第11話[紫]
村を出て、次の街へと向かう途中の事。
「日菜ちゃん、疲れたよ〜」
そう言って勇者に抱きつかれ、私は溜め息を吐いた。
暑い上に重い。
初めは無視しようと思っていたが、段々勇者が鬱陶しく思い、私は勇者を引き離した。
「どうして私ばかり引っ付くの、緑ちゃんもいるじゃない」
「それは日菜ちゃんの事が好きだからだよ」
どうしてここまで私を好きになれるのか。
私は疑問に思い尋ねてみた。
すると……。
「えっ、どうして好きかって?」
「だって、臭そうじゃん」
気がつくと私は勇者の首を締め上げていた。
「ひなじゃ……ん」
「おぢづいで、はなぢ……ぎいで」
私は手の力を緩め、話しを聞く事にする。
もしかしたら、良い意味でなのかも知れないしね。
あんまり期待はしてないけど……。
勇者はしばらく咳き込み、そして口を開く。
「ほら、耳の裏って……」
やはりロクでも無い事だったので、私は勇者の首を締め上げる事にした。
その様子を見ていた、緑ちゃんが止めに入ってくる。
「まあまあ御二方、いくらSMが好きでも白昼堂々とやり過ぎです」
ふと、緑ちゃんの腰にある刀とは別にある剣を見て、私はある事を思いついた。
「緑ちゃん、最強なんでしょ?」
「ええ、まあ」
「その刀のせいでダメージゼロになっちゃうんだよね」
「はい、そうですけど……」
「だったら剣があるじゃん」
「えっ……」
私は緑ちゃんから剣を奪い、それを握らせる。
「さあ緑ちゃん、あいつを殺して」
私が勇者を指差す中、私に剣を握らされた緑ちゃんは唸り苦しんでいた。
「手が腐る」
緑ちゃんの手がどんどん紫色に変色していき、それを見た私は慌てて緑ちゃんから剣を奪いとる。
「はぁはぁ、私はあの刀以外、装備すると腕が腐るのです」
なら何で剣を持っているの?
疑問に思ったけど、どうせロクでもない理由だろうと思い、私は理由を聞くのを止めた。
第11話 完




