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第1話 はじまり

 この世界がいつからあるのか。この世界が何なのか。人には知るすべなどない。 

 


  

 それは、ある日、前触れもなく始まった。

 眠りについた者達から、夢を見るように、語りかけるように、まぶたに言葉が浮かんだ。

 『能力値と天稟てんぴんにポイントを割り振りなさい。』

 夢心地の君は、大好きなゲームの感覚でわくわくしながら、項目を確認する。


 交渉術の天稟

 防御の天稟

 回避の天稟

 察知の天稟

 隠密の天稟

 集中の天稟

 罠解除の天稟

 鍵解除の天稟

 水泳の天稟

 

 自己治癒術の天稟

 他者治癒術の天稟


 歌唱の天稟 

 弦楽器の天稟

 管楽器の天稟

 打楽器の天稟

 鍵盤楽器の天稟


 剣術の天稟

 槍術の天稟

 棒術の天稟

 槌術の天稟

 斧術の天稟

 弓術の天稟

 投擲術の天稟

 射撃術の天稟

 素手術の天稟

 体術の天稟

 盾術の天稟


 遠視能力

 暗視能力

 頑丈能力


 騎乗の天稟

 調教の天稟

 狩猟の天稟

 農業の天稟

 漁業の天稟

 鍛冶の天稟

 木工の天稟

 裁縫の天稟

 建築の天稟

 錬金術の天稟

 作曲の天稟

 医術の天稟

 料理の天稟

 絵画の天稟


 筋力(Str) 2

 頑強(Tou) 3

 体力(Vit) 2

 知力(Int) 4

 精神(Men) 3

 魔力(Mag) 3

 器用(Dex) 4

 速さ(Agi) 3

 魅力(Cha) 3


 能力値の初期値は自分を評価したものなのだろうが、それを見て、何とも言えないような気持ちになった。

 多少知的で器用な貧弱な一般人という感じだ。しかし、割とこんな初期値の人が多いのかもしれない。

  

 所持ポイントは60ポイントとなっている。

 少しいじってみると、天稟を一つ獲得するには、10ポイント。

 各能力値を初期値から1伸ばすには、5ポイント、そこからさらに1ポイント伸ばすには10ポイント、さらに1ポイント伸ばすには15ポイントと必要なポイントが5ポイントずつ多くなっていく。


 問題となってくるのは、これから赴くであろう世界はどんなところなのかということ、あとは、ここで決めた天稟や能力値がここでしか得難いものか、後天的に獲得できるのか、といったところだ。


 正直、明確な説明がない以上、どうしようもないのだが、能力値に魔力とあることや、こんな、いわゆるスキルとステータスの設定みたいなことがあるんだったら、もうファンタジー的な世界で冒険するのだと決めてかかってもいいだろう。

 違っていたら、それならそれで仕方がない。


 次に、後天的に獲得できるかは、何となく、獲得は難しい、あるいは、天稟については不可能ではないか、という気がする。

 それは、能力値の数値が非常に小さいのでそう感じたのだ。能力値の初期値がこの5段階あるいは10段階程度の評価値で、なおかつ、数値を増加させるコストが結構な負担である。トレーニングで筋力等は伸びて当然だろうが、ムキムキに筋肉がつくようになって1つ2つ、あるいは3つ上がるか程度のように思える。

 そして、天稟という字面から、いってしまえば、生まれつきの才能なのだ。こっちはそうそう後から獲得できるものじゃないはず。どれほどの効果があるかは不明だがキャラの方向性を決めるうえでの重要度は高いだろう。

 

 隠密、回復、戦闘系、冒険するならとっておきたい。治癒以外の魔法の天稟ぽいものがないのが気になるが、ともかくこういう時間がとても楽しい。

 そして、際限なく想像を膨らませると、次から次へと疑問が浮かび、可能性を妄想し、袋小路にはまるのだ。


 はたして、この体験をするのが自分だけなのか、という疑問が浮かぶ。常々、ネットゲームで思うことだが、自分と同様の条件で開始したならば、当然、自分と似たような実力、あるいは、それ以上に強くなる者たちがいて当たり前だ。こういうのが心底好きな連中が本気で取り組んだら、むしろ溢れかえるだろう。


 また、自分視点のリアルな戦闘だったら、正直、本当に身を危険にさらして戦い続けて嫌にならないだろうか、もしくは飽きないだろうか、などとネガティブなことまで考えはじめる。そもそも、能力値の初期値でわかるように、自分で体を動かすのはそれほど好きなわけじゃない。


「どうするかなぁ。」


 ここは一つ、あまり人とは違う、それでいて自分が楽しめる方向性を模索するかと思い、思案を重ねた末、ようやく考えがまとまる。


 【弦楽器の天稟】、【作曲の天稟】、【歌唱の天稟】、魅力(Cha) 3→6


 少なくとも魅力が高ければ周りにちやほやされるんじゃないかといういやらしい願望を携えた、吟遊詩人系の天稟で揃えることに決めた。


 すると、画面が切り替わり新たな項目が映し出された。


 勢力選択          のこり 60秒

 ▶ 人間

   魔物


「はっ!?」

 

 勢力選択? 人間、は、ともかくとして、魔物?

 アバウトすぎひん? 魔族、とかではなく、魔物?

 しかも、また、説明らしきものもない。魔物ってのはどのへんを想定しているんだろうか。スライム、いや、虫けらみたいなのから、人など遥かに上回る叡智を持った古代種ドラゴンとかまでいろいろいるだろ。

 吸血鬼やライカンスロープあたりならまだアリなのかも知らんが、数が圧倒的に多いのは、知性なく本能のまま生きるみたいなものだろう。確率的にもそういった悲惨な結果になる可能性のが高いだろ。これは人間が安牌。

 

 その間もカウンターらしきものが時を刻んでいく。


 だいたい仮に魔物にしたとして、せっかく取った天稟はどうなってしまうんだ。体格が違えば武器や道具を使えず無駄になるじゃないか。戻ってそれらしい天稟に変えるのか?・・・いや、そもそも、戻ろうにも、戻れないぞ。


 そうこうするうちに、残り30秒台にまで進んでいる。


 ゲームとかの設計として、貴重なポイントをつぎ込んだ天稟やらを無駄にするようなことが果たしてあるのか?これは天稟を活かせる程度には、知性ある魔物の中から選ばれると考えてしかるべきでは。いや、仮に万が一、そうだとしても、魔物って間違いなく人間から攻撃されるだろ。敵対勢力なんだろうし。あと、想像だが文明なんてもんなさそうだし、そんなの耐えられないよ。絶対、人間勢力のがいいに決まってる。


 残り10数秒しかない。


 すでに間違いなく、冷静に、客観的に考えられてない。テストで終了間際に選択肢を選ぶ時いつもこうだった。

 

 違うのだ。もう俺の心は選んでいるんだ。魔物勢力を選びたいんだ。逆を行きたいんだ。愚かなんだ。人と違うことをした先に、きっと裏をかいて出し抜く自分だけのご褒美が待ってるって、憐れな妄想に憑りつかれているんだ。甘い考えだって何度痛い目をみても。直せないのだ。


 勢力選択          のこり  0秒

   人間

 ▶ 魔物


 めのまえがまっくらになった。

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