第27話[スタリエの頑張り後編]
スタリエは少女の所へ歩み寄る。
「来るな」
先程とは違い、少女とは思えない程の低い声。
それでもスタリエは怯える事も無く少女に近づいて行く。
「神獣を殺したいのなら好きにすればいい」
「この現状を招いたのは、奴何ですから」
「だけど、そんな事をすればあなたは苦しむ事になるわ」
「だから……」
「黙れ黙れ黙れ」
「邪魔をするならお姉ちゃんも殺しちゃうよ」
スタリエに闇が襲いかかる。
だが、スタリエは動じない。
体に纏わり付く闇を物ともせず、スタリエは少女を抱きしめた。
「それは無理よ」
「だって私は死ねないんだもの」
魔王を倒し、この子の様な境遇の子共達を救う。
その為にも絶対に死ねない。
熱く語るスタリエの目から涙が溢れ落ちる。
そして、再び少女を強く抱きしめた。
「ごめんなさい」
「私がもっと早くに此処に来ていたら……」
スタリエの脳内に少女との楽しい旅が思い描かれる。
少女を助け笑い合い、日菜達と旅を続ける。
少女の話しを聞いた勇者が村に乗り込み、怒鳴る姿が目に浮かぶ。
きっと、彼女は幸せになれただろう。
だけど……。
「本当にごめんなさい」
「あなたを救えなくて……」
そう叫び泣きじゃくるスタリエの頭を少女が撫でた。
「私もごめんなさいだね」
「憎しみに負けてお姉ちゃんを傷つけちゃった」
「それに……」
少女は涙を浮かべながらスタリエに微笑みかけた。
スタリエや神獣に纏う闇は消え、少女は光に包まれている。
「私はお姉ちゃんに救われたよ」
「ありがとう、お姉ちゃん」
彼女は笑顔のまま消え、残されたスタリエは涙を拭い、空を見上げていた。
第27話 完




