第12話[魔王だって人間]
出血死を迎えた緑は天界に居た。
女神様に呼ばれ、椅子に座る様に促される。
「よくぞ参られた我が子よ」
「いえ、私の親はあなたではありません」
「……」
女神様は咳払いをし、話しを続けた。
「とある異世界で、貴方と同じ世界から来た二人の人間が魔王を討伐しようと頑張っています」
「どうか、力を貸して頂けないでしょうか?」
「もちろんです」
即答する緑に、女神様は来世での特典について説明する。
「はあ、まあそれは別にいいんですが、異世界転生について、少しご相談があります」
そう言うと緑は二つの提案を持ちかけた。
一つはステータスを強力にする事。
もう一つは相手の持つ武器以外の攻撃は全てダメージゼロにする事。
「この二つが守られるなら、喜んで転生します」
「いやあの……、話し聞いてましたか?」
「もしかして、私、話し長すぎましたか?」
緑は首を横に振る。
「女神様のお話しは全てバッチリと聞いていました」
なら何で?
疑問に思う女神様、そんな女神様を他所に緑は話しを続けた。
「ですが魔王も人の子」
「いえ、違います」
「きっと話し合いで解決できると思うんです」
「多分ですが……、無理です」
「女神様ともあろうお方が何を仰います」
「同じ血が通った、人間ですよ」
「いや、だから人間じゃ無いです」
「魔王です」
緑は溜め息を吐き、椅子に座り、頭を横に振る。
「暴力だけが解決じゃ無いですよ」
「なら何故、ステータスを強力にする必要があるのです?」
「それは、相手に実力差を分からせる為ですよ」
「剣を折り、相手の攻撃を交わす」
「そうして自分との実力差を分からせ絶望した上で相手を説き伏せるんです」
「どうですか私の作戦、完璧だと思いませんか?」
「思いませんし、結局は暴力じゃないですか」
「なっ、いいですか女神様……」
そう言うと緑は三時間以上説明をし、女神様は折れる事にした。
「分かりました」
「こちらからの提案を一つ、受け入れてくれるのなら、貴方の望む通りにしましょう」
「……という事があって、他の武器を装備すると、体中が腐る様になりました」
じゃあ、その剣は?
そうツッコミたかった日菜だが、どうせ戒めの為だとかそういった理由だろうと思い、それ以上聞く事はなかった。
第12話 完




