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地平線の仲介者 〜死んだはずの僕が現実で転生を止める役目を受けました〜  作者: 大井 芽茜
現実世界へ

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第5話 さらなる課題

イジメの話を聞き未空に認めさせた彩夢(零)

奈美に手を出さない事を約束させたが本当に大丈夫だろうか?

「まだ課題は沢山あります。」

「そうだろうか?」

 有彩はもう大丈夫だ。と言いたそうに満足そうな顔をしていた。



「私はもう解決したと思うのだが。」

「いえ。ここからが本番ですよ。まずは学校でどうなるかですね。」

「そうね。まだ不安よ」

 今は一時的に時間を稼いだだけに過ぎない。前も言ったが日が変われば何も無かったかのように始まる可能性もある。恐らくだが恨みは今回より酷くなっているだろうし注意が必要だ。



「とりあえず明日。不安かもしれないが行ってみてくれ」

「うん」

 奈美はそう返事しながらも不安そうな様子だった。何か護身用でもあればいいんだが。



(あれなら)

「そうだ。ちょっと待ってくれ」

 僕はポケットからある道具を手渡した。


「これを使ってくれ。もしかしたら役に立つかもしれない」

「え?もしかしてこれを使う為にあんなことをしたの?」


 僕は軽く頷いた後に使い方とコツを教えた。スマホのアプリがあれば使いやすいんだが使えないモノは仕方ない。


「僕達もいちよう遠くから見ているから」

「えっ本当!? うん、わかったわ!!」

 奈美は道具をあげた時より嬉しそうに目を輝かせた。まぁ道具より僕達がいた方が安心か。とりあえず今日出来るのはやりつくしたはずだ。



「じゃあ。また明日。」

 挨拶をすると奈美に帰りざまに僕達の方を向いた。


「その。あなた達のおかげで楽になったわ。あっありがとう」

 奈美は少し照れくさそうに頬を赤らめている。



「そう?それは良かった。」

「あぁ、気をつけて帰ってくれ。」

 少しでも力になれたならそれでいい。しかしこれからが本番だな。


 奈美は手を振りながら

「じゃあ明日会いましょう! 5時にここね!」

 彼女は僕達に連れて行きたい場所があるらしく来てと誘われた。


「ああ、また明日!」

 笑顔を返すように、手を振って奈美と別れをすます。




「ふぅ」

 ――奈美が帰った途端、僕はベンチに倒れ込んだ。結構疲れるなこれ。身体は元に戻っているが中身はボロボロだ。


「大丈夫か?」

 有彩は不安そうに僕の隣に座り様子を見ていた。



「ちょっと負担が凄くて」

「そうか、すまなかったな。よし。今すぐ帰って休もう。」

 有彩はスっと立ち上がった。帰る場所?



「あのー僕達に帰る場所ってあるんですか?」

「あるが」

 有彩は不思議そうな顔をして空を指した。天空?



「戻れるんですか!?」

「まぁ…」

 僕はてっきりここで住むと思っていた。帰れるなら今すぐにでも帰りたい。



「じゃあ帰りましょう! よっと………ぁ」

 僕は思いっきり立ち上がった瞬間。平行感覚を失い意識がふらついた。


 流石に少し負荷をかけすぎたな。

 ――バタッ


「さ…夢!」

 有彩の声が微かに聞こえたが反応する気力さえ残っていなかった。



 ………っ?

 僕が目を開けると天井が見えた。部屋か?



「?」

「彩夢! 良かった」

 有彩はウィストリアの姿になっていた。僕が目を開けるまでずっと見守ってくれていたのか。ウィストリアということは天空だな。



 まだ意識がぼーっとしている。手を握ったり閉じたりすると感覚はある。ただの疲れだろう。


「倒れたからここまで運んだんだ。大丈夫か?」

「そうなんですね。元気ですよ、ありがとうございます。ちなみにここは?」

「私の部屋だ。」

 周りを見ると沢山の書籍や紙が溢れていた。何気に女の人の部屋って初めてだな。



「彩夢体調はどうだ? すまない無理をさせてしまって。」

「大丈夫です。慣れてないだけですよ」

 ウィストリアは申し訳無さそうに謝り、僕は大丈夫。と元気ポーズを見せる。




 そんな話をしていると、グぅと急にお腹が鳴った。

「ぁ」

「そうか。あまり無理はするなよ。お腹が空いているみたいだし、今からご飯を作ってくるが何がいいとかあるか?」


「うーん、チーズが入っていれば何でも」

「ちいず??」

 ウィストリアは分からなそうに尋ね返した。

 そうか。ここは現実世界とは違うんだった。



「それはまた今度教えますね。じゃあ今日はウィストリア様の好物が食べたいです。」

「そうか! よし少し待っていてくれ!」


 ウィストリアは張り切って部屋から出ていった。しかし何故だろう。凄く嫌な予感がする。


 僕は周りをもう一度見てみたが本当に書籍ばっかりだ。記録のようなあとも沢山ある。前にみた本やウィストリアの仕事である事務って忙しいんだなと感じ取る。


 そんな事を考えていると近くの部屋から

 ガチャン! ガコッ! バッン!


「………!? なんだ」

 僕は立ち上がり、急いで扉を開けると焦げ臭い匂いが漂ってくる。


「うえっごほっ」

「はぁはぁ彩夢!完成したぞ!」

 ウィストリアは息を切らしながらも、ニッコニコとしていた。料理ってそんなに疲れるか?



「何をしているんだ?さぁ彩夢も座ってくれ」

 ウィストリアに呼ばれ、向かい側の椅子に座った。キッチンはよくある家庭とあまり変わりない。


「さぁさぁ! 食べてくれ」

 皿に乗っていたのは紫色のスープだ。ゴポゴポといっている。


「なんですか?これ」

水実(すいじつ)獣魂(じゅうこん)のスープだ。」

「水実?獣魂?」


 水実は水をたっぷり吸い込んでから咲く花で果物の類、獣魂は獣のオーラから生まれた一時的な生き物らしい。僕目線で言えば肉みたいなものか?獣によって味が変わるらしいし。


「獣いるんですね」

「ああ、見たことはあまり無いが最近よく見つかるんだ。おそらく、天界にもモンスターがいると思っている人間がいるからかな。これは魔法で閉じ込めておけば消えないまま食べられる。」

 幽霊とか氷みたいな扱いなのか?鼻が麻痺して匂いが分からない。



「とりあえず冷めてしまうから細かい話は後だ。さぁ食べてくれ」

「…」

 水実は青いらしいが何故こんな色になったんだ?ここまできたら大体展開は読める。



 が、

 ウィストリアは目を輝かせながら僕を見ていた。ここまできたら根性だ。腹を括るしかない。


 僕は1口勢いに任せて食べた。


「ん!あっ、この食感は肉みたいで美味しいですn」

 ダンッ

 僕は思いっきり机に頭をぶつけた。



「彩夢!?どうしたんだ!」

 ウィストリアの焦る声と魔法の詠唱らしいものが聞こえてくる。


「何故だー……何故効かないんだ!」

 多分そういう事じゃないと思います。



 数分後。

「ん?」

 僕はゆっくりと起き上がった。おそらく僕の身体が拒絶したようだな。それにしても倒れすぎだろ。



「本当に良かった。まだ食べるか?」

 ウィストリアは何故かゼェゼェと疲れきっていた。様々な色の液体や印の魔法書が机の上で山積みになっている。


「心配かけてすいません。もう1口でお腹いっぱいになりました。」

 はははと僕は笑って誤魔化した。



「そうか。材料に魔力を持っているから魔力がない人間には1口でも量が多いかもしれない」

 ウィストリアは指を鳴らし皿を綺麗にした。魔力=ご飯って感じか。でもまだまだ分からないことだらけだな。この世界は。ちなみにまだ食べられるが食欲がなんかない。



「あーそうそう。彩夢、今の現実ではもう午前9時だ。」「え?まだ夕方ですよね?」

 窓からもれる光は、紅の色をみせていた。



「実はここ、流れがゆっくりなんだ。天空の時間は現実の6日分ある。」

「じゃあ!」

 僕はすぐさま立ち上がったがウィストリアは不安そうにしている。


「いけるのか?彩夢?」

「えぇいけます!」



 僕は急いでリュックを背負い、家の外で待っているウィストリアの元へ向かった。

「よし。それじゃ行こうか。」


 ウィストリアはパチッと指を鳴らすと途端にまた光に包まれ、目を開けると違う景色になっていた。



「現実か」

 僕が目を開けると現実世界になっていた。前みたいに塔を登らないんだな。


「あのー最初の時みたいに魔法いらないんですか?」

「1回、この世界に来たら魔法いらずに来れるんだ。私がいれば。事務だけの特権だが」

 本当に事務とは何だろうか。僕はそんな疑問を抱いた。

 


 周りを見ると昨日と同じ公園だった。日は少しだけ当たっており、優しそうなお婆さんが花に水やりをしている。


 僕達には気づいていないようだな。



 ん、待てよ、そういえば。

「奈美の学校聞いてない。」



 僕がそう呟き振り向く時には有彩の姿は消えていた。

「有彩さん!?」

「あぁ。少し待ってくれ。昨日の落とし穴が塞がっていない」


 落とし穴のふちを触りながら有彩は動揺を隠しきれずに見つめていた。昨日穴を埋めたはずなのに。



「危なっ。でも、昨日埋まってましたよね。」

 穴が埋まりきっておらず穴の外には土が出てきている。有彩は指を鳴らしスコップを片手に持った。おそらく穴を埋めるのだろう。


「あっ僕がやりますよ。力仕事は任せてください」

 胸を叩き有彩からスコップを借りようとした。ここは僕の出番だ。



 すると有彩はスコップを磁石のように使い、土を引き寄せ穴を埋めていく。

「えぇ」


 力は関係ないようだ。僕はその光景に唖然しながら見送っていた。


「よし行くか。おーい」

 その時、見たことのない白い鳩に似たような鳥が現れ有彩の肩に乗る。



 ぽーぽーと鳴いた鳥は溶けるように消えていった。

「了解だ」


 これアニメとかで見たやつだ。僕は好奇心が抑えられずに口が開いたままになっていた。



「よし、行こうか。彩夢」

「あっはい! 場所、分かったんですね!」



「あと、ここでは零って言ってください。」

「すまない。忘れていたな。」

 僕達は学校に向けて歩き始めていた。


 途中パン屋を見つけたので何個かパンを買い昼ごはんを確保する。

「どれが美味しいんだ?」

「うーん。」



「あの、味見します?」

「はい!」

「……?」

 パンの人に甘えてパンを口に入れる。店員は優しかったしどれも美味しかったので沢山買った。ここはまた来ないといけないな。リピート確定だ。


 学校の近くまでいくと校門から少し前の所で僕達は立ち止まった。

「着いたんですけど、どう入ります?」


「入れないのか?」

「入れないです。」

 校門には警備員が見張りをしていた。最近は物騒だし仕方ない。


 流石に真っ向からは不可能だろう。周りはビルや家だらけだし、柵から侵入するのは不審がられてしまうだろう。しかも犯罪だしな。


「そうだな……じゃあ、姿消してみるとかはどうだ?」

「あっなるほど。それはいいですね。」

 本来なら捕まるが仕方ない。有彩は指を鳴らすと手が薄くなっていた。いちよう近くのビルで姿を見ようとしても見えなくなっている。


 やはり透明になっているようだ。少し身体が重い気がするが気にしないでおこう。



「行きましょう!」

 僕達は校門を飛び越え警備員に見つかることなく学校に潜入した。


「これが学校」

「でかいだけじゃないんですよ、ここは」


「5年、5年」

 僕は中に入ると流れる看板から5の表示を探していく。



「ここは凄いな! どこを見ても子供が勉強している!!」

「やっぱり学校って知りませんか?」

「あぁ。全く。」

「じゃあ僕が軽く説明しますね。」

 僕は学校について話していくと5年の部屋に到着していた。



「ここか!」

 5年1組……2組。

 教室をよく見ると、そこには奈美が勉強していた。



「ここか。で、どうするんだ?」

「暫くは見守りましょう」

 有彩は不思議そうにしながらも頷いた。


「はい。じゃあグループ作ってー」

「ここ1班、2班」

 班の話し合いか。なんか授業参観のきぶんだな。話し合いが始まったが、なんだか少し違和感がある。


(奈美はほとんど話を降られず、最低限しか話をしてない)

 いや僕が敏感すぎるのか?



「私は賛成よ、だって」

「分かった。賛成だね。次どうぞ」


「えっ」

「僕は反対かな、だって楽しくなさそうだし。それをするなら僕は~」


「うんうん。なるほどね。」

(この空気)

 僕はモヤモヤした気持ちが少しづつ確信になりながらも授業の観察を終了した。


 ――12時

 昼ご飯のチャイムが鳴っていた。最近は不登校が多いのか皆は弁当を持参し好きなように食べている。


「ねぇ、食べない?」

 大人しい子に奈美は話しかけていた。声のテンポ、強弱をみるにいつも通りにしているようだ。



「ごめん。今日は違う子と食べるんだ」

「そうなの?」

 その子は少し怯えながら目が泳いでいる。


 奈美は仕方がなさそうに自分の席に座り1人で食べようとしていた。

(奈美は予想外だったのか、少し動揺した様子で席に戻る。見るにいつもと違うようだ)


 やっぱりおかしい。僕は人間不信だから考えすぎかもしれないが。まぁ疑わしきは即対処に限る。


 有彩に頼み、奈美に手紙を渡す事にした。ここで姿を見せる訳にはいかないし。

 奈美の机にひらひらと紙を舞わせる。奈美は不思議そうにその紙を受け取った。

(ん?何だろう。えーと奈美へ?)


「読んでくれてますね」

「あぁ。そうだな」

 うれしそうに手紙を開けて読んでいる。



『奈美へ。れいです。屋上でご飯でも食べながら話しませんか?無人にしてるから安心してくれ。』


「なんか屋上使えないんだけど………」

「何よ。今日は立ち入り禁止って」

 奈美が廊下に出ると未空達は呆れながら帰っていた。


(やっぱり!)

 嬉しそうに奈美は、屋上に急いで向かってくる。



 ガシャ

「れい、有彩!」

 奈美は無邪気に走り出し有彩に抱きついた。


「やめないか」

「えへっ。つい嬉しくて!!! 昨日ぶりだね。」

 3人だけの広い屋上で僕達はご飯を食べ始めた。

 僕の学校は屋上が使えなかったから初めての気分だな。



 屋上には厳しく棘がついた柵が回っており、『のぼるのきんし!』とデカデカと書かれている。

 何か、事件でもあったのだろうか?


「あっ、そのパン!」

「んっどうした!?」

 僕は奈美の声にびっくりしてパンを落としかけた。



「ううん。きっと後で分かるわ!美味しい?」

「あぁ。もの凄く。」

「ふふっ良かった!」

 奈美は教室の時より明らかに楽しそうに見えた。



「ところで変わったことは?」

「うーん、なんか前より皆おかしい気がするわ。1部の子は前よりよそよそしい感じ」


 推測だが皆に圧をかけたのではないだろうか?

 確かに、奈美に手を出してはいないが悪どいやり方だ。結構傷つくんだぞ?


 未空は大人しく下がるつもりは無いようだ。



「分かった。とりあえず、今日の所は頑張ってくれ」

「えぇ。まだ痛い目に合うよりはマシだし」


 奈美はそう言っているが持続的にキツくなるんだろう。悪いが、このままさせるつもりは無い。


 続く前に止めてやる。



「皆とご飯を食べる事が出来て良かったわ!頑張ってくるね」

 彼女が元気になったようで良かった。僕達は頑張れ。と手を振り遠くから教室を眺めていた。



「今からどうするんだ?」

「まずは、加害者達の状況を見ましょう。」

 やっぱりイジメは簡単には終わらない。きっと争い無しに生きていくなんて不可能だろうな。

(それでも終わらせてやる)



「本当に彩夢がいてくれて助かるよ」

「そう言ってくれるとうれしいです。」

 僕はただ奈美を、彼女を見ると自分と重なってしまうのが苦しいんだろうな。だからだろう。僕の分まで幸せに生きて欲しい、助けになりたい。と自然に思ってしまう。


「力になると言ったので出来る事はします」

「ありがとう彩夢」

 ウィストリアの笑顔は輝いているように見えた。

「彩夢って高校生だったよね?1人でご飯食べる時とかあった?」

「あった。…けど堂々と食ってたな。別に将来大人になったら当たり前の事だと割り切っていた。」

「なんか、高校生の解答じゃない気がするわ…」

「まぁ…そうしないとやっていけなかったからな。オドオドしてたら狙われるだけだし。」


「少し…心配になるわ」




調査を開始した2人。

しかし。転校生の方が速いかもしれない


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