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魔術師達の特異点  作者: 絶望の器
第0章
1/4

光翳る場所

こちらは本編の前日譚になります。現在本編は準備中です。もし0章をよんで気に入ってくれた方は是非本編も読んでください(*- -)(*_ _)ペコリ

落ちこぼれ、面汚し、無能。



昔からその様な馬頭文句をよく言われたものだ。



純真無垢な幼少期は何を言われているのかさっぱりだったが、今ならほとんど理解できる。



言葉を新たに知るたびに辛くなる。痛い言葉が広がってゆく。



そんな幼少期に射した、ただ一筋の陽光。



それが俺のただ一つの誇りだ。







「げんきでね!!」


「ちゃんと挨拶するんだよ。」


「体には気を付けてね。」



普段聞きなれない言葉に気持ち悪さを覚える。



フレンが聴きなれていないというのもあるかもしれないが、こいつらは普段から優しい言葉をかけたことは一度たりともなかったのだ。



フレンには魔術師の才能がなく、本家の人間からはとても人の扱いはされていなかった。



そして、とうとう本家から追い出されることになったのだ。



行先は、本家直属の対魔術師の仕事人らしい。



そんなことを考えているうちに養子先の家に着く。



馬車を降り、出迎えてくれた女性に挨拶をする。



「今日からお世話になります。フレンと言います。」



「よろしくね、フレン君。私はマリー・ローレンス」



金髪に背の高いその女性は気さくに挨拶を返した。



「お互い大変だね…でも、もう大丈夫!!不自由無い暮らしをさせてあげるからね。」



優しい声をした女性だ。しかしどこか白々しいところがある恐らく上に(なす)り付けられたのだろう。そういう意味も込めて()()()大変なのだろう。



マリーに連れられて家に入る。そこは木と煉瓦でできたかなり使い込まれた風な家であった。温かいココアを飲みながら今までの境遇について話す。



つたないフレンの言葉を真剣に聞いてくれたのはいつぶりだろう。



思い思いの言葉を吐いた。まるで今までのロスタイムを取り戻すかのように。あっという間に時は流れた。



そして、晩飯をとる。人参やじゃがいもがたっぷり入ったあつあつのクリームシチューだ。残念ながら美味とは言い難い味だったがしばらく残飯続きだった食生活よりは素晴らしいものだ。



晩飯を終えたフレンはマリーのに連れられ別の部屋に移動する。



「ここは君の部屋だよ。好きに使ってくれていいからね。」



温かい食事に自室かつてないほどに潤った生活に心躍らせる。



そして、僅かに与えられた私物を詰め込んだカバンを開け整理をする。



そんなこんなで、夜遅く。床に着く時間だ。



なれないふわふわのベッドに動揺しつつも眠りにつく。







カンッ!! カンッ!! カンッ!! カンッ!! カンッ!! カンッ!! カンッ!! カンッ!!



騒がしい金属音で目が覚める。



騒音が気になりその方へ向かう。



するとマリーは鉄を打っていた。



「おっ!!おはよう!!フレン!!ごめんね!起こしちゃった?」



こんな騒音で起きないほうが不思議である。



「マリーさんは鍛冶屋の仕事もしているんですか?」



「うん、仕事用の武器を自分で用意してるいるの。」



仕事とは魔術師殺しの仕事だろうか。こんな優しい女性が魔術師を殺すことを生業としているなんて信じられない。



「どうしたの?そんなにじっくり見て~フレンもやってみたいの?」



別にやりたかったわけではないが、マリーなりの気遣いだろう。



「はい、お願いします。」



鍛冶用のハンマーを手に握る。かなり重い。彼女はこれをブンブン振り回していたのかと思うとかなり怪力であることが伺える。



「じゃあ数回打ってみようか。余り力みすぎないようにね。」



力みすぎるなと言っても。持つだけで精一杯である。



カンッ!!



力いっぱい振り下ろした途端、鉄が発光し稲妻が走る。



「え~!?何が起きたの!?」



そこにあったはずの鉄塊は模様が入った剣へと姿を変えていた。



魔術を一切使えなかったフレンの頭は疑問符で満たされていた。



「あの…いったい何が起きたのですか!?」



フレンは生まれたばかりの疑問をマリーに投げかける。



「すごいよッ!!!フレン!!」



マリーが抱き着いてくる。花のようないい香りがする。あと汗のにおいも。



「こんな、魔術見たことないよ!!たしか、フレンには一切魔術の才能がなかったんだよね?」



「はい…そのはずです。」



「きっとこれは、魔術ならざる魔術。いわゆる第三魔術だね!!」



マリーが嬉しそうに話す。



「最近、第三魔術が使える人間がたまに生まれてくるらしいんだけど、どの子にも決まって共通点があるんだよ。」


「それはね、みんな普通魔術、いわゆる第一、第二、魔術を習得できないの。」


「つまりね、この能力は君の才能だよ!!あいつらが見抜けなかった素晴らしい才能。世界でたった一つの君の魔術だよ!!」



フレンは涙が止まらなかった。自分に隠された能力があるという事実よりも、他人に自分を認めてもらえたという感動に涙していたのだ。



嘲り、罵り、非難されてきた人生。一度たりとも褒められたことはなかった。



「ねぇ!!フレン!!あんた、あたしが鍛えてあげるよ!!」



「私の弟子にならないか!?」



フレンは本当の家族を、帰る場所を、温かいご飯を、ふわふわの寝床を、誇るべき才能を手に入れた。



フレンの人生はここから始まる


肉体的にという意味ではなく精神的な意味での人生だ。





































閲覧ありがとうございます。

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