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第10話 眼福か?

 朝になった。グヴィンと話したところ、狩りをしたいと言うので、付き合う。装備を整えるのに金がほしいとか。俺も必要になるだろうから好都合かもしれない。


 キャトルサンクにグヴィンを乗せてやる。

 ここにも、野兎やイノシシ、熊やその魔物がいるらしい。

 森に入り、双頭犬オルキュロスに探させる。アンドゥがすぐに嗅ぎ付けた。早足で追跡すると、ほどなく対象を発見した。

 大人の熊だ。こっちの生き物はでかいのが多い。


 グヴィン・ゴヴィンが自分に任せろと言う。


 別に眠らせてもいいんだぞ。そう思ったが、いいところ見せたいのだろうと放っておくことにした。

 グヴィンが片手半剣バスタードソードを構え、俊敏に走り寄る。

 熊もグヴィンに向かいながら上半身をおこし飛び掛かる。グヴィンが大きく跳んで躱しざま、上半身を鋭く回転させ首に剣を叩き付けた。熊の血飛沫が舞い、わずかな断末魔を挙げ、崩れ倒れた。

 俺はこれには唖然とした。御見逸れしました。


 慣れた手つきで縄を掛け、血抜きにかかる。


 作業しながら、ドヤ顔で冗長に喋りやがる。

「必中三連撃」は物理的に攻撃可能な位置に必中で、一撃なのに三度撃つ、理をおかしくするような技能だという。そしてこれは弓にも乗るとのこと。無茶苦茶や。武器屋で試したらしい。体への負荷がやはり有り、連発はできないということだが。

「集中の天稟てんぴん」は瞬間的に能力値を跳ね上げるそうだ。


 内臓を抜き、心臓、肝臓、胆嚢を効能の有りそうな巨大な葉っぱと布で丁寧にくるみ、毛皮を剥ぎ、背肉や腿肉などもつめるだけ背嚢リュックにつめるようだ。

 さんざんダメだしを食らいながら手伝わされた。おまえはマタギか何かか。二人がかりでも大仕事だ。

 双頭犬たちには終始威嚇警戒をしてもらった。

 

 そこからは急ぎバングヘルムに向かう。

 双頭犬の足のおかげで暗くならずに町が見えた。増築を繰り返しただろう防壁がある。町というより都市といってもいい堂々とした街構えだった。


 グヴィン・ゴヴィンの案内で、おそらく街の裏口の方から入り、割とすぐのところに肉屋兼と殺場はあった。グヴィンが店に入り、俺と双頭犬は外で待つ。

 俺はフード付きマントを被っているが、双頭犬は珍しいらしく目を引く。狼に乗るゴブリンとは何度かすれ違った。

 やがて、グヴィンが店から出てくる。小革袋ごと投げて寄越す。

 中に金貨10枚と銀貨10枚程入っている。

 手伝いの礼、追跡と運搬料だというが、貰い過ぎなんじゃないか一応聞くと、熊一頭の価値は金貨20枚くらいはあると言い、双頭犬のおかげで鮮度が良かったから妥当だと言う。

 割ときっちりした男だ。


 消耗品の補充に雑貨屋に行った。店主は老トロルだった。

 筋肉質で背が高いが痩せていて手足も長い。青い肌で鼻が細長く下あごから鋭い牙が飛び出ている。やはり耳が長く尖っている。ただ店主は気のいい男だった。

 双頭犬オルキュロスをオルトロスと思い珍しがっているようだ。たぶんもっと珍しいはずだ。

 グヴィンに間に通訳に入ってもらうと、エルフかと聞かれたが、ニュムペーだと言うと、何やら有難がっていた。

 眼福か?

 俺も火起こし道具や油にロープ、ポーション等の未知の類を説明を聞きながら買う。値引きしてくれるらしい。早くしろとグヴィンに急かされる。


 宿屋はでかいのを3体連れているので、やめておくことにした。

 町の外の森へ向かう。

 グヴィンの住処にしているところらしい。森の川辺に、なるほどそれなりの洞がある大木があった。俺と双頭犬には無理だが晴れているから問題ないだろう。

 薪を集めると、さっそく火を起こし、グヴィンがとっておいた熊の肉の調理を始めた。脂の乗った良い香りが漂う。調味料を買えばよかったと言うと、ちゃんとあるから安心しろと返された。


 雑貨屋で買っていた蒸留酒を小さな金属の杯に注いで手渡される。


「俺たちの出会いと、これからの冒険に乾杯だ。」

「乾杯。」


 照れながら、応える。こういうのがしれっとできるのが、日本人と違うのだろう。

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