第10話[裸族ですから]
勇者は顎に手を当て、緑をジッと見つめていた。
「え〜、緑君だっけ、ちょっと服を脱いでみてくれんかね」
何を言っているんだ。
全く、この変態勇者は……。
そう思ったのも束の間、緑ちゃんは言われるがまま、服を脱いでいた。
「緑ちゃん、気に……、えぇえ、何やってんの?」
「いや、脱げって言うから」
「そうだよ日菜ちゃん」
「緑ちゃんの邪魔しちゃ駄目だよ」
「さあ、続けて続けて」
私は勇者の頭を杖で思いっきり叩き、慌てて緑ちゃんに服を着せた。
「こんな所で全裸になっちゃ駄目だよ」
「緑ちゃんは、向こうの世界でも脱げって言われたら脱いだの?」
「違うでしょ」
「いや、女同士ですし、仲間ですし、そんなに問題ある事でしょうか?」
女同士って言っても、アレじゃあね……。
緑ちゃんは勇者の本性も知らないだろうし……。
私はそう思い、緑ちゃんに耳打ちをする。
「なるほど、勇者殿は女性でありながら女性が好きと……」
「分かりました」
「でも大丈夫です」
「私、家では裸族ですから」
いや、大丈夫じゃ無いでしょ。
これを機に裸族を卒業しようよ。
つか此処、家じゃなくて外だよ……。
「それに、やはり女同士ですしね」
そう言うと緑ちゃんは再び服を脱ぎ、下着姿となる。
「うむ、中々、良い体をしているねぇ」
何処の変態親父だよ。
「ありがとうございます」
「よく父様に言われます」
いや、父様、娘に何言ってんのよ。
大丈夫なの、緑ちゃんの家。
「だから駄目だって、私達以外にも人が居るかも知れないし」
「みんな死んでますけど?」
緑ちゃん、さらっと酷い事を言うなぁ。
「新たに旅人が来て、覗いているかも知れないよ」
「それは大変です」
そう言い、服を着るかと思いきや、緑ちゃんは下着まで脱ぎ、全裸になって仁王立ちし始めた。
鼻血を吹き出し倒れる勇者。
そんな勇者を他所に、緑ちゃんが呟く。
「覗かれていると思うと……」
そして、一呼吸置き、緑ちゃんは叫んだ。
「興奮します」
結局、緑ちゃんも変態なのだと分かり、私は再び溜め息を吐いた。
どうして普通の人が仲間にならないんだろう。
心の中でそう呟き、私は肩を落とした。
第10話 完