第31話[死体]
あの日、彼女は既に死んでいた。
恐らく、ここまで運ぶ途中で息絶えたのだろう。
可哀想な人間の少女。
私は彼女を生き返らせる事にした。
といっても、正規の方法では無い。
私の能力は死体を操る事。
この能力を使い、指示を出さずに放置しているだけで、彼女は自分で考え、自分で動いてくれる。
私が魔力を送り続けている限り彼女は生きていられるのだ。
そして、今。
彼女だけじゃ無く、団長やカミガオウまでもが死んだ。
「大丈夫、私ならやれる」
「こいつらを倒して、皆んなを生き返らせれば問題無い」
愛しの仲間達。
私達の境遇は最悪でも、彼女らに出会えた事は最高だった。
魔王軍に入り、のし上がる。
団長は私達を守る為にそう言っていた。
あの優しい手を差し出して、変わらずにいつまでも優しいままで、弱い私達の前に立ち、私達を引っ張ってくれる。
「私達が何をしたって言うのよ」
「ただ皆んなで笑顔になって幸せに生きていきたい」
「ただそれだけを願っていただけなのに……」
「私達が魔物だから、だから私達を殺すの?」
「それだけの理由の為に……」
魔力を解放し、辺りを凍らせる。
このままじゃ、皆んなが死んじゃう。
そう緑が絶望し、諦めかけた時だった。
突如炎が現れ、それらを溶かしていった。
第31話 完




