第27話[逆転]
翌日、私の席に鈴音のグループがやって来た。
そして落書きされたノートや教科書を見て、可哀想と言ってくる。
「これ、余っているノートを持って来たの、良かったら使って」
鈴音のグループの一人がそう言ってノートをくれる。
「教科書は私が見せてあげる」
鈴音はそう言って私に笑顔を向けた。
此処まで上手く事が運ぶとは、どうやら私は神様に愛されているみたいね。
私は遠くから睨む桜の顔を横目で見ながら、心の中で彼女を笑う。
そして、鈴音達にこれからの事を話した。
行動は常に一緒、トイレに行くにも何をするにも全て一緒になって行動する。
そうすれば桜は下手に手出し出来ない筈だ。
そして、シューズと靴は持ち歩き、移動教室の際は最後に教室から出る。
放課後には部活の子達を送り、私は出来る限り、彼女達を守る事にした。
そんなある日、鈴音の教科書に落書きがされていた。
恐らく犯人は畠中だろう。
彼女は音楽の授業中に腹痛で音楽室から出て行った。
落書きが出来るのは彼女しかいない。
そして、彼女は桜に命令されてやったに違いない。
(まあ、そんな事はどうでも良いけれど……)
私は畠中の席に向かい、彼女から教科書を奪った。
「鈴音さん、これを使って」
そう言って私は畠中の教科書を鈴音に渡した。
「あっ……」
そう呟き、私を見つめる畠中。
私はそんな畠中を睨み言う。
「犯人はあなた何でしょう?」
「なら責任を取らなきゃね」
私から視線を逸らす畠中を桜が庇う。
「犯人が誰か何て分からないじゃん」
「音楽の時間、彼女だけが音楽室から抜け出したのよ」
「犯人が彼女だって明白じゃない」
「他クラスの奴かも知れないじゃんか」
「他クラスの生徒が授業中、教室を抜け出して鈴音さんの教科書に落書き?」
「そんな事する?」
黙り込む桜。
所詮はクラスのボス猿。
他クラスに影響力が無い事位、知っている。
だからこうして畠中を使ったのだろう。
だけど、それはあなたの首を絞める事になる。
「畠中さん、もしかしたら誰かに命令されてやったの?」
「いや、その……」
「そう、なら先生にも言わないとね」
「きっとあなたのご両親も呼ばれる事になるわ」
「そんな……」
私は畠中の耳元に顔を近づけて、小声で言う。
「桜にやれと命令されたのでしょう?」
「なのに彼女はあなたを助けてくれない」
「私なら、あなたを守ってあげられるのに……」
そんな私に続いて鈴音が畠中に教科書を返し、彼女の手を両手で握った。
「畠中さんは優しい子、だからこんな事、したく無かったよね」
「桜にやれって命令されたんでしょ」
続いて鈴音のグループの女子達が畠中を囲み、優しい言葉を投げかける。
そして遂に畠中は白状した。
桜に命令された事を……。
「畠中、テメェー」
畠中に向かって行く桜の太ももに家から持って来た裁縫針を刺し、怯んだ隙に彼女を蹴り倒し、頭を踏みつける。
フフフ、裁縫針って便利よね。
服を縫うだけじゃ無く、イジメの武器にも使えるんだもの。
服を貫き、小さな傷を作る。
まさに学校に持って来いの武器だわ。
「野蛮な桜さんに合わせてみたけど、暴力って好きになれないわ」
足で彼女の顔を踏みながら話す私を見て、クラス中がザワつき始めた。
もはや桜にクラスの地位は無くなっただろう。
私は桜の教科書を奪うとそれを鈴音に渡し、そして鈴音の教科書を声を出して泣く桜に投げつけてやった。
まだよ、あなたにはこれから地獄を見て貰うわ。
第27話 完




