第10話[頑張り]
炎天下の中、私は砂浜の砂を掘っていた。
拭いても拭いても吹き出す汗。
それでも私は砂を掘り進めていく。
クエストを受ける際に聞いた話しによると、この砂浜には宝石貝なるものが生息しているらしく、何でもその貝が持つ真珠が宝石の様に綺麗らしい。
ただ、メスの個体にしかそれは無く。
ただでさえ宝石貝を見つけるのは難しいのに、尚且つメスを引き当てなければならない為、誰もやらないらしい。
私はその宝石貝の真珠を見つけ、スタリエさんにプレゼントするつもりでいた。
がっ、探し始めて三時間。
私はあまりの暑さに倒れてしまった。
「日菜殿、大丈夫ですか?」
緑ちゃんがバケツに水を汲み、それを私にかけてくれる。
「日菜殿、水臭いですよ」
「私も手伝います」
そう言って、スコップを持つ緑ちゃん。
これは自分が勝手に始めた事で、緑ちゃんには迷惑かけられないと思い、私は断ろうとしたのだが……。
「日菜殿、見つけました」
ものの数分で私が掘った穴の倍を掘った緑ちゃん。
流石、高ステータスなだけはある。
私は三時間かけて頑張った自分が情け無くなり、何だか泣けてきた。
そういった感情を抱きながら私と緑ちゃんは、貝の蓋を開け中を覗いてみる事に。
結果はオスの個体だったらしく、中には何も無かった。
私達はがっかりしながらも、次を探す事にした。
緑ちゃんの手を借りて探すが、見つかるのはオスの個体ばかり、やがて日が暮れ私達は帰る事にした。
「あれっ、そう言えば勇者は?」
「昼に海辺で女の子に声をかけてましたよ」
あいつ絶対に殺す。
そう思い、私は持っていたスコップを捻じ曲げた。
「流石は日菜殿、スコップ曲げができるなんて凄いです」
この日、勇者は王国に帰らなかった。
第10話 完




