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第33話 ピクシー粉

 後方では、ピクシーのキティーラが御者台のデュラハンに催眠のピクシー粉を振りかけた矢を気づかれずにうまく当てた。



 白銀のアウルベアが角のある男を襲う。体格の上では多少熊が勝るが男のパンチが梟熊の顔にヒットすると巨体が沈みかける、が、踏ん張り男の胸に組み付く。

 カリュブディスが空中殺法で鋭い猛禽の爪で顔を抉る。二人で息の合った連携を見せた。


 黒髪長髪の鹿角の男は両手の指を組み鉄拳のハンマーでアウルベアの頸椎を思い切り打った。


 銀色の巨塊が崩れ落ちる。


 そのままカリュブディスに多少皮膚と肉を削られようと構わずその足をひっつかむと地に叩きつけ、蹴り飛ばした。


 セイレーンがくたくたになりながら、諦めず立ち上がっていく。


 男はようやく異常に感付いた。



 足の(くるぶし)あたりまで黒い煙幕がドライアイスの煙のようにもくもくぶくぶくと沸き上がり地表を暗闇の海のように覆い尽くしていた。


 キティーラの矢により恍惚状態だったノイモントが我に返る。


「ケルヌンノス!双頭犬共が消えている!」


 メイドが叫ぶと、カリュブディスは苦しげな顔に笑みを浮かべながら言い放つ。


「Θντα Ξιτσθ ηα μοθ Ψαναρι οππαιιππαι Ξααναι νο?

(あんた、実はもうかなり一杯一杯なんじゃぁないの?)」



 (アン)…、実体化した犬首が男の真下から足元を掬い逆さ吊り飛び上がる。

 (ドゥ)…、男を頭から喰らい地に叩きつける。

 (トワ)…、(カトル)…、(サンク)…、(シス)

 暗煙に埋もれた男の四肢と胴に襲い掛かりばらばらに肉を裂き引き千切る。



 俺は情けない俯せの恰好から動かずに事を為した。

 頭上高くにはその闇の霊気に紛れた暗黒のハープが浮かんでいる。


 暗闇の粒子と化したスキュラの犬首をケルヌンノスの足元まで緩やかに紛れ漂わせた煙幕のカモフラージュはカリュブディスの気流操作で低い層に延ばしていた。「従属判定」により、キティーラ共に、言葉なしでも意思疎通が可能になっていた。



 巨大な6頭の首無し黒馬の牽引する馬車が轟音とともに残った黒煙を巻き上げて疾走すると、ケルヌンノスの肉片と霊気が馬車へと吸い込まれていった。


 あの偉丈夫が、混沌なる善たる冥府神、狩猟神ケルヌンノスであるなら、あの程度で消滅するとも思えない。冥府と狩猟の神とかヘカテーとかなりキャラ被ってるな。



 カリュブディスがグヴィンをアウルベアに放り投げ、ツナツルを抱え俺たちの馬車に乗せると、俺の元へとやって来た。


 戦いが終わり、こいつらに対し、いよいよ胸中では無茶苦茶に混乱している。



「ハープ悪かった…。磨いて…返すから。


――― 助けに来てくれて、本当に、たすかったから。


 ありがとう…。」



 それだけ言うと、いろいろと限界に達したのか、意識が遠のいていった。

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