第24話[メルヘンの国のお姫様にご注意を]
辺り一面、木々に囲まれた場所に一つの国がある。
日菜達は一週間かけてこの場所へ辿りつき、三人は城下町で宿を取り、お風呂へ入っていた。
流石に一週間もお風呂に入っていないので気持ち悪く、これから謁見する予定の王様達にも申し訳ない。
数時間後、お風呂を堪能し終えた三人は王様に会いに、お城へと向かった。
兵士に謁見の間に案内されながら辺りを見回す日菜達。
城内には池や芝生、草木などがあり、天井から太陽の光を浴びて、とても神秘的に見える。
そして、謁見の間に着くや否や、勇者が興奮し、お姫様に釘付けとなった。
ピンクのお洋服に美しい金色の髪。
整った顔立ちでとても愛らしい。
まるで童話に出てきそうなお姫様だ。
「どうか、卑しい私をお踏み下さい」
土下座して懇願する勇者に呆れる日菜。
どうせ相手にされないだろうと思っていると……。
「まあ、気持ち悪い」
そう言ってお姫様は靴を脱いで、勇者の頭を踏み始めるではないか、それを見て日菜は目玉が飛び出しそうな勢いで驚く。
「靴下が汚れてしまいましたわ」
「欲しいなら千ベルを置いて、卑しい私にお恵み下さいと懇願なさい」
言われるがまま、千ベルを置き、懇願する勇者。
そんな勇者に靴下を投げ、お姫様は千ベルを拾った。
「っと、こんな感じでよろしかったですか?」
「本で描かれる勇者様と初めてお会いしたので、緊張して上手くやれてるか心配です」
「フッ、最高でしたよ」
満足気の勇者を見て、日菜は「まあ、いいか」と呟くと、王様と話しをし始めた。
しばらく王様と話し、日菜は伝説の鎧について王様から情報を得る事ができた。
何でも王様の話しによると、水の国にドラゴンの牙から作られた鎧があるそうで、魔王を討伐する気なら必ずそこへ寄った方がいいとの事。
それを聞いた日菜達は、次の目的地をそこに決め、王様達に翌日、旅立つ事を告げた。
そして宿屋へ帰ろうとする日菜達を姫様が呼び止める。
どうやら、日菜達の旅の話しが聞きたいらしく、日菜は快く了承すると、お姫様の案内の元、お姫様の自室へ案内された。
日菜達の話しを楽しそうに聞くお姫様に緑が照れながら話しかける。
「その、姫様は本が好きなのですか?」
「はい、本と言うより絵本が大好きです」
それを聞いた緑は、お姫様の耳元でゴニョゴニョと話し、お姫様は手を叩き「ありますよ」と言って緑に笑顔を向けた。
「ああいった絵本、剣士様もお好きで?」
頬を赤く染め頷く緑。
その様子を微笑ましく眺める日菜。
絵本だなんて二人にピッタリだな。
フフフ、可愛らしい。
二人は私の癒しだよ。
そんな事を思いながら日菜は紅茶を啜る。
「はい、こちらです」
そう言って出されたのが、どすこいマッチョの危険な練習。
それを見た日菜が紅茶を吹き出して慌ててお姫様から本を奪った。
(何で異世界に相撲とレスラーのBL本があるの?)
(つかこれ、絵本じゃなくて漫画じゃん)
(とにかく、緑ちゃんには見せない様にしないと……)
そう思いながら、日菜は緑にこういう本はまだ早いと注意する。
「お姫様も読んでいるのに、どうして私だけ……」
「私も読んで、どすこいしたかったのに……」
今にも泣きだしそうな緑を見て、日菜は心を痛めながらもお姫様に危険な練習を返した。
「あの、同じジャンルでも、もう少し優し目の奴をお願いします」
日菜にそう言われ、お姫様は少し考えると別の本を緑に差し出した。
それをお姫様と緑とで仲良く読む。
鼻血をダラダラと流す緑に少し不安になりながらも、日菜は布を緑に渡し、鼻を押さえるよう指示をだした。
やがて、お姫様のお部屋におやつの林檎が運ばれてくる。
「さあ、皆様、おやつタイムにしましょう」
個々の前に置かれた林檎。
できれば皮を剥いて切って出して貰いたかったなと思いながら日菜は林檎を丸かじりする。
するとどうした事か、日菜は林檎をボトリと落とし泡を吹いて倒れるでは無いか。
やがて白目を剥き、日菜は危険な状態になっていく……。
第24話 完
第25話に続く。




