最後?の転生前者
転生前者をとめるため、僕はこの街にきていた。
「ここか」
街通りを外れ、眼鏡に従っていると古そうな家の前にたどり着いた。今回は道路じゃなく家に矢印が向いている。なら家の中か。
「………………」
眼鏡はしっかり家に近づくほど反応している。
『アラストリア、行ってくれ』
『仕方ないな』
脳内からめんどくさそうな声が聞こえると、僕の影が扉に向かって伸びていく。
(93……98…………)
僕が待っている間、暇つぶしにと地べたに転がっていたタバコを数えていた。2桁以上。これがヘビースモーカーというやつか。
『おい彩夢』
『どうだ、分かったか?』
『今から視界を貸す』
片目がピリッとする。
「……っ」
僕は、痺れる感覚に襲われながらも目を開けると右目の視界が代わっていた。が、両目を開けるのは気持ち悪い。とりあえず片目を閉じて右目に集中する。
(ゴミ屋敷に男性。この体格に、髪質、シワ。40後半あたりか)
なにかしようとしているようだ。足もとには椅子、手にはロープを持ち取り付けようとしている。
なるほど。
ピンポーン
「すみませんー」
「………………」
ダメか。
ピンポピンピンポーン
「……………………」
反応なしか。よし。
『なぁアラストリア。ロープは軽くて、しなやかに動いて便利だと思うよな。重く硬かったら取り付けられないよな?』
『……自分でやればいいと思うが。』
僕は圧をかけるように呟き数分が経過した。
ドンッ、ガシャ!!
急に大きな音が聞こえ地響きのようなものが伝わってくる。落ちたようだが流石に痛そうだな。
ピンポーン
僕はただチャイムを鳴らし続けていた。
頑張ればこじ開けれそうだが、犯罪になるし警察を呼ばれたら大変だ。
多分これもギリギリだが。
ガチャ!!!!
「なんだっ、さっきから!!」
予想通り男性がイライラしながらドアを開け、僕の胸ぐらを掴む。
「落ち着いてください」
「あ!?」
服装や表情を見るに良い暮らしはしていないようだ。それにしてもヤニ臭い。
「ぅえっ、ゴホッゴホッ……」
やばい呼吸が乱れて
「どしたクソガキ」
「げっはっ……肺が弱いだけです。1回離れてくれませんか」
僕は鋭く睨みつけ手を払うと後ろに退いた。
「……とりあえず話を聞いてください。」
「うるせ、帰れ」
「…………」
毎回毎回、なんで話を聞いてくれないんだろうか。いや分かるけど。
「じゃあ僕の手を握ってください」
「あ?」
「いいから」
「なにすんだっ」
無理やりにでも男性の手をしっかり掴んだ。やはりこの感覚、無意識にしても僕がこんなこと出来たとは。死呪霊を体内のアラストリアに喰わせていく。
しばらくすると眉間のシワが弱くなり、僕を不思議そうな目で見始めていた。
「なんか不思議な感覚だな。お前なにもんだ」
「そうですね。簡単に言うと天空から来た者です。人間が死ぬことなく、幸せに暮らして欲しいという願いのために。」
そう言うと男は、ん?怪しそうに眉をしかめながら
「新手の宗教か?」
「違いますよ。僕みたいな子どもが、貴方に変な壺を買わせられるスキルがあると思います?」
「ふんっ。ま、それもそうだな。」
男は軽く笑いながらドアを開いてくれた。
「話くらいは聞いてやるよ。虫がはいるから速く入れ」
「……お邪魔します。」
カッコよく言ってはいるが中はゴミ屋敷に変わりない。足元にはカップラーメンが散らばっている。
その中でも少しスペースがある場所。おそらく寝てるであろう所に座りこんだ。
「で、なにすん気だ」
「貴方の問題を聞かせてください。それだけで構いません。」
「ならとっとと楽になりたいんだが」
「……」
やはり、こういう人は大体意思が決まってるよな。
今、この世界には死呪霊がわんさかいて、迷う暇なく本心のままに行動させてしまう。様々な問題に向き合わず簡単に。困ったものだ。アラストリアがいる僕の身体に接触する事で落ち着かせることが出来るようだが。
「そうですね」
だが、ここで引き下がるわけにはいかない。
「……なら、1週間。僕に時間をくれませんか?」
「1週間か」
「どうせ死ぬ予定なら、7日くらい生きても変わりませんよね。死にたければ僕が痛みなく楽に殺します。」
「ほう。」
そんな事する気はないが。案外、死を考えながら改めて数日生きてみると考えが変わる事もある。
「その7日間、僕にチャンスをください。最後に貴方が今の人生で困っていることや悩みに向き合う手伝いをさせて下さい。」
「もう十分痛い目には会ったんだが」
「吐き出した方がいいですよ?話を聞いてくれる人も中々居ないでしょうし僕に話してください。」
男は黙りこみながら考えこんでいた。
「しかし……お前みたいなガキに話したところで、そんな事が出来るのか?」
「壺は売れませんが貴方みたいな人の解決は何度かしています。どうすればいいのか?解決策になるかもしれないですし聞いて損はないかと」
男はふーん。とタバコを吸っていた。
「クソガキ、名は?」
「信田 零です。」
「お前は死んだのか。家族はどうした?」
「………死にました。家族は置いているので生きていますよ」
僕はあの時、流れに乗るように僕は死んだんだ。今考えればバカをしたとは思う。
だから僕は責任を取らないといけない。早くあいつを帰さないと。
「ま、僕は死ねてないらしいですけどね。現実に戻るまで時間がかかるそうなので、帰れるまで天空の手伝いをしています」
「大変なんだな。」
男は同情するように呟いた。
「色々聞いて悪いな。俺は真下だ」
「よろしくお願いします。では、聞かせてください真下さん。」
「肺が弱いのか」
「小さい頃の喘息か、親のタバコかは知りませんけど、タバコの匂いがあると呼吸しにくくなるんです。」
「仕方ないな、お前の前ではしないようにしてやるよ。」
「助かります。」




