第19話[浄化の炎]
宿屋に向かっている最中、私は頭上を飛んでいる鳥に芸術品を落とされていた。
垂れる芸術品に焦り、私は急いで宿屋に向かい、宿屋の女主人にお風呂を沸かしてくれる様頼んだ。
「分かりました」
「すぐに沸かしますんで、お待ちの間にお食事でもどうですか?」
「今なら、オープン三周年記念と致しまして無料でご提供できますよ」
なるほど、三周年記念か。
ご飯が無料で食べられる何て凄い。
などと考えられる余裕も無く、私は女主人を鼻で笑った。
「こんな状態で料理が食べられるとでも?」
「失礼しました」
そう言うと女主人は慌ててお風呂の用意をしにお風呂場へ向かって行った。
全く流石に芸術品が垂れている中、ご飯何て食べていられないよ。
変な人だなぁ。
お風呂場にて。
「チッ、何で顔に芸術品何てつけてんだよ」
「お陰で毒入り料理が無駄になってしまったでは無いか」
「だが私は頭脳派な魔物、まだ策はある」
「この風呂に毒を入れ、毒風呂に浸からせてくれるわ」
一人呟きながら女主人は口から毒液を吐き出し、それを風呂釜の中に注いで行く。
「あの、すいません」
突然現れた日菜に驚き、女主人は舌を噛み怪我をする。
「この温泉の素も入れていいですか?」
口を両手で塞ぎ、頷く女主人。
日菜はそれを確認すると、瓶の蓋を抜き、温泉の素を風呂釜の中に入れた。
するとどうだろうか、毒液と温泉の素が混ざり合い、爆発が起きてしまう。
日菜の体は吹き飛ばされ、宿屋から数メートル先へ飛ばされて気を失い倒れてしまった。
実は日菜が持っていた温泉の素、過去に緑と出会ったあの温泉のある村のお土産物で、その温泉の素の成分に聖なる水が使われていた。
毒を聖なる水が浄化し、その際爆発が起きたなどと知らない日菜は、目を覚まして痛む体を押さえながらボソリと呟いた。
「何で爆発したの?」
日菜は混乱しながらも、燃える宿屋に女主人を助けに走って向かうが……。
第19話 完




