第24話[影の過去]
政治家の娘として私はこの世界に産まれた。
困っている人が居たならば救いなさい。
それが私の父の口癖の様なもので、そしてそれは幼い私にとって全てだった。
昔からヒーロー番組や魔法少女系のアニメを観て、ああなりたいと目を輝かせる所はあった。
弱い者を助け、悪を倒す。
それがカッコいいと思っていた。
小学五年生までは……。
「はい、光ちゃんの給食、私がわざわざ用意してあげたんだよ」
どれも一口サイズの量。
デザートなどは奪われ、食べる事すら出来ない。
それでも私は彼女にお礼を言う。
言わないともっと酷い目に遭わされるから……。
「あ……、ありがとう」
作り笑顔でお礼を言う私をクラスメイト達が声を出して笑う。
誰も私を助けようとはしない。
無理も無い。
私を助ければ次の標的は自分になる。
そう身を持って私が証明してしまったのだから……。
あの時、あの子を助けなければ……。
見て見ぬ振りをしていれば、こんな辛い思いをしなかったのに。
そんな後悔は無かった。
何故なら私には政治家の父が居たからだ。
どんなに辛くても、この国に住む人々の為に頑張っている父を思うと、それだけで勇気が出る。
そう幼いながらも、私は思っていたのだ。
だけど、そんなある日の事。
いつもの様に学校が終わり帰宅していると、私の家の前に大勢の人が立っていた。
「光、こっちにいらっしゃい」
母が現れて私の手を引く。
何かあったの?
その時は訳も分からず混乱していたが、テレビのニュースを見て、私は全てを理解した。
それからしばらくして、私は悪徳議員の娘として、学校で更なるイジメを受ける事となる。
「不正を働いて食べるご飯は美味しい?」
そう馬鹿にされ、大量に塩を入れられた給食を無理矢理食べさせられる。
辛くて吐き出すと、クラスの皆んなが私を心配する様な素振りを見せ、担任の先生に保健室へ連れて行くと言って、私はその道中、彼女達に暴行を受けた。
コンパスで刺され、ものさしで肌を叩かれる。
信頼していた父には裏切られ、この時私は全てを失ったのだった。
地獄だった小学校生活も終わりを迎え、私は中学生になっていた。
一年間は大人しく過ごし、友達も多く出来た。
小学校の地獄と違い、中学校の生活はとても充実したものだった。
だが、二年になり、私のクラスでイジメが起きてしまう。
「ねえ、光さんもアイツを無視するの協力してくれる?」
「ええ、いいわよ」
「アイツ、ちょっとウザくてさ」
「そうね、あの子ちょっとウザいわね」
「でしょでしょ、光さん話し超分かるじゃん」
「綺麗だし、今度遊びに行こうよ」
「ええ、いいわよ」
「マジ、それじゃ、そんヨロで」
そう言うと彼女は仲間達の所へ戻って行った。
「やっばー、光さんと話しちゃった」
そう言って、仲間とワイワイ楽しく話す彼女を私は見つめて笑う。
そして放課後、私はホームルームの時間にいきなり席を立った。
誰もが私に注目する。
担任は私を注意し、私はそんな担任にクラス内でイジメがある事を暴露した。
「なっ……」
イジメっ子の馬鹿面が笑える。
ごめんなさいね。
あなたには私の踏み台になって貰うわ。
誰かの下になるのはもう嫌なの、私がこのクラスを支配して見せる。
そう思い、私は担任の先生にイジメられている生徒の名前を告げるのだった。
第24話 完




