第17話[モテる勇者]
日菜達は更に旅を続け、テルフエユ村に到着していた。
ここでは、過去に勇者が誕生したと噂されていて、勇者について話しが聞けるらしい。
そんなテルフエユ村に一歩、足を踏み入れた時だった。
一人の村娘が勇者の腕にしがみ付いてきた。
「勇者様ですか?」
かなりの美人だ。
村娘にデレデレする勇者を無視して、日菜は宿をとりに行く。
そんな日菜の後を緑が追いかける。
「勇者様、二人きりになりましたね」
村娘に腕を引っ張られ、茂みへと連れて行かれる勇者。
そして驚く事に、村娘が服を脱ぎ始めたではないか。
「勇者様、恥ずかしいので服を脱ぎ終わるまで後ろを向いて下さいませ」
普段なら息を荒げ従うのだが……。
この時の勇者は違った。
息も荒げないし、村娘の指示にも従わない。
勇者は黙って剣を抜き、村娘に向けて剣を構えた。
「悪いけど、あんたが魔物だって初めから気付いているから」
「何の事でしょう?」
村娘が勇者から視線を逸らす。
だが、勇者は逸らさない。
いや、あの魔性の胸から視線を逸らす事ができないでいた。
「くっ、何故私が魔物だと分かった」
「それは勇者の勘さ」
そう言ってカッコつけるが実際は違う。
匂いフェチでもある勇者は抱きつかれた瞬間に村娘の髪の匂いを嗅いでいた。
あの緑でも見逃す速さで。
そして直ぐに理解した。
これは人間の女性の匂いでは無いと。
だが、日菜達には話せない。
もし、日菜達にこの事を話してしまえば……。
「えっ、人間の匂いじゃない?」
「何言ってるの、普通に引くんだけど」
などと、言われドン引きされてしまう。
冷たい視線でそう言われるのは悪くは無いのだが、この前の覗きの一件から、これ以上引かれるのはマズイ。
そう思い、勇者はあえて罠にかかったのだ。
「流石勇者だな」
そう言うと村娘は魔物へと姿を変えた。
予想以上に顔は可愛らしく、露出度も高い。
それに何より、胸の形が凄く良かった。
「なるほど、Cカップって所かな」
勇者はそう言うと剣を鞘へ収めた。
「ふん、お前相手に剣を使うまでもない」
「素手で相手になってやる」
そうカッコ良く言うが、勇者はただ、ナイスバディの魔物の体を堪能したかっただけである。
「くっ、馬鹿にしやがって……」
そう言いながらも魔物は一歩後ずさる。
変に勇者がカッコつけたせいで、強者感が出てしまい、魔物を余計に警戒させてしまったのだ。
おまけに、魔物は不意打ちで毒を塗ったナイフを使い、勇者を殺すつもりでいた。
こうやって面と向かい、戦う予定は無かったのだ。
「チッ、覚えていろ」
そう言って魔物は走って逃げた。
「あっ、待って」
勇者はそう言うと魔物を全速力で追いかけた。
魔物の体を目的に走る勇者。
そんな勇者を何だか怖く感じる魔物。
「何で追いかけて来るの?」
「謝るから、謝るから追いかけて来ないで下さい」
魔物は泣きそうになりながらもそう叫ぶ。
だが勇者は……。
「うぉー、絶対に捕まえる」
下心満載で必死になって魔物を追いかけていく。
追いつかれたら終わる。
そう悟った魔物は懸命に走り、勇者から逃れる為、更に速度を上げて逃げ回るのであった。
第17話 完




