5話
「んーと・・・高校1年の頃かな」
「外見を見て好きになったのが最初だったの」
じゃあ、なんでまだ好きでいてくれるんだ?と聞こうと思ったがやめた
少し間が空く、こんな夜の公園でベンチには俺と七崎だけ
この瞬間だけは虫の声がミンミン、ミンミンと耳に残った。
やがて七崎は話をゆっくりと切り出すと
「なかなか、話かけられなくてね・・・」
「・・・」
「君は覚えてないと思うけど、勇気を出して声をかけてみたの」
「良かったら友達になってください!って」
「そしたらスルーしてどっか歩いて行くんだもん」
「そりゃ悪かったな」
思い出すと七崎は下唇を少し噛みしめる
今にも泣き出しそうなこのサインは今でも忘れてなかった。
そんな事あっただろうか、こいつが嘘をついているとは思わないけど全く覚えていない
その時はなんでか他人に対してイライラしてたからなんだろうか?
俺はそういう事は少しでも覚えておけばよかったな、と少し後悔の気持ちに駆られた
いやまて「後悔?」・・・よく考えると昔の俺からしたら全く思わない言葉だ。
変わりたいんだろうか、変わる事を拒むからこんなに悩むんだろうか、わからなかった。
「あの日は凄い泣いたよ、とっても悲しかった」
「・・・」
「・・・悪かったな」
「でもね、話しかけたりして段々素っ気ない人なんだなってなってきて」
「同時に自分を持ってる人なのかなって思ったりして」
「自分を持ってる?」
「うん、そうやって自分の意思を他人に示せるって事は」
「自分があるからそういう事出来るんだよね」
「嫌とか、好きとか、そういうのハッキリ他人に伝えられる事」
「私はそういうの表現出来ない子だったから・・・憧れもあったのかも」
俺は「違う、俺に芯なんてない」と自分を否定しようと話しかけたら言葉を遮られた。
「だからおーきく笑ったり、しっかりと相手に伝えたりとかして」
「私は変わってみようかなって、君と話す度に思えたの」
「全然伝わらないと思うけど、誤解したまんまでごめんね」
「・・・」
「・・・」
「あのね、好きなの、君が迷惑じゃないのなら」
「この気持ちだけ―」
今度は俺が七崎の言葉を遮った。
「待てよ」
「俺もさ」
「自分の気持ちがわかんなくてさ」
「お前が好きなのかもわかんねえんだ」
「でもそれって当たり前だよな、自分の気持ちに対して向き合ってねえんだもん」
「言葉や行動で意思表示しなきゃ伝わらねえよな」
攻撃的な言動や行動、全てにおいて俺のワガママなんだ。
「お前が俺の事をわかろうとしてくれたように、俺もお前を理解していかないといけないんだ」
クラスメイトや家族、俺にしてくれた事は全部そいつらのお節介なのかもしれない。
「俺は勉強もする意味がわからないし、なんで大学生になってるのかもわからない」
「何だったら、これから先の事もわかんねえ」
でも俺の、俺が見方さえ変えれるなら―
「これからも、何もかもなーんにも、わかんねえと思う」
変わる事が出来るなら、変わっていこう
今、1人が好きな理由、1人を愛してる理由がわかった。
「七崎」
こいつみたいになれるなら、なってみたいと思った。
「好きだ、あの時から変わらず話かけてくれてありがとな」
もう自分からは逃げず、真剣に向き合う事を決めた
その時、ほんの一瞬だが頬に感じる風が俺を優しい気持ちにさせた。
続く
次で終わります、短い間でしたがありがとうございました。