第29話[最高の仲間達]
私は弱かった。
周りにイジメられ、魔物が現れた際は私を置き去りに、村の人間達は逃げて行った。
そんな私を救ったのが、皮肉にも魔物だった。
カミガオウ、狼系統の魔物のこの子が、幼い私を咥え、あの惨劇から救ってくれたのだ。
そして、この魔物達の団に拾われた。
皆、弱い者同士が集まり、お互いを高め合い、強くなって行った。
団長には感謝している。
人間である私とカミガオウを暖かく受け入れてくれたんだから。
もちろん、他のみんなにも感謝だ。
気さくに話しかけてくれて、皆んな良い奴ばかり。
それなのに……、それなのに……。
「言え、その布袋の中身は何だ」
湖の魔物。
その言葉を聞いて、怒りが込み上げてくる。
何故なら、あそこに居たのは団長……。
くっ、コイツらまさか団長を殺しやがったのか?
だとしたら絶対に許さない。
私はカミガオウに指示を出し、連携をとりながら、奴らの首を狙う。
だが、敵わなかった。
私達の連携より、コイツらの強さの方が勝っている。
あんなに強くなろうと頑張ってきたのに……。
結局、私は弱いままなのかよ。
カミガオウも倒れ、生きているのか死んでいるのか分からない状態。
悔しさで私の視界が歪む。
「大丈夫、人間は殺さないから」
横たわる私にそう話しかけてくる勇者。
そして、もう悪さをするなと言い残し、私に背を向けた。
これはチャンスだ。
仲間達の仇、取らせて貰う。
そう思い、痛みに耐えながら私は立ち上がり、勇者の背後を襲った。
そして……。
剣が私の体内に突き刺さり、私は口から血を吐き、そのまま徐々に意識がなくなっていった……。
第29話 完




