第18話[優しさ]
「日菜殿、待って下さい」
緑は日菜に追いつくと妬いているのか尋ねた。
二人は大の仲良し、そんな二人の仲を引き裂こうと現れた恋のライバル。
きっと、日菜殿の心中は穏やかでは無いだろう。
そう考えていた緑だが……。
「いや、妬いてないから」
「寧ろ、お互いに愛しあってくれるのなら、それでいいから」
日菜の答えにしばらく考え、そして緑は手を叩き、独自に納得する。
「寝取られって奴ですか」
「なるほど、愛し方も人それぞれ何ですね」
日菜は溜め息を吐き、反論する気も失せたのか宿を取りに向かった。
「あっ、待って下さい」
その後を追おうとする緑の前に、お婆さんが倒れ、緑は親切心からか、お婆さんに声をかけた。
「大丈夫ですか?」
「私ももう歳かねぇ」
「ろくに歩けやしなくて」
「旅の者、声をかけて下さりありがとねぇ、嬉しかったよ」
そう言って、立ち上がろうとするお婆さんを緑が支える。
「良かったら、おぶりましょうか?」
緑の優しさにお婆さんは泣いて喜び、好意に甘える事にした。
「どちらまで?」
お婆さんをおぶり、そう尋ねる緑。
お婆さんは目的地の場所を伝えながら、手には動物の骨を削り尖らせた物を握っていた。
(全く無用心な奴め、この骨には大量の毒が塗ってある)
(勇者の仲間よ、安らかに……)
お婆さんが手を振り上げ、そして……。
「眠れぇ」
振り落とす。
「えっ、眠たいんですか?」
緑の皮膚を硬く、尖った骨は皮膚を貫く所か折れてしまった。
それを見たお婆さんは目玉を飛び出して驚いてしまう。
「いや、この辺で結構だよ」
「ありがとねぇ」
慌てて目玉を回収し下ろしてもらうと、お婆さんは全速力で宿屋に向かった。
仲間に毒が通じない事を知らせなければ、そう思い仲間が居る宿屋に向かったのだが……。
「何が……、あったのよ」
何故か宿屋は燃えていた。
第18話 完




