第5章 14話 必要なもの
真下の自殺をとめ、1週間でなんとかすると約束した。
……が、失業の件はした事ないし。今の状況も分からない。
という事で、知り合いの牙陪蘭にパソコンを借りていた。
『アラストリア、やっと卒業したね! 俺達、あのクソみたいな鳥籠から出られたんだ!』
『あぁ、頑張ったな彩夢』
『へへ。もっと褒めて!』
嬉しそうに賞状を握りしめ、人がたむろする学校を一足先に去っていく。
『……次は中学かあ』
『なに、こんな場所を頑張って抜けたんだ。お前なら次もやれる。』
『うん!』
「もう少しいればいいのに……友達とか先生に挨拶したの?」
「最小限はしたよ。別に恩なんてないし。」
そう言うと、母さんは呆れ、父さんはそんなもんだろ。と話しながら家に向かっていた。
「まぁ私がしたからいいけど。あの先生……なんだか鬱っぽくなってるわね」
「助けてくれなかったし、母さんが出ても動かないし。陸上の恩はあるけど、 それ以外は嫌い」
『お前を助けないからな。害と判断した。』
『うん。助けてくれたのはアラストリアだけ。先生もみんなも助けてくれなかったけど、それが人間なんだよね。頼りなんていないんだよ。』
賞状を握りしめるのを我慢しながら、ただ曇りきった空を見上げていた。
『……中学も1人かな』
『新しい環境なんだ。お前次第でなんとかなる。』
『アラストリアは俺に友達を作って欲しそうだよね』
『お前には居場所を作って欲しいとは、思う。』
そして、入学式が近づいてくる。近づけば近づくほど不安を感じてしまっていた。
『居場所か。新しい友達を作りたいけど、どうやったらできる?』
『そうだな。まずは、威圧をかけるようなオーラしまって親切そうな雰囲気でも出せばいい。』
小さな部屋で、ボソボソと話しながら彩夢は卒業式の写真を見つめていた。
『親切そうねぇ。』
『……その死んだ目を辞めて、明るい人間かつ、お前が見てきた中で、無理しない程度の優しい人間の真似をしてみろ』
「んー?目に光をいれて……にこぉー」
『まぁ、最初はそんなんでいいだろう…まだ裏が見えるがな』
その日々は繰り返し――
『どう?猫かぶれてる?』
『あぁ。優しそうには見え……
い、師匠!
師匠、起きあがれください!!
「もう! 師匠ってば!!」
「……っ」
目をさめると牙陪蘭は困ったような顔をしていた。
僕、寝てたのか。
「もう、朝ですよ! 行かなくていいんですか?」
「……そう…だったな。」
僕は、眠そうにしながらも牙陪蘭の母が用意したトーストにかじりつく。久しぶりに食べたが美味しいな。
「師匠、調べられましたか?俺も手伝いたかったんですけど」
「気にするな。大学は大変だろうしな」
気がつくと、牙陪蘭はもう大学生になっているようだ。車の免許を頑張って取った話や彼女が出来そうな話……僕の知らない世界を彼は知っているようで羨ましかった。
「俺、高校はテニス部に入ったんですけど、今は野球してます」
「そうか。大学生活を楽しんでいるようでなによりだ」
今は、地元の大学に通い、保育士と幼稚園の免許をとるために勉強中らしい。
弥生に会いたがっていたが、今はな合わせられないと言ったら落ち込んでいた。
僕は、大学に行くついでに昨日の場所まで送り届けてもらった。
「師匠、今も毎日トレーニングしているんですか?」
「あぁ。」
そう言うと、牙陪蘭は不思議そうに僕に視線を向けている。
「筋肉量とかあまり変わってないなーっと」
「…………まぁ、死んでるからな」
ま、技術は上がってはいるはずだと思う。たまに使い魔さんとトレーニングもしてるし。
「また、なにかあれば言ってくださいね!いつでも」
「……あぁ、またな。」
お礼を言って別れをすますと、すぐに真下の家まで向かい始めた。
数時間だったが昨日の数時間で大体の事がわかった。
1つはAIによる解雇が増えている事。今はAIが発達した結果、人類は人を辞めさせAIに頼るようになった。
経済を回しやすく、そして効率化を上が必要とした結果、人を辞めさせる事が簡単になり可能になってしまっている。
2つ目は仕事の変化だ。組み立てや生産は機械が出来るようになり、繰り返しは全て機械が行えるようになった。
なら、芸術は?と調べてみたが、絵や漫画などはAIでする人が多いらしい。
資料やPR……誰かに頼まなくても絵が描けるとは恐ろしいな。ちなみに、生き残った絵師の価値は上がったようだ。
まぁ、狙い目は大体考えていた。
「おはようございます」
「遅いぞ。ガキ」
ドアを開けると、真下は玄関であくびをしながら見下ろしていた。
「隈酷いな」
「高校ではよくある事でしたよ。このくらい問題ないです。」
「では、提案をさせてください。」
僕は、部屋に上がりゴミの隙間に座り込んだ。
「明日から、ある場所に行ってもらいます。」
「ある場所?」
「とあるパン屋で働いてもらいます」
真下は、あ?と眉をしかめ、カップ麺をすする手を止めた。
「パン屋でこれから働けばいいのか?」
「いえ、そこで必要な能力を鍛えてもらいたいのです。」
「必要だぁ?」
「……昨日、調べて確信しました。今の時代、必要なのはズバリ、人とのコミュニケーション能力です。」
真下の表情が段々に曇っていくがこちらにも時間がない。調べた限り、人が関わる場所ではまだAIは対応できていない。
実際、教室の先生、スポーツクラブなどの先生をAIにしたが、子供の動きや無邪気な質問、問題点を一人一人分析するといったのが予想以上の不可でバグったとか。
「分かりましたね?」
「コミュニケーションは苦手だ。一理あるがな……だが、手配とかどうなんだ?」
「もちろん。知り合いに頼みました。」
「ガキのくせに……手が回る…」
真下は仕方なさそうに頷いていた。
「思ったんですけど失業保険はないんですか」
「前にもらったな。再就職しようとはしたんだが……いつの間にか時間が経ったし貯金はもうないな」
「なら、稼ぎは……」
「パチンコ」
「…………」
調べきれてないので、粗や間違いがあったら申し訳ないです




