あの変な剣を逸らしても、あの化け物の攻撃に追いつくかどうか。)



 マリは唇を噛みながらもう片方の鎌を出し構える。

「ああああああああ!!」

(赤ちゃんが……)

 背後で赤ん坊が鳴き声をあげる。


「大丈夫。ちゃんと僕らが救ってあげるから。バイバイお母さん。」

「させるわけないでしょ」


 カッ

 刃を切り落とし、彼の間合いに入ろうとする


「ギリア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」

「――っ!」

 が、化け物の腕がマリの片腕を掴む。片方の鎌は刃を受け止めるのに力を使っているため動かない。


「っ……」

「案外、呆気なかったね。」

(今、あれを使ったら街に燃え広がるかもしれない。でも、ここで負けたら)

 マリは訴えかけるように口を開く。


「こんなの間違ってるわ! そんな子じゃない。しっかりしなさい!」

「はいはい。もう全部終わりだよ。」

 彼の刃は、赤ん坊から軌道を変えるように鎌に巻き付きマリに向かっていく。


「……」

 バンッ


 その時、どこからか音がなると刃の先が燃えるように灰になっていく。


 カチッ……ガっ!

『―――っギリアアアア!!』

「なんだ」

 少年が見上げると、獣の目が黒いモヤがかかり唸りをあげていた。


 影はマリを取り上げると抱きかかえながら、ベランダへと運び届け姿を出す。

「ピーちゃん!」

「姫、ご無事で何よりです。」

 マリは使い魔を抱きしめながら頭を撫でた。

 少年は振り払った化け物と共に体制を取り直す。



「何コイツ」


「ピーちゃんお願い、あの子をここから離してほしいの。もし、出来たら捕まえて。」

「かしこまりました。」


「でも、殺しちゃだめだから。」

「姫がそういうなら従います」

 使い魔はマリの手から離れ、銃のレバーを切り替える。マリは祈るようにしながらドアを閉めた。


「ねぇお母さん。なにこいつ」

「姫はもう話を聞かないそうです。用があるなら、私を倒す事ですね。」

――そして、とある天空

「速くだしてよ。ヒロルって子。」


血だらけになった地面を歩きながら、ナイフをクルクルと回す。


「大丈夫。ちゃんと責任持って皆を天国に連れていくからさ。」

「クロク……様」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ