第26話[仲間]
何故あんな事をしたのか私は担任に問い詰められていた。
私は給食にゴキブリが入っていた事を話し、犯人は隣の席に座っている鈴音さんだと思ったからだと嘘を吐く。
そして鈴音さんが呼ばれ、担任に私の給食にゴキブリを入れたのか問われ、彼女は「知らない」と答えた。
その後、放課後のホームルームの時間。
犯人捜しの為に私達は教室に残されていた。
「皆んな目を閉じて、ゴキブリを入れた人を知っているよって人は手を上げて下さい」
そう話す担任だが、手を上げる奴何て居る筈がない。
「正直に言わないとこのまま学校に残る事になります」
そんな事、出来る訳無いじゃない。
皆んなそれを分かっていて、手を上げないでいる。
そんな事、目を開けて確認しなくても分かる。
そして無駄な時間を過ごし、私達は解放される事に。
「鈴音さん、体育館裏で待ってるわ」
「来ないとどうなるか分かるわよね?」
私はそう彼女に耳打ちをして、待ち合わせ場所へ向かう。
その道中、私はイジメられていた華さんに呼び止められた。
「あの……、光さん、ごめんなさい」
「どうしてあなたが謝るの?」
「だって、私を庇ったばかりにあなたがイジメられる事に……」
スカートを掴み、下を俯く彼女を見て、私は言う。
「悪いと思っているのなら、私を庇ってくれればいいのに、何故助けてくれないの?」
ごめんなさいと呟く彼女を見て、私は溜め息を吐いた。
「意地悪な事を言ったわね、ごめんなさい」
「気にしなくていいのよ、私は別にあなたを救う為に庇った訳じゃないから」
「それに、こんな所を桜に見られたら、またイジメの標的にされちゃうわよ」
私はそう言って体育館裏に向かう。
そして、後から来た鈴音を見て、私は思わずニヤけてしまう。
やはりゴキブリが効いたのかしら?
彼女の中で私は恐い存在になっている筈だ。
「何の用よ、こんな所に呼び出して……、また酷い事をするつもり?」
「私は悪くないじゃない」
「そうね、悪いのは全部桜」
「あなたは悪くないわ」
「だったら……」
私は彼女の言葉を遮り、そして言う。
「私と一緒に桜をイジメない?」
「何言って……」
「考えてもみてよ、私達に桜に劣る所なんてある?」
「彼女は成金で私達は良家のお嬢様」
「あんな庶民が見下していい相手じゃないの」
「でも……」
私は鈴音さんの頬に手を置いた。
「私はね、イジメの無い学校生活を送りたいの」
「それを邪魔するのなら誰であろうと容赦しない」
「見てみぬ振りも同罪よ」
彼女は固唾を飲み、私から視線を逸らした。
恐らく、桜より私の方が恐いと感じたのだろう。
無理も無い、いきなりゴキブリを食わせる何て普通じゃないものね。
「何をすれば良いの……」
「簡単よ、お友達に連絡して私に協力してくれる様に頼んでくれればいいの」
「分かった、協力する」
「その代わり、私を守ってくれる?」
「ええ、私があなたを全力で守ってあげるわ」
これで一人は確実に私の味方になった。
出来れば彼女のグループも取り込みたいけど、果たしてそう上手く行くかどうか……。
まあ、明日が楽しみだわ。
第26話 完




