第4部第1話[氷の国の女王様]
私には、好きな人が居た。
我が国の騎士。
私は彼の事が好きだった。
だけど、その恋が実る事は無かった。
身分の違い。
彼はそう言って、私の愛を受け入れてくれなかったのだ。
やがて、私に婚姻の話しが持ち込まれる。
お相手は、隣の国の第二王子。
既に第一王子が跡取りに決まっており、第二王子を婿入りさせ、我が国と親交を得ようと考えているのだろう。
お父様もこの婚姻を喜んでいる。
だけど、私は……。
数ヶ月後。
私は第二王子と結婚した。
整った顔立ち、優しい性格。
私は彼との生活に満足している。
一年後。
彼との子を身籠る。
彼は乳母に任せず、自分達の手で子供を育てたいと言う。
私も彼の意見に賛成だ。
何故ならこの子は、愛しい王子との子供何だから。
数年後、私は城中の鏡を割った。
奴ら、いや、私が問いかけてくるのだ。
本当に王子を愛しているのかと。
だから、私は答えてやった。
愛していると。
それでも、鏡の私はしつこく問いかけてくる。
だから私は城中の鏡を割った。
割ったのだ。
数日後。
私はまだ私に問いかけてくる。
もう鏡は無いと言うのに。
鏡が無くとも氷がある。
氷に映る自分が語りかけてくるのだ。
数週間後。
私の言った通りだった。
騎士様は私の告白に応じてくれたのだ。
夫も好き、騎士様も好き。
人は愛が深い生き物なのだ。
数日後。
夫に騎士様の関係を打ち明ける。
私が言うには、初めに愛していると言えば許してくださるとの事。
流石、私だ。
夫はどんな私も愛してくれると言ってくれた。
さあ、皆んなにも幸せを分けてあげなくては。
此処は氷の国。
愛を育む場所。
この国で囁かれた愛は永遠になる。
さあ、皆んなも愛を囁いて、私の様に幸せに……。
第1話 完




