第25話[冷酷なメルヘン王国]
倒れる日菜を見て、クスクスと笑うお姫様。
その様子は異常で、勇者はお姫様を睨みつつ、日菜に緑樹の薬を飲ませていた。
「姫様何がそんなに面白いのですか?」
「何がって、毒林檎を食べて倒れるから……」
再び笑い始めるお姫様を唖然と見つめる緑。
勇者はそんなお姫様に罵声を浴びせ、日菜を抱え、部屋から出て行った。
「姫様……、どうしたのです?」
「何故、こんな事を……」
緑の問いに笑顔で応えるお姫様。
そして、お姫様は緑の手を繋ぎ処刑場へと案内した。
「剣士様、これから面白い事が起こりますわ」
そう、お姫様が言うと、緑の前に囚人が連れてこられた。
「この方は我が国が誇る林檎の果樹園の林檎を一つ、腐らせてしまったという大罪を犯しましたの」
「よって、これから処刑されますのよ」
子供の様にキャッキャと喜ぶお姫様を見て、緑は顔を青くし、必死に死刑を取り止める様に周りに訴えかける。
だが、この場に居る誰もが緑の言葉に耳をかさなかった。
処刑が終わり、緑は一人、処刑場から出て行く。
緑の耳の奥に残るお姫様の笑い声。
仲良くなれると思っていた。
それなのに……。
涙ぐむ緑の前に一人の老婆が現れた。
「旅のお方、どうかお姫様を、王様を誤解しないで下さい」
「お婆ちゃん……」
「どうかお願いです、この歳老いた老婆の話し、老人の戯言と言わず聞いていって下さいませんか?」
「話しとは?」
老婆は緑を連れ、城下町の老人達が集う集会所へ案内した。
第25話 完
第26話へ続く。