第18話[黒騎士再び]
遠くからでも見える黒煙。
ただならぬ予感にララは馬車を止めていた。
「どうします?」
今行けばまだ間に合うかもしれない。
だがそうなれば魔物と必ず戦闘になるだろう。
場合によっては強い魔物と遭遇する可能性だってある。
このまま見てみぬ振りだってできる。
そんな中、勇者が答える。
「もちろん、助けに行くよ」
「だって私は勇者だもん」
「分かりました」
ララはそう言うと、馬車を走らせた。
町に着き、暴れている魔物達を日菜とララが魔法で一掃していく。
「こいつら、弱い」
運が良かったのか、魔物達は弱く順調に数を減らしていった。
日菜とララが魔物を討伐していく中、緑は町の人達を集め避難させて行き、スタリエは回復魔法を使い、怪我人を治療して行く。
そして、勇者はボスを捜していた。
「また会ったな」
「勇者、お前だけは絶対に許さん」
黒い鎧、あの時の黒騎士だ。
日菜は説得というのを学んだが、先程の勇者に対する恨みの言葉を聞いて、諦めた。
大剣を手にする黒騎士に対して余裕のある勇者。
「これはこれは、強キャラで出てきたのに、雑魚キャラ扱いの黒騎士さんじゃないですか」
「そこら中、火が立ち込めて暑くないっすか?」
「どうかこれで汗を拭いて下さいよ」
そう言うと勇者は黒騎士にある布を握らせた。
それを広げる黒騎士。
汚い〇〇〇。
「いるかボケ」
黒騎士は地面に汚い〇〇〇を投げつける。
そして、手から匂ってくる悪臭。
「くっさ、何これ、くっさ」
背中から鳥肌が立つ。
日菜もスタリエもララもドン引きする中、緑が叫び黒騎士に刀を向け襲い掛かった。
「黒騎士ぃ」
緑の攻撃を大剣で受けてしまい、大剣が折れる。
ダメージを与えられないのに、緑の攻撃が止まらない。
メルヘン王国、魔物達の団。
それらを騙し苦しめた黒騎士は緑にとって憎むべき相手。
日菜は何故あんなに緑が怒っているのか分からないスタリエに経緯を説明した。
「あんたって、最低ね」
スタリエの言葉に笑いが止まらない黒騎士。
「私は魔王様に仕える身、最低なんて言葉、私にとっては最高の褒め言葉だわ」
腹を立てる緑を抑え、勇者が言う。
「そう、ならもっと褒めてあげる」
「あんた、臭いわね」
「はっ?」
勇者の言葉に戸惑い、黒騎士は思わず自分の体臭をチェックした。
「別に臭く無いけど」
「つか、訂正してくれない?」
意外にも気にしていた。
それを見て、勇者が笑う。
「日菜ちゃんの匂いは愛おしいけど、お前のはただの悪臭だ」
臭いキャラ扱いされた日菜は勇者の首を片手で締め上げるのだった。
第18話 完




