表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/367

第25話[スタリエの頑張り前編]

気がつくと見知らぬ森の中にいた。

頭を抑え、スタリエは記憶を辿る。

確か次の町へ向かう途中、森の中で霧が濃くなって……。

そうだ。

危険だから休憩していたんだった。

それで突如、魔物に襲われて馬車の荷台が……。


「そうか緩い崖から落ちて、馬車から放り出されたんだっけ」


回復魔法を自分にかけ、少し休憩する中、一人の少女が顔を出してきた。


「お姉ちゃん、こんな所で何してるの?」


スタリエは事情を説明し、村の場所を少女に尋ねた。

子供が居るのなら、近くに村があるはずだ。

そう考えたからだ。

だが、少女は首を横に振る。


「ここはね、生贄の人間しか入っちゃ駄目な場所なんだよ」

「お姉ちゃんも生贄に選ばれたの?」


スタリエは少女の頭を撫で一人思う。

生贄か……、怖い話しや昔話、こういった異世界ではよく聞く話しだ。


「違うわ」

「ちょっと迷い込んじゃって、仲間達の所へ帰らないと」


それを聞いた少女は少し悲しそうな表情をする。


「そっか、お姉ちゃんは何か凄そうだもんね」

「私とは違う……」

「私はね価値が無い人間なんだって、価値がないから生贄に選ばれたって言ってたの」


「そう」


スタリエはそう言うと立ち上がった。

少女は俯き、何処かへ行こうとする。

そんな少女の手を、スタリエは掴んだ。


「あなたに価値があるか無いか何て私には分からないし、興味が無いわ」

「でもだからといって、あなたが生贄に選ばれたのには納得行かないし、気分が悪い」

「だから私と一緒に来なさい」

「きっと、日菜達も暖かく迎え入れてくれるわ」


ずっと価値が無いと言われ続けてきた。

誰からも必要とされなかった。

そんな自分に一緒に来いと声をかけてくれた。

少女は嬉しくて、目から涙が溢れ落ちる。

だけど……。


「一緒に行けないよ」

「生贄は私にしかできない事だから」

「価値の無い私にとって、唯一価値がある事だから……」


そう言って彼女はスタリエの手を振り解こうとするが、スタリエは力強く彼女の手を握って離さなかった。


「さっきから価値価値って価値がなきゃ生きてちゃいけないって訳?」


「でも、私が生贄にならないと神様が怒って、村の人を皆んな殺しちゃう……」


「だったら私がその神様を倒してあげる」


「えっ」


「神様を倒して生贄無しで村を守る様に説教をしてやるわ」

「だからもう、そんな事は言わないで」


少女はスタリエに抱きつき、泣き始めた。

少女が落ち着くまで、スタリエは少女の背中を優しく撫でてあげる。



第25話 完

第26話へ続く。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ