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第14話 witch

 バングヘルムへ帰り、夕暮れにそのままメタリカーナ邸へ報告に訪れる。


「アウルベアを見つけ戦闘したが、手強くて俺たちの手には負えなかった。迷惑かけることになり済まないが、依頼は未達のまま降りさせてほしい。

 恐ろしく硬い羽根に覆われていたが、アウルベア亜種じゃないかと思う。」


 グヴィンが無骨な感じで伝える。


 ジョヴァンナは多少興味深そうな顔をすると口を開いた。


「わかりました。後はこちらで手配しましょう。

 君達にも負担をかけて済まなかった。ところで、せっかく足を運んでもらったついでに、紹介したい人物がいる。疲れているところ悪いが、この後、夕食を馳走させてほしい。」


 グヴィンは何か言葉を返すと、俺に確認する。


 ジョヴァンナが言葉を続けた。


「何、気を使うな。そのままの格好で構わないんだ。ほんとに寛いで。

 そもそも、私は今こんな恰好しているが、この姿は余所行きだ。トロルだぞ。

 まぁ。君達はまだよく知らないだろうがな。」


 ドレスの腰の辺りを摘むと、笑顔を見せる。


 俺たちは了承した。


 しばらく別室で待たされた後、夕食の席に案内される。

 ジョヴァンナとともに一人の少女が待っていた。


 色白の少女は綺麗な顔でニュムペーにも見えるが、黒髪の日本人のような風貌だ。東洋系の精霊もいるのかもしれないが、何者なのだろうか。


「私は『ツナツル』っていいます。今はここで言葉を習いながら生活してます。

 通じます?」


 少女は自己紹介した。英語で。


 俺たちは別室でこの展開を想定して打ち合わせしており、ジョヴァンナに異邦人だと認め、同朋がいれば正体を明かすことにした。

 ある程度、ジョヴァンナを信用した。


「自分は『グヴィン・ゴヴィン』と名乗っている。見ての通りゴブリンだが。今はこいつと狩人をしている。」


「俺は『キュラ・キュプラスキー』。こいつらと合わせてスキュラだ。」


 後ろで控えている双頭犬オルキュロスを振り返り紹介する。英語でだ。


「それで、彼女にはどう説明したんだ。言葉は?」


 グヴィンはジョヴァンナに一瞬目を向けると、ツナツルに聞く。


「一時的に魔法で言葉が分かるようにして貰って、あの夜の話と別の世界から来たってことと元の世界の様子について何度か話した。」


 やっぱりあったか、そんな魔法。詳しく聞きたいが、今はやめておこう。

 それにしても、別の世界から来たとか、よくそんな話を信じたもんだな。

 ジョヴァンナを一瞥する。


「キュラ様に『言語共有』の魔法をかけさせていただいて宜しいでしょうか?」


 グヴィンは、何故キュラ”様”なのかと思ったが、お願いする、と答える。


 ジョヴァンナは、俺に近づき何かを断ると、手を額に当て、呪文を唱えだした。


 魔法が完成した。ジョヴァンナがにっこり微笑みながら尋ねる。


「いかがでしょうか。この魔法は術者の習得している言語を一種類だけ対象にも使用できるようにします。」


 わかる。俺にもわかるぞ!


「これ、どのくらいの時間、効果あるんだ?」


 何となしに口に出た言葉が、ゴブリン語だった。


「24時間になりますね。では、彼女と私達の関係について、説明させていただきます。」


 バングヘルム近郊でスタートしたツナツルは、町に入るが言葉もわからず軽くトラブってる所をジョヴァンナの配下に保護されたとのことだ。


「初めは、ニュムペーだと思っていましたが、『言語共有』をかけ、話を聞くと、


 ”人間ヒューマン” だと言う。


 通常、魔物は人間を感知すると、恐怖と嫌悪を感じます。だけど、彼女と話そうが触ろうがそんな感じは一切しない。また、魔境深くにあるこの町に人間がいることはない。

 騙そうとしているのかと考えたが、『真意看破』の魔法を使った私を欺くのは並大抵のことではない。そして、魔力的にもニュムペーというより人間だった。

 それで、私は、彼女が人間である、と判断した。

 だが、特異な存在でもあり、メタリカーナ一家がツナツルに危害を加えるつもりはない。


 今後のことで、君達にも教えてほしいことがあるし、協力できればと思う。今回はお互い多少は警戒が解ければと思っている。よろしく頼む。」


 その晩は、メタリカーナ邸に泊まっていった。

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