第28話[魔物のアジト]
振り向くとそこには勇者が立っていた。
「さ……、三万ベルですか‼︎」
目の前に置かれたお札に食い付く水の国の騎士団員。
即座に契約して、彼女は傭兵として仲間に加わった。
「勇者殿……」
俯き、呟く緑に勇者は謝った。
そして、水の国の騎士団員である彼女の名前を尋ねる。
「自己紹介が遅くなりましたね」
「私の名前は、ララーナ・クラフィネスです」
「ララと呼んで下さい」
こうして、三人は話し合いを始めた。
王国内で起きている事が本当に魔物の仕業ならば、きっと何処かで拠点を構え、様子を伺っている筈、そう睨むララ。
拠点を構えるなら洞窟などがいい。
雨風を凌げて、尚且つ寝床も簡単に作れる。
ましてや、洞窟内の雰囲気は魔物達と相性がいい。
そう推測して、ララは地図を広げた。
「洞窟は大体、三つあります」
「北の森の洞窟、東の丘の洞窟、西の湖の洞窟」
「話しを聞く限り相手は複数匹、洞窟全てをアジトにしている可能性があります」
「どうします?」
「丁度三人だし、手分けしますか?」
「いや、ここは確実に一つずつ潰して行こう」
緑ちゃんだけじゃ倒せないだろうし……。
話しがまとまり、三人は魔物退治へ洞窟に向かった。
まず初めは湖の洞窟。
綺麗で透き通った湖、その近くに洞窟があった。
三人はその洞窟へたいまつを持ち、中へ進んで行く。
やがて、話し声が聞こえ、三人は息を殺し近づいた。
「ああ、早く魔王軍の幹部になりてぇなぁ」
「そしたらアイツらに楽させてやれるのに……」
酒を飲み、魚を食らう魔物。
勇者は不意をつき、魔物の首を剣で切り落とした。
「意外と楽だったね」
魔物の頭を手に持ち話す勇者。
「グギギ、テメーら何もんだ?」
頭だけとなった魔物が喋りだし、勇者は悲鳴をあげ、頭を壁に何度も打ち付けた。
「ちょっと勇者殿、落ち着いて下さい」
「もう、死んでます」
勇者はハァハァと息を切らしながら、原型を留めていない魔物の頭を布袋に入れた。
「よし、後二つ」
「っとその前に……と」
湖で鎧に付着した魔物血液を洗い落とし、三人は残りの洞窟へと向かって行った。
第28話 完




