第24話[これが修行の成果だ]
日菜はあれから毎日、修行に明け暮れた。
雨が降ろうが雷が鳴ろうが、日々頑張る事、一か月。
遂に、火炎柱の強化に成功した。
仲間達を集め、強化された火炎柱を披露しようとする日菜に緑が実験体になる事を名乗り出た。
「ずるいよ緑ちゃん、ここは私に任せて」
「いえ危険ですので此処は私が、強化されているのであれば死んじゃいますよ」
「平気、平気」
「日菜ちゃんに殺されるのなら本望だよ」
そんなやり取りを見て、日菜は思った。
この二人、絶対私の魔法で死ぬ事は無いと思っているのだろうと……。
「いや、万が一……、あっ、間違えました」
「えっと……、日菜殿の努力が報われたのなら、きっと火炎柱は最強の魔法になっている筈ですから……」
「えっとだから……」
一生懸命、勇者を説得しているのは分かるけど、万が一って……。
緑ちゃん、ボロが出てるよ。
結局、緑相手に試し撃ちをする事になった日菜。
緑の体に念入りに火属性耐性塗り薬を塗り、日菜は呪文を唱えていく。
緑を包む炎の柱。
以前より火の量が増し、迫力もある。
そして緑は……。
無事だった。
全くの無傷。
「あの、トイレットペーパー……」
日菜は叫び、緑の話しを遮って耳を塞いだ。
あれだけ努力したのに、トイレットペーパーだなんて。
「あっ、でも熱風は凄かったですよ」
「火に耐性があるので全然熱くは無かったですけど……」
スタリエが緑の口を後ろから塞ぐ。
「日菜、最強魔法っていうのはラスボス直前に習得するものでしょ」
「まだ幹部も倒せていないこの状況で、習得できないのは仕方がない事、だからいつまでも嘆いて無いで、立ち上がりなさい」
「立って前を進みながら、着実に強くなっていくのよ」
スタリエの力強い言葉に励まされ、スタリエの手を借り、立ち上がる日菜。
完全に出番を持っていかれた勇者は悩み、そして口を開いた。
「日菜ちゃんは、側に居るだけでいいよ」
「だって、私、日菜ちゃんの事が……」
顔を上げ、告白をしようとする勇者だったが……。
日菜達は既に帰っており、勇者は慌てて皆んなの後を追いかけるのだった。
第24話 完




