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第22話 悪夢

 ツナツルの「他者治癒術」で治癒され、意識を取り戻した俺たちは頭がぼんやりとしている中、ツナツルから何が起きていたかを聞いた。


 魔物を選択した人間は耐えられずそういう結果になることも少なくはないだろう。ならば、なぜ選択するのだという話だが、あの時にここまで想像できるわけでもない。

 それは人間を選択したとしてもだ。異世界転生が一部でブームだといっても、実際に体験してみたいだとか、原始的な生活に耐えられるかという話になれば別になる。


 この世界で終わりを迎えることで彼らの悪夢から目が覚めて元の世界に戻れていればいいんだけれど。


 疲労とすでに暗くなっていたこともあり、そのまま馬車で食事をとり眠ることにした。



 翌朝、トワシスの吠える声に起こされた。


 土を蹴る重たい馬蹄を響かせ駆けてきたのは、見事な体躯をした真っ黒い巨馬で、その上に跨っているのは、昨日の赤ら顔のオーガだった。

 オーガは俺たちを見つけると声をかけてきた。

 事情を話すとオーガの都市「オルカツォト」まで一緒に行くかと言う。一応皆に確認し、同行してもらうことになった。


 オーガは名を『テンペスタ・ガラナータ』、巨大な馬の名は『ディーノス』というとのことだ。


 俺たちは念のため『キュプラ』、『ゴヴィー』、『ナツル』と名乗る。

 知っていれば普通に気付きそうなほとんど変わりのない偽名でも、僅かな違いさえあれば、それでガブリエスの魔法の効果はその相手に対し継続するらしい。



 降り始めた雨で視界が悪くなる中、テンペスタはオルカツォトについて簡単に教えてくれた。


 オルカツォトには、オーガ以外にもドヴェルグ、ゴブリン、グール、他にも雑多な種族が集まっているという。それ故か犯罪も多く、特に最近はよく分からない行方不明事件が多発しているので、用心するよう注意された。

 そして残念ながら大図書館と呼ぶような書物を集めた施設はないらしいが、かわりにテンペスタの知り合いの家がでかい書庫を持つので一応紹介してくれるという。


 そもそも、魔道書『ヘス・ヲ・ホーソア』は、「数多の書物に紛れ真にそれを求むるふさわしき者の前にだけ自然現れる」という。


 過去にその場所が大図書館であったことが多かったという話だが、魔道書が今現在に存在している場所ありきで人が訪れるのか、人ありきに場所が定まるのか、どっちなんだい?という話だよな。

 当たり前だが散々探し回ったあげく徒労に終わる可能性も十二分にあるのだ。

 まぁ、とりあえずは本が多く集まっているというところを回るか。ツナツルが襲われさえしなければ、観光のついでだと思って回ればいい。



 やがてオルカツォトに到着し市内へと進む。


 テンペスタから馬車を泊めて野営をできる空地の場所を教えてもらい、明日正午にまた都市入口辺りで会う約束をすると手厚く礼を言い別れた。


 何店かの商店をまわり必要な買い物を済ませると空地に馬車から天幕を広げ双頭犬達も雨除けできるスペースを作り野営の準備をする。俺も双頭犬も水に濡れるのはべつに歓迎なのだが。

 調味料が切れてるのに気付いたツナツルが食料雑貨店へもう一度行くというので、グヴィンがついて行く。


 店を出て、雨の中歩いていたグヴィンとツナツルが馬車とすれ違ったその瞬間、するりと手が伸び二人を車内へと引きずり込んだ。


 後にはグヴィンが抜ききれずに捨て落とされた片手半剣(バスタードソード)だけが残った。

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